週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.47

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 今週の音楽ニュース

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. DIYアーティストのためのマーケティング戦略

  5. Q&A

  6. ブログ更新のお知らせ

  7. Okina’s Picks

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近、iPhoneのヘルスケアアプリと聴覚検査アプリを連動させ、自分の聴覚にパーソナライズされた音で音楽を聴いています。

これがかなり良く、音楽を聴く喜びを取り戻させてくれるので、皆さんにもおすすめしたいと思い、取り上げました。

聴覚は歳を重ねるごとにだんだんと衰えてくるものですが、その衰えを聴覚検査アプリで調べ、衰えた部分の音量を補正することによって、10代~20代の頃に音楽を聴いていた感覚を呼び覚ますことができます。

これはiPhoneと、AirPodsもしくはBoseのヘッドフォンを持っている人だけの機能ですが、 これらをお持ちの方はぜひ試してみてください。 アプリはヘルスケアに連動するものだけに限られますが、こちらのアプリが測定結果も正確でおすすめです。

ちなみに、僕の場合は長い間クラブでPAをしていたせいか、125~250Hzが比較的落ちているので、ヘルスケアアプリを使ってその部分を補正しています

125~250Hzと言えば、ダンスミュージックはもちろん、様々な楽器の芯となる部分なので、ここが抜けてしまうと厚みがなく、単にシャキシャキした音になってしまうんですよね。自分の聴覚がここまで落ちているのかとびっくりしてしまいましたが、もしかしたら生まれつき、こういう特徴を持った聴覚なのかもしれません。

でも、補正された音で音楽を聴いてみると、と実に気持ちいい!

このアプリの欠点というか、すべての聴覚検査アプリの欠点なのですが、125Hzまでしか測定することができません。僕はよくダンスミュージックを作っているので、80Hz、40Hzといった低域まで測り、それをヘルスケアアプリに反映させて音楽を聴いてみたいと思っていますが、これを行うには、自分でアプリを作るしかありません・・・

またまた、やりたいことが増えてしまいました。

さて、iPhoneの音質に自分のデータを反映させなくても、ただ自分の耳の状態を把握するのにもとても面白いので、 「自分の耳はどれぐらい衰えているんだろう」と気になった方は、こういった聴覚測定アプリをぜひ試してみてください。

📱今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
  1. アンビエント・ミュージックを作ってSpotifyから月3000ドル稼ぐ方法→先日もご紹介したSpotifyで3000ドルを稼ぐ日本人アーティスト、青山ミチルさんに影響を受けた記事でしょう。青山ミチルさん以外にも数人のアーティストのインビューが載っており、Spotifyで稼ぐことについてどう思うか、などアーティストの稼ぎ方についても言及されています。

  2. Moog Animoog Galaxy, Apple Vision Proのイマーシブ・シンセサイザー→いよいよ、アメリカでApple Vision Proが発売されました。それに伴い、Moogはジェスチャーや手の振りに対応するよう設計されたソフトウェアシンセサイザーAnimoog Galaxyを発売。果たしてこれが未来の音楽制作になるのでしょうか。日本での発売が待ち遠しいですね。

  3. AbletonとTeenage Engineeringのベテランが新会社を設立、最初の製品を発表→Ableton, Teenage engineering, Spotify, XLN Audioなどで経験を積んだ音楽業界の2人のベテランが新会社を設立し、製品を発表しました。まだ詳細は出ていませんが、ティザーを見る限り、新しいDAWなのでしょうか。音楽業界の中でもかなりクリエイティブな会社での経歴を積んできた2人の出すプロダクト、期待せずにはいられません。

  4. 2024 グラミー賞最優秀エレクトロニック/ダンス・レコーディング賞はスクリレックス、フレッド・アゲイン、フローダンの「Rumble」に決定→ ついにグラミー賞が発表されましたね。ダンス部門では、スクリレックスのトラックが最優秀賞に選ばれました。隙間のある低音が気持ちいい!!

