週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.76

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. AI時代の作曲術

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. 今週の音楽ニュース

  5. Q&A

  6. 著書のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

普段の検索には「Perplexity」を使っていましたが、最近、新たに登場した「GenSpark」というAI検索エンジンのおかげで、Perplexityを使う頻度が大幅に減りました。

このGenSparkは、Googleのように検索したいキーワードを入力すると、ただ検索結果を表示するだけでなく、YouTube、Google検索、Spotifyなどのさまざまなソースから情報を集め、質問者の意図に沿った回答としてまとめてくれます。

ChatGPTでも検索エンジンにアクセスできますが、GenSparkは検索に特化しているため、論文データベースなど信頼できる情報源からも情報を集めることができ、さらに無料で誰でも利用できます。

GenSparkは、高速パラレル検索機能を持ち、複数の情報源から一斉に情報を集められるので、精度とスピードの両面でChatGPTよりも優れていると感じます。音楽関連の情報についても、GenSparkで調べることで、参照記事や関連情報などを短時間で効率よく得ることができるため、時にはGoogle検索よりも活躍してくれます。

高速パラレル検索をしている様子

検索ワードによってはGoogle検索やChatGPTを使うこともありますが、複数の角度からの答えが欲しいときは、GenSparkを使うと素早く効率的に情報を得られます。

音楽のことでなくても、普段の調べ物にもとても役立つので、気になった方はぜひ試してみてください。

🤖AI時代の作曲術

最新のAIプラグインやAI作曲ツールの紹介。

この記事ではAIプラグインを使って、ある楽器の音を、全く別の楽器の音に変えてしまう方法が紹介されています。

これは日本の企業が開発するNeutone Morphを使った方法で、Morphにはあらかじめいくつかのサウンドプリセットが入っており、このプラグインを通すことで、ボーカル、ドラム、シンセなどのあらゆる音が、選択されたサウンドプリセットの音に変化します。この記事では、ドラムの音をシタールに変化させています。

シタールに変化させたドラムサウンドを元のドラムと同時に再生することで、ドラムのリズムとシンクロしたシタールサウンドを作ることができます。

このケースでは、ドラムの音をシタールに変換していますが、元のリズムや音程などを大きく崩さず、ある楽器の音を別の楽器の音に変えることができるので、音楽を作っていて「何か物足りないな」と思ったときに、この方法を使っていろんな楽器の音を足したり、Spliceなどのサンプルサービスで選んだメロディーやシーケンスを全く別の楽器に演奏させるのも良さそうです。

プリセットによっては有料なのですが、無料で使えるものもあるので、AIを使ったサウンドデザインに興味ある方はうまく活用すると面白いと思います。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

これはかなり良記事でした。

僕が音楽制作を始めた頃に、誰かにこのアドバイスをもらっていたら、どれほどミキシングが素早く上達しただろう…と思ってしまいました。この記事を一言で表すなら、記事中にも登場するこの言葉に集約されるでしょう。

初心者のプロデューサーやエンジニアのミックスで最も一般的な問題は、オーバープロセスではなく、むしろアンダープロセスだと言ったらどうでしょう?

ミキシングやマスタリングの動画・記事を見ていると、

  • 意味のないEQやコンプレッサーはするな

  • マスタリングのEQは⚪︎⚪︎dB以内に収めよう

  • コンプレッサーをかけ過ぎると音に迫力がなくなるので、最小限にとどめよう

といったアドバイスを見かけることと思います。

確かに、間違ったことを言っているわけではないのですが、初心者のうちはその音に対してどのくらいEQをすべきなのか、コンプレッサーをどれくらいかけると適切なのか、といったことを何も知らないわけです。その状態でEQやコンプレッサーの設定を最小限に留めようとすると、ほとんどの確率でアンダープロセッシング…

つまり本当はもっとプロセッシングをしないといけないのに、 全然プロセッシングができていない状態になってしまいます。

この記事には、こんなことも書かれていました。

最近、私は友人のミキサーに、偉大なBob ClearmountainがSSLバス・コンプレッサーに最大8dBのコンプレッションをかけることをRick Beatoとのインタビューで話していることを話しました。 これはミックス・バスだけです!

