週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.61

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 今週の音楽ニュース

  3. AI時代の作曲術

  4. 作曲とミキシングのアイデア帳

  5. Q&A

  6. Okina’s Picks

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

この1週間は、Midjourneyによる画像生成やRunwayによる動画生成をいろいろ試していました。

画像から動画を作る技術はまだまだ発展途上で、クオリティーの高い動画を作るにはかなりの知識と経験が必要だと感じましたが、画像くらいなら、ちょっとコツをつかめば、誰でも良質なものを生成できるなという手ごたえがありました。

AIをどのように活用して音楽制作だけでなくプロモーションにも役立てられるか、まだ模索中ですが、今年はOpenAIのSoraも登場することから、来年にかけてアーティスト自らが制作するプロモーションビデオがかなり増えてくると思います。誰もが音楽制作からプロモーションまで一貫してできるようになることで、音楽制作の新たな時代がやってくるでしょう。

そんな新しい時代の指南書として、「AI時代の作曲術」という本をリリースすることになりました。

ニュースレター発行の今日に間に合わせようと思ったのですが、Kindleの審査がなかなか進まず、多分、明日か明後日のリリースになると思います。これから音楽制作がどのように変わっていくのか、AIは音楽制作にどの程度活用できるレベルなのかなど、音楽制作とAIに関わる様々なことに触れていますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

Kindle Unlimitedに登録していれば無料で読めます。

📱今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
  1. アップルの新機能「Music Haptics」は、iPhoneで音楽を「感じる」ことを可能にする→AIを活用した視線トラッキング技術が、音楽アプリに実装されるようになるかも。 Vision Proのアイトラッキングは驚くほど正確なので、これがiPhoneで使えても全然不思議ではないですね。

  2. DAWにAI音声変換をもたらすSoundID Voice AI→まさかのSoundIDがボーカル変換ツールをリリースしてきました。この手のツールはVoice-Swapか、Kits.AIで十分だと思います。Voice-Swapはプラグイン版の登場も間近だそうです。

  3. アップル、iPad Proの新広告で音楽機材の水力破壊を表現 - 人々は激怒→iPadの新広告に苛立っていたのは、日本人だけではなかったのですね。サムスンによるアンサー動画も話題になっていますが、正直何やってんだって感じです。

  4. アナログ導波管モジュールは1971年の理論を使ってキラー共振器を作る→ 何やら面白そうな ユーロラックモジュールが登場しそう。 詳細は今日からドイツで始まるSuperboothにて公開される予定で、このページでは一足早くサンプル音源を聴くことができます。

  5. "ついに夢を現実にすることができました:MidiWrist UnleashedがApple WatchからMIDIコントロールのワザを提供ライブ用のコントロールデバイスとして使うと便利かもしれません。Apple WatchからMIDIコントロールできるMidiWristアプリの最新版が登場。

🤖AI時代の作曲術

最新のAIプラグインやAI作曲ツールの紹介、

Logic ProのAI機能を試してみた

今月13日にLogic Proのアップデートがあり、様々なAI機能が追加されたので試してみました。

ステム分離はかなり性能が良くてびっくりしましたが、まだMoisesやLALALの方が優れているなと感じました。LALALは、様々な楽器を指定して分離できるので、まだLogic Proでは追いつけそうにありませんが、Moisesに追いつくのは時間の問題かなとも思いました。

また、Session Playersにキーボードとベースが追加され、AIによって簡単に楽曲の基礎を作ることができるようになりました。フレーズはかなりAI任せになってしまうので、僕は正直あまり使わない気がしますが、バンドサウンドを作っている方で、特に曲のアイディアが決まっていない状態なら、最初のラフスケッチの生成目的で使ってみるのもありかなと思います。

さらに、AI機能ではないのですが、ChromaGlowというサチュレーションがとても良くてびっくりしました。僕もサチュレーターは数十種類持っていて、用途に応じていろんなものを使っていますが、これほど自然でアナログライクなサウンドのサチュレーターはあまりない気がします。仕事でAPB-16という、セミアナログのミキシングツールを使うことがあるのですが、 この100万円の機材にも匹敵するくらい上質なサウンドに感じました。

今はAbleton Liveをメインで使っているので、Logic Proでしか使えないのが少し残念ですが、Logic Proユーザーにはぜひぜひ使ってみて欲しいです。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

Max Cooperの最新インタビューがとても興味深かったです。

気になったのは、最小限のコンプレッションやサチュレーションによってラウドネスを調整する彼のミキシング手法、もう一つは、ラージモニターが部屋にあるにもかかわらず、椅子にSUBPACというクラブのサウンドシステムが体感できるリュックサックのようなウーファーを取り付け、擬似ウーファーとしてミキシングに使っていることです。

SUBPACは以前働いていたクラブで海外のアーティストがわざわざライブに持ってきていたので、とても気になっていました。僕の家はどう頑張ってもウーファーが置けるような部屋がないため、SUBPACを導入するのもありだなと思いました。

彼はコンプレッションを最小限にし、サチュレーションでラウドネスを出すように心がけているようですが、理由はミックスをナチュラルに仕上げ、最終的に詰まったようなサウンドにしたくないためだそうです。コンプはかけすぎると、パッと聞いた感じ良く聞こえるのですが、いろんな音量で鳴らしてみると音が詰まって前に出てこず、あまりよく聞こえないことが多いです。僕もサチュレーションはミックスにおいてとても重要だと思っていて、実際コンプよりもよく使っています。様々なサチュレーションがあり、かかり方もそれぞれ個性があるので、どれを使うかによっても効果は違ってきますが、最初はSoundtoysのDecapitatorやPlugin AllianceのBlackBox、WavesのScheps Omni Channel 2などのサチュレーターなどを使うと良いと思います。

他にもAIについて話があったりと、興味深いインタビューだったので、気になる方はぜひ観てみてください。

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

🧠Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🏺加水分解したツマミがテュルッテュルになるらしい。試してみる。 - Ableton Pushで試してみましたが、テュルッテュルにはなりませんでした。機材によっては良い感じになるのかもしれません。

🎸iPhoneで作ったというこの全体がバキバキに歪んだ曲がビルボードtop45に入ったというNobulent。 - iPhoneで作ってもこんなにバキバキに歪んだりしないはずですが、ボーカルをiPhoneマイクで録ったんですかね。ビルボード入りにミキシングやマスタリングの良さなんて関係なくなってきているのですね。要はアイデア勝負。

💎LSD(幻覚剤)について質問ある? | Tech Support | WIRED.jp - 「幻覚剤は役に立つのか」の著者であるマイケル・ポーランによるLSDショートセミナー。音楽カルチャーとは切っても切り離せないドラッグ。数十年経てば、おそらく日本でも医療目的で合法化されるでしょう。

🎙️How to Sound Like NPR Tiny Desk - Tiny Deskのマイク&ミキシング考察動画。わかりやすくてタメになります。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.61

2024年5月17日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info