週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.93

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

ブーストはアナログモデリングEQに限る!

最近、マスタリング時のEQによるブースト作業には、アナログモデリングEQを使うようにしています。

FabfilterなどのクリーンなEQでもブーストできるのですが、あえてアナログモデリングEQを使うことにはいくつかの理由があります。

1つはアナログモデリングEQは指定できる周波数が限られていること。Fabfilterのように細かく周波数指定できない分、どの帯域を持ち上げたいか素早く判断することができます。

もう一つはEQカーブが見えない分、視覚情報に惑わされず純粋に音の変化を聞いてイコライジングできること。EQによる変化を視覚的に見ているとどうしてもそれにとらわれてしまうことがあるのですが、カーブが見えなければ純粋な音の変化のみを判断材料にEQすることができます。

倍音がどうとか、EQカーブが優れているといったアナログモデリングEQの良さもちろんあるのですが、僕がアナログモデリングを使う理由は、主に上の2つです。

なら、アナログモデリングならなんでもいいのか?と言うとそうでもないのですが、UAやPlugin Allianceにあるような製品はだいたい質が高いので、使ってみてしっくりきたものを適当に使っています。個人的にはPAのSPL PQがかなり好みで、必ずマスターに使っているのですが、UAのManleyとかPAのPasseqなどいろいろ定番があるので、気になったものからデモを使ってみましょう。

一つ持っておくと、マスタリングのみならずミキシングでもかなり役立ちますよ。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

ヘッドフォン選びの参考になりそうな動画を見つけました。

この動画ではフラットなヘッドフォンは存在せず、そもそも周波数特性がフラットなヘッドフォンを求めることは無意味だという内容です。

この理由を、動画を見るのがめんどくさい方のために、さくっと内容をまとめていきます。

まず、スピーカーの周波数特性をフラットにするソナーワークスなどのソフトがありますが、「スピーカーの特性がフラットであること」と「ヘッドフォンの特性がフラットである事」は別の話です。スピーカーは壁との距離や家具の配置などによって音が大きく変化するため、周波数特性をフラットに近づける事は大切です。

ところが、ヘッドフォンの周波数特性が完全にフラットである場合、逆にミックスがとてつもなくやりづらくなってしまうでしょう。

その理由は、HRTF (頭部伝達関数)、ハーマンカーブ、フレッチャーマンソンカーブの3つの観点から説明できます。

まずHRTFとは、たとえスピーカーからフラットな音が出ていたとしても、耳に音が届くまでの間に、その人の頭の大きさや形、肩・首の形状などによって、音が耳に届く頃には必ず音が変化してしまうのですが、この音の変化を周波数特性として表したものです。そしてハーマンカーブとはこのHRTFをもとに、スピーカーの音をヘッドフォンで再現するための周波数カーブのことです。

当たり前ですが、頭の大きさや肩・首の形状はかなり個人差があるため、個人のデータの平均をとり、それをヘッドフォンに適用させる必要があります。ところが「平均的な頭の大きさや首・肩の形状を持った人」というのは、ほとんど存在しないため、ハーマンカーブを適用させたところで、聞こえ方には必ず個人差が生じます。

またフレッチャーマンソンカーブとは、人間の耳の感度が周波数帯域によって異なることをグラフに表したものです。一度はこのカーブをどこかで見かけたこともあるかもしれませんが、人間の耳は2~5kHzあたりが敏感に感じ取れるようになっており、低音は同じ音量でも小さく聞こえてしまうという特性があります。これは進化の過程で、人間の声がよく聞き取れるように、このような特性になったと言われています。

つまり、ヘッドフォンをフラットな音にした場合、低音は小さく聞こえ、2~5kHzは大きく聞こえてしまうということです。

こういった理由により、フラットなヘッドフォンは存在せず、周波数特性を完全にフラットにしたヘッドフォンは、逆に扱いづらいということがわかります。

多くのヘッドホンは、ハーマンカーブを狙って音作りがされていますが、人によって頭の大きさなどは必ず個人差があるため、誰にとっても音が良い最高のヘッドホンは存在しないことになります。

また、年齢、性別、人種によっても聞こえ方は異なるため、すべてのヘッドホンは、すべての人の耳にマッチするようには作られていないのです。

こういったことを参考に、ヘッドフォン選びの際は、たとえプロの意見でも鵜呑みにせず、自分で実際に装着してみて、一番しっくりくる音のヘッドフォンを購入するようにしましょう。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。

🎧サービス・書籍のご紹介

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてくださいね。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.93

2025年1月24日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info