週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.8

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の…

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近、知人に依頼された曲のミキシング&マスタリングを行いました。

せっかくなので、リモートミキシングを試してみたいと思い、Audiomoversを使って高音質で音を送り、ZoomでAbleton Liveの画面をシェア、Lineで通話しながら、遠隔で全てのミキシング&マスタリング作業を終えました。

Audiomoversは数回途切れてしまうことがありましたが、それなりに安定していて、特に不便は感じることはなかったですし、DAWから音質を劣化させずに、そのまま相手のPCやスマホに送れるのがとても便利です。

もちろん自宅スタジオに来てもらって、良いスピーカーやヘッドフォンでミックスをチェックしてもらうのもいいのですが、リモートで完結できる手軽さは、変えがたい魅力があります。

依頼側のリスニング環境によっては、しっかりとミキシングできているか確認するのが難しいかもしれませんが、この人なら信頼できる、というエンジニアとの作業なら、これで完結しても問題ないでしょう。

依頼人は、自分のリスニング環境で確認できない細かい部分はエンジニアに委ね、全体的なバランスなどの指示を出せば良いのです。

これからの時代、ミキシングやマスタリングの依頼を受ける方は、こういったソフトを活用して、リモートで完結させるのも1つの手ではないかと思います。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. Apple、iPadのためのFinal Cut ProとLogic Proを発表→最近はAdobeやBlack MagicもiPad版のソフトウェアを発表していますが、ついにAppleも、Logic ProとFinal Cut ProのiPad版を発表しました。僕は、まだまだ音楽制作はパソコンでやりたい派ですが、将来的にはiPadのようなタッチデバイスでの制作に移行していくんだろうなと感じます。

  2. Results for "Superbooth" - MusicTech→5/11からドイツで開催される、楽器の展示会「Superbooth」に向けて、続々と新しい音楽機材が発表されています。シンセサイザーやモジュラー関連の話題が中心です。

  3. Teenage Engineering’s new CM-15 field mic looks like a marvel of design→Teenage Engineeringが、およそ1200ユーロのプリアンプ付きマイクを発表。半世紀ほどイノベーションが止まっているマイク市場に一石を投じます。この値段の製品を出してくるということは、コンパクトでデザイン性が高いだけではないでしょう。これで音質が良ければ、今後のマイク市場に変化が見られるようになるかもしれません。

  4. Easily Extract Stems From Any Song With LALAL.AI→楽曲からボーカルや楽器を抜き取るならiZotopeのRXが定番ですが、LALAL.AIというブラウザベースのシステムなら、RXよりも高精度で楽曲の一部のパートを抜き取ることができます。実際に試してみたところ、確かに精度が高いです。せっかく大金を叩いてRXを購入している身としては、iZotopeもっと頑張れ!と言いたくなるところですね。

  5. This AI music ‘spawning’ demo is mind-blowing [MUST WATCH]→AIを使えば、こちらで紹介されている動画のように、好きな歌手の声で歌うことができるようになります。カラオケなんかで、好きな歌手の声で歌えるようになれば楽しいですね。こういった技術が一般に浸透するのに、それほど時間はかからないと思います。(https://www.ted.com/talks/holly_herndon_what_if_you_could_sing_in_your_favorite_musician_s_voice?language=ja&subtitle=ja)

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピューターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

LALAL.AI

今回は、人工知能、機械学習のプロフェッショナルたちによって作られた、声や楽器の分離サービスLALAL.AIをご紹介します。

楽器の分離といえば、iZotope RXやDjayなどのソフトが有名ですが、精度でいえば、こちらのLALAL.AIの方がはるかに上でしょう。

LALAL.AIのサイトには、自分たちの音声分離技術がいかに優れているかということが、多くの研究結果とともに記されています。

実際に、Webサイトで試してみることができるので、気になった方はぜひRXやDjayなどのソフトと比べてみてもらいたいのですが、LALAL.AIの方が、綺麗にボーカルや楽器を分離することができます。

彼らのサイトにも、こういった一文があります。

“LALAL.AIは、DeezerのSpleeterをも上回り、PhonicMindを上回るアクセス性と結果の質で、初めてサービスを提供します。 私たちは、利用できるすべての音声分割方法を比較し、私たちのものが最高であることを証明します。”

とても強気な文章ですが、実際に使ってみればこのサービスが、他のサービスより優れていることがすぐにわかるでしょう。

プランは全部で3種類あり、サブスクではなく、アップロードする素材の時間分を買い切るという形になっています。

一番安いLite Packだと、1,900円でトータル90分の楽曲をアップロードすることができます。

つまり1曲6分とすると、15曲になりますね。

とりあえず、LALAL.AIの分離精度を試してみたい人は、こちらに自分の好きな曲をアップロードしてみてください。

ダウンロードはできませんが、無料で試すことなら可能です。

著作権の問題などもありますが、ボーカル素材だけを抜き取ってリミックスしてみたり、ドラムやシンセなどの素材を抜き取って自分の楽曲に使ってみたりと、いろんな用途で使うことができます。

素材が綺麗に分離できれば、その曲がどういう構成でできているのか、という分析も簡単にできるようになり、ますます初心者とプロの境界が曖昧になる時代がやってくるでしょうね。

今週の…

ここでは毎週違ったテーマ、例えば、日本や世界各地で録りためたフィールドレコーディング、おすすめの1曲、音楽に関する映画、などをお届けします。皆さんの音楽制作の刺激になるような、おもしろいコンテンツを毎週ご用意していきたいと思います。

坂本龍一さんの、音と映像のパフォーマンスがNetfilexで公開されています。

一音一音に引き込まれる圧巻のパフォーマンスで、映像もとても美しい。個人的には、死後の世界を連想しましたが、観る人によって、いろんな受け取り方ができる芸術的な作品に仕上がっていると思います。

この後の、Okina’s Picksでも紹介している「音楽と生命」という本とあわせて観てみると、坂本龍一の音楽性がより深く理解できるかもしれません。

「ロスト・イン・トランスレーション」の共同プロテューサー、スティーブン・ノムラ・シブルの監督作品です。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。その際は、このQ&Aコーナーにも貼らせていただきますのでご了承ください。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🪑対談: 成田悠輔×小松美羽】アートは人間にとっての●●●。 - お二人がAIについて対談するシーンがとても面白いです。小松さんに「AIに仕事を奪われる危機感」というものはなく、AIが世の人のためにうまく使われ、それによって自分の仕事がなくなるなら、それはそれで構わないという姿勢に感銘を受けました。

🔌お店: 秋月電子通商 - 最近、サミングミキサーや真空管アンプの自作をしているのですが、秋葉原のいい感じのパーツ屋さんを教えていただきました。機材の自作を考えている方は、ぜひ立ち寄ってみてください。

📚本: 音楽と生命 - 「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」などの著書で有名な福岡 伸一さんと、つい先日お亡くなりになった坂本龍一さんの対談です。

🖥️プラグイン: Mix to Mobile - DAW上でミックスしている音楽を、リアルタイムでBluetoothスピーカーやスマホで視聴できます。ミックスチェックに毎回書き出しをするのが面倒だと感じていた人は、こちらを使ってみるのが良いかもしれません。

  1. ブログ更新のお知らせ

ミキシングは、本当に奥が深いですね。

ある曲ではうまくいったと思っても、またある曲では、同じ方法が通用せず全然うまくいかなかったり・・・

最近、知り合いの曲をミキシングしたのですが、その時の失敗談を教訓としてブログにまとめておきました。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.8

2023年5月12日発行

Blog: https://studio-okina.com/

Twitter: https://twitter.com/studiookina