週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.6

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の…

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今週は、訳あってキューバにいます。

街中を歩いていると、伝統的なキューバ音楽や、バイオリンの音色などが聞こえてきて、とても心地の良い街です。

若者にはレゲトンが流行っているようで、3フロアで構成される、今どきの若者が集まるクラブを紹介してもらったのですが、残念ながら今回は行くことができず。

踊ることが遺伝子に組み込まれているような人種が集まる、今どきのクラブ、とても気になりますね。

若者には伝統音楽はあまり受け入れられていないようですが、確かに、僕ら日本人も、日常的にお琴や雅楽を聴いて、うっとりしていないですよね。

キューバの若い人も同じように、伝統音楽には飽きてしまっているようです。

でも、僕たち外国人が街中の伝統音楽を聴くと、やっぱり新鮮で、いつまでも聴いていられるような心地よい気持ちになることができます。

キューバは、ここ数年で情勢がかなり変化しているようなので、次に行く機会があっても、若者が集まるクラブは廃れている可能性が高いでしょう。

ただ、アメリカの廃れた街からデトロイトテクノのような新しい音楽が生まれたように、数十年後は、キューバから新たな音楽が誕生しているのかもしれません。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. PSI Audio AVAA C214 active bass trap→PSI Audioが新型のベーストラップを発表しました。その吸音効果をNAMMでも体験してみましたが、完璧とまではいかないまでも、かなりベース帯域を吸収していましたね。こちらは”アクティブ”なので、電源駆動のベーストラップとなります。音の吸収量は、なんと45倍の大きさの従来のベーストラップに匹敵するそうです。

  2. Expressive E Osmose takes keyboards to “level nobody thought possible”, says Jordan Rudess→Expressive Eは、MIDIを拡張する数々のおもしろい製品をリリースしているメーカーで、僕もToucheというコントローラーを所有しています。(全然使ってないけど…) 今回発表されたOsmoseは、3Dの画期的なキーボードを搭載したシンセサイザーで、プリセットの音もかなり個性的で面白いものが多く、発売されれば、いま僕が使っているProphet-6やNI Komplete Kontrolの代わりに、次のマスターシンセにしようと考えています。

  3. Embody expand Immerse Virtual Studio→Embodyは、以前からHRTF(頭部伝達関数)を測定し、ヘッドフォンを使ったバーチャルスタジオを構築するためのソフトを販売していますが、今回のアップデートでDolby Atmosなどのイマーシブに対応したようです。先週のニュースレターでご紹介したSonyのヘッドフォン&測定システムも素晴らしかったですが、こちらもかなり気になります。

  4. How to Use ChatGPT to Improve Your Music Productions→「Logic Proを使って、Van Halenの「Jump」に似たシンセサウンドを作るにはどうすればいい?」こんな質問にも、ChatGPTは答えてくれます。エンベロープはこうしましょう、シンセのオシレーターは三角波をつかいましょう、このパラメーターはこうしましょう、というふうに、かなり具体的な指示を与えてくれます。音楽制作に精通した人なら、音色を聞いただけで、こういった情報はわかるものですが、AIの登場によって、素人でも熟練者にしかわからないような情報に、気軽にアクセスできるようになったのは素晴らしいですね。

  5. Web3 Funding Is Cratering, Data Shows — Potentially Spelling Trouble for Numerous Music Startups→Web3 (この例では、暗号またはブロックチェーンを利用したスタートアップ)を使った資金調達が前年比で83%減少しています。この記事を見ていると、Web3は単なるトレンドで終わる可能性がありますね。いま使われているドルや円の価値が下がったり、世界中の人々が主軸通貨に懐疑的になれば、ビットコインなどの暗号通貨の価値が見直されるかもしれませんが、今後数年は、Web3トレンドは廃れていく気がします。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

これ、全然新しい機材ではないのですが、最近ボンゴやジャンベなどのパーカッションを録音したいなと考えていて、ふと思い出しました。

パーカッション系ソフトはたくさん販売されていますが、実際に叩いて演奏することで、よりリアルな質感を出すことができるので、いろんなパーカッションの音色を自分の音楽に取り込みたいと考えている方におすすめです。

OLAibiさんというアーティストが、確かこの機材を使ってライブをしていたと思いますが、本格的なライブでも十分使えるほどのクオリティ。

内蔵音源は850種類もあり、ミュート奏法をはじめ、手のひらを使った力強いショットから、指先を使った繊細な演奏まで、打楽器ならではのダイナミックな演奏表現が行える、とのこと。

僕も、昔触ってみたことがありますが、どんな感じだったかほとんど覚えていません。

この機会に、また楽器屋に寄って触れてみようかと思います。

  1. 今週の…

ここでは毎週違ったテーマ、例えば、日本や世界各地で録りためたフィールドレコーディング、おすすめの1曲、音楽に関する映画、などをお届けします。皆さんの音楽制作の刺激になるような、おもしろいコンテンツを毎週ご用意していきたいと思います。

今週は、NAMMを終えてキューバにいますので、そこで収録したライブ演奏をお届けします。

ハバナにはいろんな音楽が溢れていますが、町でよく見かけるバンドなら、ボンゴ、クラシックギター、キーボード、ボーカルといった小編成が基本です。

本格的なショーになると、トランペット、フルートドラム、ベースといった、日本と何一つ変わりない本格的なバンド演奏を楽しむこともできます。

ホテルでは毎晩、誰かが演奏していますし、小さな町のレストランでも生楽器の演奏を聴けるので、音楽好きにはとても刺激的な町だと感じます。

毎年、ドラムフェスティバルも開催されていて、Celine Dion, Bon Joviなどの著名アーティストのレコーディングにも参加する、Aldo Mazzaというドラマーも、毎年このフェスティバルで演奏するためにやってきます。

さて、今回の録音は、ホテル内のバーでの演奏。(マイクはDPA4060のOmniを2本、レコーダーはTentacle Track Eを使い、32bit floatで録音)

まともなスピーカー配置ではないので、音質が良いわけではありませんが、美しいホテルの中で音が反射し、これはこれで良い響きだなあと感じながら聴いていました。

音楽はPA、ミキシング、マスタリングも大切ですが、作り手や演奏家の想いがあれば、音質にそこまで固執する必要もないのかもしれない…と、ふと感じたキューバでの滞在でした。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎧DJ: Stimming 4D Full set - Stimmingは、常に新しい技術を使った音楽制作やライブのアプローチを試みています。4D setという立体音響ライブを行った時の音源が、SoundCloudで公開されています。

📖記事: How to use the circle of fifths in modern music productiont - 音楽理論がわからなくても、五度圏の仕組みぐらいは覚えておくと、音楽制作にすぐに役立てることができます。このシステムを応用したDJソフトや、Max for Liveプログラムもあります。

📚本: 音楽と生命 - 坂本龍一さんの著書。まだ、まったく読めてないですが、タイトルからしてかなり気になります。

🎹シンセ: The Roland System 100 from 1975 - この記事では、RolandのSystem100の音色が取り上げられています。Petar DundovというDJ/プロデューサーがこちらのシンセを愛用していますが、やはり素晴らしい音色ですね。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.6

2023年4月28日発行

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