週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.72

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. AI時代の作曲術

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. Q&A

  5. 今週の音楽ニュース

  6. ブログ更新のお知らせ

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近アンケートにお答えいただいている方々、ありがとうございます!

アンケートを参考に、以下の点を変えてみました。

  • Okina’s Picksの取り止め

  • 音楽ニュースの簡易化

作曲、ミキシング、AI活用系は引き続き、皆様に役立つコンテンツをお届けいたします。

さて最近は、映像の撮影や編集を勉強しています。

先日も、藤沢にオープンしたカフェを撮影させてもらったので、ついでに編集もやってみました。

実はこの店主は、僕が東京に来てからめちゃくちゃお世話になっている方で、お店もとっても良い雰囲気なので、近くにお住まいの方がいればぜひ足を運んでいただきたいのですが…

映像も音楽と同じく奥が深いですね。

「ここをもっとこうすれば良かった〜」といった後悔が山のように出てきますが、音楽と同様「とにかく完成させる」「数をこなす」ことが大切だと思い、練習に励んでいます。

挿入曲は、andhimのHauschという夏にぴったりの一曲。

andhimの曲の中ではそれほど売れてないと思うんですが、情景を思い起こさせるような美しい雰囲気の曲で、5年ほど前からずっと聴いています。

音楽制作ばかりしていると部屋に引きこもりがちなので、たまには映像を撮るのも良い気晴らしになっていいと思います。

「最近、音楽ばっかり作ってて外に出てないな」という方は、この夏から動画制作を趣味にしてみてはいかがでしょう。

最新のiPhoneでもいいのが撮れますが、一眼レフを買うと、自分の腕が上手くなったように感じるので、楽しく続けることができますよ。ちなみに僕は、1年ほど前にFX30という入門機を買いました。(上の動画は、α1という機種で撮ってます)

次は、高円寺の阿波踊りでも撮りにいこうかな。

🤖AI時代の作曲術

最新のAIプラグインやAI作曲ツールの紹介。

UdioとSunoAIのステム分離

ついにUdioとSunoAIにステム分離機能が登場しましたね。

SunoAIはボーカルを分離してくれるだけなので、いまいち使えませんが、Udioは4つのステムにきれいに分解してくれるため、ここからステムを細かく刻んだり、ステムの一部をループ素材として使ったりして自分の作曲に取り入れることができます。

ステム自体はきれいに分離できるのですが、自分の曲に使うにはBPMを合わせないといけないので、スマホで使えるBPMカウンターを使うか、プラグインもしくはLogic ProのBPMカウンターを使って自動分析することで、AIで作ったステムを自分の曲に取り入れることが可能。

サンプリングというと、これまで既存の曲から音を取ってくるのが普通でしたが、AIに音楽を作ってもらって、そこからサンプリングするという新たな手法が可能になりました。

AI作曲はガチャみたいなところがあるので、今のところ、この手法が効率が良いかと言われればそうでもないのですが、UdioやSunoAIなどのAI作曲ツールが進化することで、さらに自分の理想のサンプルを素早く見つけたり、あるいは作ったりできるようになると思います。

この変化を今のうちから体験したい方は、Udioの有料版に登録してみることをおすすめします。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

Spliceがサンプルの探し方のコツを記事にまとめていました。

サンプルをうまく活用することで、音楽理論を駆使したり楽器を自分で弾いたりしなくても、音楽としての完成度を高めたり、インスピレーションを得ることができます。

どんな内容の記事かというと・・・

Lil Nas Xが "Old Town Road "のバックボーンとなったヤングキオのビートを見つけた話だったり、

身の回りにある音をサンプリングすることで、

あなたの音楽を、他から際立たせる方法などが紹介されています。

Spliceには膨大なサンプルがありますが、実際に自分でサンプリングしてみると、多くのアーティストがなぜわざわざ自分でサンプリングするのかがよく理解できるかと思います。

あとは、WhoSampledを使って、誰がどんなサンプルを使って音楽制作をしているのかを調べるのも面白いですね。

いつもの音楽制作のルーティンに飽きてきた方は、ぜひサンプリングをうまく取り入れて、自分だけの音楽を作り上げてみてください。

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。翌週以降のニュースレターでお答えいたします。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

Q1.

DTMでミックスの質問です。

曲全体の位相をプラグインで確認すると、常に1の方に常にメーターがふれています(同軸というのでしょうか)。

これは、0付近をうろちょろした方がいいのでしょうか。

位相の関係で音を打ち消し合うというのは良くみますが、-1〜1の位相についてもご教示いただきたいです。

A.1

久々のご質問、ありがとうございます!

位相メーターはどの辺に振れていれば良いのか迷いますよね。

まずメータープラグインでよく見る位相とは、左右の位相差を表す指標で、+1なら正相、-1なら逆相と言います。

通常のステレオ音源は0~1をうろちょろしているのが普通で、低音が少なく音像が左右に広がっている箇所だと、たまにマイナス方向に振れることもあります。

なので、ご質問者様の「常に1の方にメーターがふれている」状態は、全く問題ありません。

その上で、位相メーターが何を意味しているのか、もう少しだけお伝えします。

まず、メーターがずっと+1を指していたら、音はどうなるでしょう?

LRからまったく同じ音が出ることになるので、それはモノラル音源となります。

逆に、ずっと-1に振れていたら?

完全に逆相なので、一応音は聞こえるのですが、スピーカーで聞いた時に音が消えたように聞こえます。

メーターが常に0よりマイナス方向振れている音楽は問題で、SpotifyやYouTubeで再生された時に、他の曲より音が小さく聞こえたり、違和感のあるサウンドになってしまうのです。。。これはステレオプラグイン、フェイザー、コーラスなどで音像を広げすぎてしまっていることが主な原因です。

なので、メーターは常に0から+1の間で振れているように(たまにマイナス方向に触れるのはOK)調整しましょう。音楽の低音部分はモノラル寄りであることが多いので、位相メーターは+1方向寄りに振れているのが普通です。

では、この0から+1のどこがベストなのか?

以前に東宝スタジオに行った際、実はゴジラの監督はモノラルで映画を作りたがっていた、というお話を聞いたことがあります。ということは、この監督は位相メーターを完全に+1に振り切ったサウンドを作りたかったということ。

逆に、0から+1の間をうろちょろさせて、適度なステレオ感を出したいアーティストもいるでしょう。これはジャンルやアーティストによって好みがあるので、正解がありません。

なので、もし位相メーターがどこらへんにくるのがベストなのかお悩みなら、自分の好きなアーティストの曲を研究して、それに合わせましょう、ということをお伝えしたいです。

もしMacをお使いなら、コンピュータの内部ルーティングを変えることで、YouTubeやSpotifyの曲を分析することができます。

こうやって位相に限らず、MetricABなどのプラグインでいろんなメーターを分析してみることで、曲作りに役立つ発見が得られると思います。

📰 今週の音楽ニュース

🖊️ブログ更新のお知らせ

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.72

2024年8月2日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info