  5. AlgoriddimのdjayアプリがApple Vision Proと連動し、Apple Musicストリーミングを統合→ 以前はSpotifyに対応していたdjayアプリですが、今回アップルミュージックに対応したことで様々な曲でdjayを使えるようになりました。さらに、最近発売されたApple Vision Proと連動し、 djayアプリをAR空間内で使うことができます。とにかく精度が気になるApple Vision Pro、そのうち触れるタイミングが出てくると思うので、またレビューいたします。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

ボーカルには特性の異なる2つのコンプを使う

2つ以上のコンプを段階的にかけることをシリアルコンプレッションと言いますが、これを使うと、より自然にコンプ感を与えることができます。

よくあるボーカルコンプの使い方としては、アタックタイムの速い1176系コンプを使ってピークを抑え、次にアタックタイムの遅いLA-2A系コンプでボーカル全体を緩やかに整えるといった方法があります。

ボーカルのようにダイナミクスの大きい音だと、1つのコンプで一気に圧縮するより複数のコンプで徐々に圧縮した方が、自然な結果が得られることが多いのです。

コンプの特性を理解していないと、なかなか使いづらいテクニックかもしれませんが、例に挙げた1176とLA-2Aの組み合わせは定番なので、これらのコンプを持っている方はぜひ試してみてください。

ちなみにLogic Proユーザーなら、標準のコンプで特性を選べるので、FET(1176)とOPT(LA-2A)を組み合わせることで同じ効果が得られます。

他にもボーカルのクオリティを上げるためのテクニックをこちらの記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

📊DIYアーティストのためのマーケティング戦略

音楽で稼ぐにはどうすればいいのか?どのようにリリースするのが効果的なのか?DIY(インディペンデント)アーティストが、より多くの人に自分の音楽を聞いてもらう方法を探っていきます。

ChatGPTを使ったアートワーク制作

最近はすっかりChatGPTでアートワーク制作をしていますが、ChatGPTから出てくる画像は少し解像度が低いので、そこがデメリットになってくるかと思います。(1024×1024までしか出力できませんが、配信プラットフォームの推奨は3000×3000です)

これを解決するのが、いろんなメーカーから出ている「アップスケーラー」というツール。これは解像度の低い画像をAIが解析し、高解像度に変換してくれる機能を備えています。

いろんなツールがありますが、有名どころだとTopaz Labsでしょう。

Topaz Labsは、写真や動画のクオリティを高めるための様々AIツールを展開していて、AI画像にはこちらのGigapixelを使うのが良いと思います。

SpotifyやApple Musicで配信するくらいなら画像の荒さはあまり気になりませんが、CDやレコードのジャケットとして使ったり、プロフィール画像やカバーアートなどにもAI画像を使う予定なら、アップスケーラーがかなり役立ちます。

もしアーティスト関連の画像を高品質なAI画像で揃えたいなら、アップスケーラーの導入を考えてみても良いかもしれません。

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

🧠Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎬Film: 映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』海外版本予告 - 2024年、ジャマイカの世界的トップスターであり、“レゲエの神様”と称されるボブマーリーの自伝映画が公開されるようです。これはとても楽しみです。

💻Max for LiveMaking ambient music with generative Max for Live sequencer Tombola - Max for Liveユーザーなら無償で使えるこちらのTombola、実はOP-1 Fieldに搭載されているシーケンサーをそのまま取り出したものです。これを知ってからアンビエントの制作によく使っています。

📺YouTube: 五分目悟: 音楽に関係なさすぎて申し訳ないのですが、めちゃくちゃセンスのあるCGクリエイターを見つけたのでご紹介させてください。初めてバーバパパを観た時も衝撃を受けましたが、五文目さんはただぶっ飛んでいるだけでなく、世にも奇妙な物語的なセンスも併せ持つ素晴らしいクリエイターです。音楽制作の合間にどうぞ。

🧬Science: Acoustic cameras can SEE sound: 音を可視化する「アコースティックカメラ」がとても面白い。高速で動く電車の動画から、タイヤのどの部分が故障して音が鳴っているのかを知ることができたり、ある騒音を発する機械の写真にマウスカーソルを合わせることで、その機械の、どのパーツがどんな音を鳴らしているのかを知ることができたりと、主に産業用に使われているアコースティックカメラですが、インスタレーションなどに使ってみても面白そうだなと思いました。この技術自体は昔からあるようですね。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.47

2024年2月9日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info