週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.65

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 今週の音楽ニュース

  3. AI時代の作曲術

  4. 作曲とミキシングのアイデア帳

  5. Q&A

  6. Okina’s Picks

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

Kindle本のレビューキャンペーンにご応募いただいた方々、ありがとうございました。アツいご感想をいただき、とても嬉しく思っています。

近々、ご連絡させていただきますね。

さて、ここ1ヵ月ほど、前から放置されていた自宅のモジュラーシンセサイザーを、どうすればうまく音楽制作に活用できるか研究していました。モジュラーシンセサイザー自体は3、4年ほど前に初めて購入したのですが、仕組みが複雑すぎて何を買って何を組み合わせればいいのか全くわからず、いろいろと購入を繰り返して試していたものの、制作に使えるほどには使いこなせていませんでした。

しかし、この数年、懲りずにモジュラーを入れ替えながら動画を見て試行錯誤していたところ、ようやく自分に合った使い方ができるようになり、求めていたサウンドも出せるようになってきました。やはり難しいことでも継続して知識や経験を蓄えることが大切ですね。

今はMoogのMatriarchというシンセサイザーをアルペジオで鳴らすと、モジュラーの2つのオシレーターがMatriarchのメロディーに合った2つの別々のメロディーを奏でてくれる、半自動作曲マシンとして活用しています。音楽制作のAIが出始めた頃は、人間が音楽を作る価値なんてなくなるんじゃないかと思っていましたが、モジュラーシンセサイザーを活用したり、生音を入れたり、アーティストの個性が詰まった楽曲は今後AIにも作れなさそうなので、こういったその人にしか出せない独自性を極めることが、AI時代にアーティストが求められていることなんだろうなと感じました。

別に、アナログシンセやモジュラーシンセを使わなくてもアーティストの個性は出せますが、その機材でしか作れない音というのは確かにあります。モジュラーシンセに興味のある方は初めはうまくできなくて当然なので、少しずつでも始めてみると面白いですよ。

📱今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
  1. ビリー・アイリッシュの『Hit Me Hard and Soft』の名前の由来となったFabFilterのシンセ・プリセットが、そのうちの1曲で使用された。→ビリー・アイリッシュの最新アルバムタイトルとなった Hit Me Hard And Softの元ネタが明らかに。 FabfilterのTwinに入っているシンセプリセットが由来だそう。Twinを探してみると、確かに、まんまプリセットの音でした。

  2. Stability AI、ショートオーディオクリップを意識した音源生成モデル「Stable Audio Open」を発表→学習させているのはフリー素材なので、クオリティは低いのかと思いきや、サンプルを聴いているとそうでもなさそう。 現在、Hugging Faceで利用可能。

  3. Musiclawyer:AIベースの新ツールがあなたの契約書を無料でチェック→レコーディングや配給契約における法律用語の意味を理解するためのAIが登場。 ただでさえ面倒な契約書問題ですが、さらに英語で書かれていると、僕たち日本人は読むの諦めちゃいますもんね。これは普及してほしい。

  4. MNTRA InstrumentsがResonモジュラー・シンセ・ライブラリを無償リリース→Vesperaは、アコースティックとエレクトロシンセシスの境界線を曖昧にしようと試みている。MNTRAから魅力的なモジュラー・シンセ・ライブラリが登場しました。フリーダウンロードです。

  5. KOMA Elektronik、ポリフォニック電磁シンセサイザー「Chromaplane」を発表→ 毎回実験的で面白い楽器をリリースしているKOMAから新たなシンセサイザーが登場。テルミンみたいで面白いですが、狙った音程でうまく鳴ってくれるのでしょう。扱いが難しそうですが、そこら辺も含めてこの製品の魅力なのでしょう。

🤖AI時代の作曲術

最新のAIプラグインやAI作曲ツールの紹介、

これまで一度も使ったことがなかったのですが、Logic Proに搭載されているAIマスタリング機能を使ってみました。EQ、ダイナミクス、ステレオスプレッドの3つを調整するだけの簡易的な機能ですが、EQの精度は思ったよりも高く、簡易的なマスタリングならこれで充分なのではないかと思います。

EQはクリーン、バルブ、パンチ、トランスペアレントの4つから選ぶことができ、どれも原音を崩さない絶妙なセッティングだと感じました。Ozoneのように微調整ができないので、本格的なマスタリングをしたい方には向いていませんが、マスタリングは面倒だからとりあえず音圧を上げてくれればオッケーという方にはおすすめです。

自分でマスタリングをするにしても、一度マスタリングプラグインでどのようにイコライズされるかをチェックし、そのEQカーブを参考に自分でEQをマニュアルで整えるといった、リファレンスツールとしての使い方もありだと思いました。Logic Proを使っている方は、こういったAIツールもうまく使ってマスタリングの精度を高めていくと良いと思います。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

僕はSébastien Légerというフランスのアーティストが大好きなのですが、コロナ期間中に公開されていたチュートリアル動画が上がっていました。

以下のようなことが学べます。

  • サイドチェーンコンプのかけ具合

  • ボコーダーを使ったエフェクト効果

  • メロディーの作り方

  • ボーカルチョップの方法

  • マスタリングチェーン

思ったよりサイドチェーンはがっつりかけてるんだな、とか、ボコーダーのこんな使い方があるんだ、とかいろんなことが学べて、当時は何度も繰り返し観てました。

プログレッシブハウスやAll Day I Dream系の音楽が好きな方は、ぜひチェックしてみてください。

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

🧠Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎬Film: Frida - Prime Video - 去年メキシコに行った時からインスピレーションをいただいている芸術家のフリーダカーロ。ドキュメンタリーが出てました。

🎵Music: 6号室 - ついつい口ずさんでしまう。大好きな1曲。

🎞️Film: マダガスカルの音楽と死生観に魅せられた日本人監督が全編マダガスカルで撮影したロードムービー『ヴァタ~箱あるいは体~』の特報解禁 - 高校時代からマダガスカルの音楽に魅せられてきた亀井岳さんの、旅と音楽をテーマにしたドキュメンタリー映画。「全編マダガスカルロケ」というワードに惹かれました。

🔮DIY Spirit Radio - ニコラテスラの心霊の声を聴くラジオ。ちょっと手間がかかりますが、自作できるようです。何百年後、これは本当に霊界の声を拾っていた、なんてことが明らかになる日が来るかもしれません。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.65

2024年6月14日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info