週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.66

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 今週の音楽ニュース

  3. AI時代の作曲術

  4. 作曲とミキシングのアイデア帳

  5. Q&A

  6. Okina’s Picks

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近は、XGの新曲「WOKE UP」をずっと聴いてます。

本当にかっこいい。

日本人ガールズグループで、アメリカやアフリカなどでチャート1位を獲得し、今や、乗りに乗っています。

メンバーは20歳前後ですが、何年もの修行期間があったようで、その間にハードなダンスや歌のレッスンをこなしていたそう。さらには全員が英語、日本語、韓国語を話せるトリリンガルです。

最近は、いきなり海外で凄まじい活躍をする日本人が増えてきていますよね。野球の大谷とか、ボクシングの井上とか。

とにかく曲がかっこいいな、と思って作曲家を調べたところ、作曲の3人は全員アメリカ人でした。

こういう曲はやはりアメリカ人プロデューサーが得意とするところでしょうし、K-POP自体がアメリカ文化と深い繋がりがあるので、納得です。

ついでにK-POPを調べていると、カムソンサウンドという韓国人プロデューサーによるオンライン講座を発見。

ちょうど2期生を募集していて、講師も信頼できそうな韓国で活躍しているプロデューサーたちなので、K-POPサウンドを学びたい人にとってはとても良い講座だと思いました。値段は月5万円ほどで、専門学校よりは安いですね。。

僕も受講しようか迷いましたが、日本人向けに特別カリキュラムが組まれていて、バンドサウンドのレッスンが多めだったので辞めました。

バンドサウンドをはじめとする、あらゆるジャンルの音作りを学びたい人にとっては、普通に良い講座だと思いますので、気になる方は受講してみるのもアリだと思います。

📱今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
  1. Asliceというツールを使ったDJが、自分のセットでトラックをフィーチャーしたプロデューサーに報酬を支払う。→ DJと比べて、トラックメーカーの報酬が少ないという点に目をつけたDJ「DVS1」が設立した素敵なサービスです。ただし、DJはギグが終わった後にUSBをパソコンに取り込んだり、あらかじめ曲のメタデータをトラックに反映させておかなければならないなど、手間がかかる割にDJにとってのメリットがあまりないので流行らない気がしますね。

  2. 人工知能(AI)法:理事会、AIに関する世界初の規則に最終的な許可を与える→EUでAI規制が厳しくなりましたが、今後はこういった法で身動きが取りづらい先進国を差し置いて、中国のような国際社会と一線をおいている国のAIがめちゃくちゃ発展するのではないでしょうか。そもそも最近の中国の技術力はとんでもなく発展していますので。

  3. Beam for Maxを使えば、自分だけの照明器具をデザインできる。→クラブの照明はもっと進化できないのかな、とずっと思っていました。こういうのを積極的に取り入れていかないと、クラブ産業に関わるエンジニアが減る一方だと感じます。

  4. Google DeepMind、動画からサウンドトラックやセリフを生成するV2A技術を披露→映画のフォーリーもどんどん不要になっていくのでしょうか。Googleが動画から音を生成するAIを発表。また一般公開はされていませんが、早く試してみたいですね。

  5. Antaresの新しいヴォーカル・ディエッサーは、AIを使って "ヴォーカルの特性を損なうことなく "望ましくないシビランスを除去する。→AntaresからAIを活用したディエッサーが登場。ミキシング・マスタリング系のプラグインの多くは、これからもますますAI化が進み、使い勝手が良くなっていくでしょうね。

🤖AI時代の作曲術

最新のAIプラグインやAI作曲ツールの紹介、

SunoAIの音声入力機能が画期的!

先週公開されたSunoAIの新たな機能であるオーディオ取り込みを試してみました。

この機能では、自分で机を叩いてリズムを取ったり、鼻歌を歌ったり、アカペラを入力することで、そのオーディオに合ったコードやメロディ、ベースラインなどを自動生成し、一つの楽曲としてまとめてくれます。

実際に試してみたところ、鼻歌なら鼻歌のキーを読み取って音が大幅に外れないような絶妙なコードやメロディを足してくれます。また、鼻歌のリズムをしっかり読み取って、そのリズムに合わせたビートやドラムを生成してくれるところも非常に優れています。

