週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.7

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の…

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  7. ブログ更新のお知らせ

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先日、モニター環境をもっとコンパクトにしたいと思い、Apple Storeに、新型のAirPods Proを聴きに行きました。

チップが変わって音質が向上していると聞いて、普段のミキシングに使えないかと楽しみにしていたのですが、所詮はAirPods。全体のバランスはとれますが、さすがに細部までミキシングしたり、空間を把握するのは難しいなと感じました。

外出先で、AirPodsだけでミキシングを完結させられると最高なんですがね。

結局、今使っているAntelope Orion 2017にも、最近は満足出来なくなってきたので、マスタリング用のコンバーターを導入しようかと考えいている次第です。

候補としては、Benchmark DAC 3、SPL Mercury 、SPL Phonitor 3 DAC、Mytek Liberty DAC 2、Lynx Hiloあたりが良いかなと思っています。

最近は、プラグインの精度がすごく上がっているので、必ずしもミキシングやマスタリングにアナログ機材を導入する必要はないと思いますが、その代わり、良いDAコンバーターは必須でしょう。

プラグインの微妙な音質の違いが、しっかりと聴きとれれば、アナログのようなミックスをITB(In The Box)で仕上げることも可能な時代になってきていると感じます。

音質を決めるのは、スピーカーやヘッドフォンよりも、まずオーディオインターフェース(DAC)。

なので、自宅で良い音でミックスしたいと思っている方は、スピーカーやヘッドフォンへの投資も重要ですが、まずは良いオーディオインターフェースを導入することを考えてみるのが、良い音を作る近道になるかもしれませんね。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. A new AI created ‘Beatles’ song is making fans cry→ジョンレノンの死後に作られた、ポールマッカートニーの楽曲「New」。これに、AIによって蘇ったジョンレノンの歌声が重ねられ、ファン必見の幻のコラボレーションに仕上がっています。ジョンレノンが生きていたら、きっとこの曲を気に入っただろうな、ジョンの歌声のニュアンスを的確に捉えている、とYouTubeのコメント欄は絶賛の嵐です。

  2. Behringer Abacus, a ripoff of the all-time favorite Make Noise Maths→モジュラー界に革命を起こしているBehringerですが、ついにMake Noiseの名作モジュールMathsのパクリ製品が登場。なんと99ドルで販売予定らしく、モジュラーの世界で更なる価格破壊が起これば、誰もが気軽にモジュラーシンセを導入できる世界がやってくるかもしれません。アッパレ、Behringer!

  3. Akai Professional Intros MPC X Special Edition, The Most Powerful MPC Ever→AkaiのMPCに新しいエディションが登場しました。シンセサイザーも搭載されていて、コンピュータは不要。これまでで最も強力なMPCとのことです。

  4. Live 11.3 is Now in Public Beta→Ableton Live 11.3のパブリックベータが発表されました。注目は、なんといってもMPE対応のシンセサイザーDriftでしょう。こちら、まだ試せていないのですが、かなり評判は良いですね。

  5. Berklee Adds AI to Online Teaching Tools→音大の名門バークリーが、学生向けにAI制作・楽曲分析ツールを導入しました。曲中のボーカル・楽器の除去や分離、歌詞の書き起こし、曲のスピード調整やピッチ変更、キーやコードの検出、メトロノームカウントなど、AIの登場で教育分野がさらに加速しそうです。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

今回は、メタマテリアルを使って高性能な吸音材を作る、Delta H Designをご紹介します。

ここは、Quantum Acoustic、つまり量子的な振る舞いを、ルームアコースティックの補正に応用している会社で、量子力学の知識と技術を使うことで、従来製よりも優れた効果を持つ吸音材を作っているそう。

量子力学といえば、どうしても怪しい印象が付きまとう言葉なので、うかつに信用するべきではないと思いますが、ポートフォリオで紹介されているこれらの実績を見ると、その吸音効果は信用せざるを得ないのでしょう。

量子力学を、どう応用しているのかはよくわかりませんが、メタマテリアルを使った吸音材は、日本でも落合陽一さんの会社が販売しています。

音が良くなれば何でもいいのですが、調べてみても日本で吸音材の効果を体験できる場所はなさそうで、ロサンゼルスまで行かないと、実際に吸音材にお目にかかることは出来なさそう・・・

従来の吸音材と違って、下の画像のように、部屋を有効に使えるのも魅力だそうです。

とても気になるので、どなたかロサンゼルスに行った際は、チェックしてみてください。

  1. 今週の…

ここでは毎週違ったテーマ、例えば、日本や世界各地で録りためたフィールドレコーディング、おすすめの1曲、音楽に関する映画、などをお届けします。皆さんの音楽制作の刺激になるような、おもしろいコンテンツを毎週ご用意していきたいと思います。

世界的に有名なピアニスト(アーティスト?)、チリーゴンザレスについてのドキュメンタリー映画です。

Daft PunkのRandom Access Memoriesに参加し、グラミー賞の受賞歴もあるので、知っている方も多いかもしれませんね。

まさにアーティストといった狂気的な振る舞いや、前衛的なプレイスタイルで注目を集めるチリーゴンザレス。

過激なラップで注目を集めたかと思いきや、突如「Solo Piano」という作品で、エリック・サティのような狂気とは真逆の音楽を発表するなど、とにかく振れ幅が半端じゃありません。

兄は「アナと雪の女王」「ハングオーバー」などの作曲を手がけるクリストフ・ベックですが、「兄は技術に頼る作曲家、自分はアートを作っている」と、彼のプレイスタイルの背後にある想いが垣間見えるシーンも。

過去には、日本のファッション界でも注目を集めていたようですが、このアバンギャルドでアーティスティックな生き方に惹かれる人も多いのでしょう。

あまり来日しないようですが、一度は生で演奏を聴いてみたいものですね。

作品は、Prime Videoで観ることができます。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎬映画: 32 Sounds | OFFICIAL TRAILER - バイノーラル収録などをふんだんに取り入れた、今まで誰も聞いたことのない音の映画、というコンセプトで作られた映画です。今のところ、オンライン公開は未定のようですが、とても興味をそそられるトレイラー映像です。公開が楽しみですね。

📖インタビュー: Surgeon on how he ditched the studio to record an album with a tabletop live setup: "It’s funny, but people desperately want to know what gear I’m using" - テクノ好きなら、Surgeonの名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。彼がどのような機材を使って音楽制作をしているのかが語られています。

📚本: スピーカー&エンクロージャー大全: スピーカーシステムの基本と音響技術がわかる - スピーカーの仕組みや実際の制作方法が、こと細かに書かれています。スピーカーを自作してみたい人はもちろん、音の仕事をしていて、スピーカーの仕組みを知りたいという人にもおすすめです。

🎧チル: The Best Ambient on Bandcamp: April 2023 - Bandcampで定期的に発表されるBest Ambientの記事です。

  1. ブログ更新のお知らせ

今週は、SonnoxのA/B比較ツールListenHubを取り上げています。

すでにMetricABなどの高品質なA/Bツールを持っている人には必要ないかもしれませんが、SpotifyやTidalなどのストリーミングサービスの音源をリファレンスにできるので、とても便利です。

メーター項目はそこまで豊富ではないですが、ラウドネスを自動で揃えてくれたり、iPadやiPhoneで簡単に操作できるのはかなり魅力的ですね。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.7

2023年5月5日発行

Blog: https://studio-okina.com/

Twitter: https://twitter.com/studiookina