僕もこれまでミックスバスの使い方の動画などは散々観てきましたが、確かに8dBのゲインリダクションは多いなと感じてしまいました。

でも、よくよく考えると、結局どのくらいコンプレッションをかけるかは素材次第であって、例えばドラムのレコーディングの際にプリアンプやコンプがあまり効いておらず、ほぼ生のままレコーディングをしたならば、ミックスバスコンプレッションを8dB以上かけるのも十分に考えられます。

なので、結局初心者はどうすれば良いかと言うと、自分が良いと思う音になるまでとことんEQをかけまくって、コンプレッションもかけまくった方が良いということです。

はじめの何曲かはコンプレッサーでパンパンに押しつぶされていたり、EQのかけすぎでドンシャリになっていたり、不自然に特定の周波数が抜けていたりすることもあるかもしれませんが、 アンダープロセッシングよりオーバープロセッシングの方が間違いに気づきやすいので、 その分修正も早く、ミキシングの上達につながるでしょう。

過度にオーバープロセッシングを気にして、 「これまで必要最低限(自分でそう思っているだけ)しかプロセッシングをしてこなかったかも…」と心当たりのある方は、これを意識してみることで、ミキシングが今まで以上に上達するようになるかもしれませんよ。

📰 今週の音楽ニュース

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。翌週以降のニュースレターでお答えいたします。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

Q.1

こんにちは! いつもたのしく背景させていただいております。

質問というかリクエストになるのですが、ヘッドホンの購入を検討しています。

今回のメールマガジンに書いてあったモニターヘッドホンも非常に興味深く、一度視聴してみようと思ってますが、無線ヘッドホンのオススメもご紹介頂けたら嬉しいです☺️

A.1

ご質問ありがとうございます!

普段は有線ヘッドフォンやワイヤレスイヤホンを使っているのでワイヤレスヘッドホンについてはあまり詳しくないのですが、僕が聴いたことのあるワイヤレスヘッドホンの中からいくつかおすすめをご紹介します。

街中でよく見かけるのはSonyのWH-1000XMシリーズですが、これはバランスが良くノイズキャンセリングも自然なので、人気なのも納得です。

あとは一度試聴したことがある程度ですが、Amiron Wireless CopperT+A Solitaire Tはバランスの良さに加え、解像度が高く、有線ヘッドフォンにも匹敵するほどのクオリティーでした。ワイヤレスで品質を求めるなら、この辺はおすすめです。

でも、有線ヘッドフォンに匹敵するほどのサウンドをワイヤレスヘッドフォンに求めてしまうと、どうしても値段が高くなってしまうので、ある程度の予算で押さえつつも良い音を聞きたいなら、Apple AirPods Maxがおすすめです。

正直、AirPods Maxはすごく解像度が高いわけではないので、とことん音質を求めるなら先ほどご紹介したヘッドフォンや、同価格帯の有線ヘッドフォンが良いのですが、AirPods Maxをおすすめする理由は、解像度以外の部分にあります。

AppleとBeatsのヘッドフォンには、iPhoneと連動する、ある特殊な機能が備わっています。

それはヘルスケア対応のiPhoneアプリを使い、聴力を検査することで、自分の聴力に足りない周波数をiPhone側で自動的にイコライジングして補ってくれる機能です。 僕はAirPodsでこの機能を使っているのですが、 自分の耳の特性に合わせて音を整えてくれるので、Spotify、Apple Music、YouTubeなど、どんな音源を流す時でも自分の耳に合わせてイコライジングされた音で聴くことができます。 こういった機能性にフォーカスするなら、AirPods Maxの購入もアリだと思います。

ちなみに、最近Sonosから出た新しいヘッドフォンに興味があったので試聴に行ったのですが、全く良くなかったので(好みの問題なのでしょうか…)、これはおすすめしません…

📚著書のご紹介

ここ数年、音楽業界にもAIが着実に浸透しつつあります。

より効率的でクリエイティブな作曲方法を模索している方や、アートワークやミュージックビデオを自ら制作したい方に向けて、制作からプロモーションまでをアーティストが一人でこなすための、AI時代の新たな指南書を書きました。

AIを活用した最新の音楽サービスを、制作手順に沿ってわかりやすく解説しています。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.76

2024年8月30日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info