ただし、今はSunoAIにはステム処理などをして微調整する機能がないため、本格的な音楽制作者よりも、手軽に音楽を作りたい遊び的ツールです。

例えば、TikTokの音楽を自分で作ってその音楽で踊りたい人や、自分専用の作業用BGMを作りたい人、友達の誕生日ソングを自分たちで作ってみたいといった、簡易的な遊びの延長のような作曲で使われることになっていくでしょう。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

Trikk「FL Studioのおかげで、アーティストとしての今の自分がある。

僕はTrikkというアーティストが大好きで、よく聴いています。音がとても個性的なので、曲を聴くとすぐに彼の曲だとわかります。

そんなTrikkの最新インタビューの中から、気になった言葉をいくつか抜き出しました。ダンスミュージックを作っている人は、ぜひ参考にしてみてください。

使用しているDAWと、それを選んだ理由を教えてください。

「FL Studio。シンプルで、ダイレクトで、サンプル編集の可能性も大きい。僕はロマンチストで、このソフトのおかげで今のアーティストになれた。とても民主的で、音楽制作を始めたいと思っていた人たちが、お金や助けがなくても、いきなり何かを作り出せる可能性があった。

「プラットフォームを与え、力を与え、喜びや悲しみ、そしてその間のすべてを与えてくれる。特に低所得者層にとっては、文字通り命を救い、人々に目的を与えてくれる。深く考えれば、結局はソフト以上のものなんだ。"

スタジオでなくてはならない機材は何ですか?

"明らかな理由で、私のコンピューター。でも、数年前にIbanezのアコースティック・ベースを買ったんだ。音楽に個性と生命感を与えてくれる。

スタジオに最近加わったものは何ですか?

Arturia Dist Coldfire」まだ勉強中だけど、瞬時に何かを与えてくれる。Arturiaの売りは即効性で、それは良い面も悪い面もある。一方では、一旦それを開いて何かを実行すれば、それはすぐに素晴らしいものになる。

新しいトラックやプロジェクトに取り組むとき、何から始めますか?

「僕は主にサンプルを使って仕事をしているから、何かを始めるときはいつも、どこかから手に入れたばかりのサンプルを聴いているんだ。80年代のスペインの無名のシンセウェーブ・サンプルでもいいし、ガーナの伝統楽器のリズム・ループでもいい。

「私の音楽の90%は、サウンドやレコーディング・テクニックの再利用に基づいている。テープ、レコード、デジタルなど、あらゆる音源から数年かけて集めたサンプルのコレクションは、今ではとても大きなものになっている。

「その後、音を重ねていき、ギターやベースを加えたり、ReaktorのRazorのようなプラグインを使ってメロディを加えたりする。最もキャッチーなトラックではないかもしれないけれど、普段は言葉にできないようなフィーリングが必要なんだ。"

トランジェント・デザイナーを使ってみる

「技術的には、個人的にはSPL Transient Designerを全てに使っている。周波数帯域を占めすぎているサウンドを引き締めるのが好きなんだ。一般的に、このプラグインを入れて頻繁に作業するだけで、濁った感じが改善されるんだ。僕の音楽はサンプルを多用するため、多くのノイズ(必要な場合もあれば不要な場合もある)が発生する。SPLはとても役に立っているし、例えばサンプルのディケイを短くしたり長くしたりと、クリエイティブなツールとしても使える。"

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

🧠Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎬Film: 関心領域 - A24の最新作。音響がすごいとのことで観に行ってみました。映像と音で2つのストーリーを同時に味わうことができる斬新な映画でしたが、前情報がないと少々分かりにくい… 事前に、あらすじやおおまかなストーリーを頭に入れておくべきでした。

👯Interview: MIYAVI×成田悠輔「AIで簡単に曲が作れる時代にアーティストが生き残る方法とは?」 - 第一線で活躍してきたアーティストのAI感。やっぱそうだよなーと思いながら僕も観てました。

🪘Tutorial: Dixon & Âme ‘Trikk - Rigor’ @ Woodstock Bloemendaal - 大好きなDJが大好きなトラックメーカーの曲をかける、オランダのフェスのワンシーン。

♣️Cheat: ボーカルEQとコンプレッション・チートシート - Pulsar製品を持っている方限定ですが、様々なEQやコンプの設定が場面別で紹介されています。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.66

2024年6月21日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info