週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.46

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 今週の音楽ニュース

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. DIYアーティストのためのマーケティング戦略

  5. Q&A

  6. ブログ更新のお知らせ

  7. Okina’s Picks

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

世界一の楽器見本市「NAMM Show」、今年は例年通り1月に開催されました。

新製品発表や会場の様子を知りたい方は、毎年現地に足を運んでいらっしゃるRockoN Companyのレポートをチェックするのがおすすめです。

NAMMだからといって、特に革新的な機材やソフトが登場するわけではないのですが、NAMMの時期に合わせて新製品を発表するメーカーもあるので、この時期は新製品のニュースが多めです。

今回、特に気になったのは、これらの製品。

  • Korg Opsix MK2 FMシンセ

  • Audient Oria イマーシブオーディオインターフェース

  • AlphaTheta Omnis-Duo DJコントローラー

  • YAMAMA SEQTRACK ポータブルシーケンサー

  • Kii SEVEN モニタースピーカー

MusicTechにも、注目の新製品情報がまとめられているので、あわせてチェックしてみてください。

個人的に一番気になっているのはKii Sevenで、早く聴いてみたいのですが、代理店によると今年の第二四半期以降に日本に入るとのことでした。Kiiは小規模メーカーということもあり、販売時期の情報はあまり当てにならないので、気長に待つことにします。

YAMAHAのシーケンサーは、明らかにTeenage engineering OP-1を意識したものだと思いますが、価格はかなりリーズナブルで、これから音楽を作ってみたいユーザーにピッタリの製品。VJやARなど機能も盛りだくさんで、もしかするとかなりのヒット作になるかもしれません。

Audient OriaはiPadコントロールにも対応した、イマーシブ対応のオーディオインターフェース。個人レベルではあまり必要がないと思いますが、サラウンドやイマーシブを構築する現場が出てくれば、ぜひ導入してみたいなと思っています。

その他の製品も、日本に入ってきたら一通り試してみたいですね。

現代の音楽制作だと、正直Ableton Liveといくつかのプラグインがあれば十分だと思いますが、ハードウェアは何かワクワクさせてくれるものがあり、やはりこの時期はテンションが上がります。

NAMMの新製品情報が気になる方は、ぜひRockoN CompanyやMusicTechなどのメディアをぜひチェックしてみてください。

📱今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
  1. Apple MusicとSpatial Audio:3Dでミックスされた楽曲のロイヤリティがアップ→ 以前のニュースレターでもお話ししましたが、ついにアップルがSpatial Audioでリリースされたトラックのロイヤリティーをアップさせることを公表しました。 最近はAIマスタリングでもSpatial Audioに対応したフォーマットがあるので、ミックスはそこまで難しくありませんが、Spatial Audioでリリースするには追加料金が必要なので、そこら辺の兼ね合いによっては、必ずしもSpatial Audioで出す必要は無いかもしれません。

  2. MusicDevelopments、AIアシスタントを搭載したRapidComposerをv5.1にアップデート→メロディやコードを自動生成してくれるRapidComposerがアップデートされました。他のAIアシストツールに比べて特別優れているわけではありませんが、今後のアップデートによっては、かなり制作に役立つツールになるのではないかと思っています。

  3. Fiedler Audioが「Dolby Atmos Composer Essential」を無償配布→なんとFiedlerからドルビーアトモスミックス用プラグインが無償配布が始まりました。 今後、ドルビーアトモスでミキシングをしようと考えている人は、今のうちにダウンロードしておくと良いでしょう。

  4. Spotifyがアプリ内課金を開始、「スーパーファンクラブ」の登場を示唆→ 2024年はスーパーファンの年、らしいです。まだ詳細は発表されていませんが、 アーティストとファンが直接つながり、直接商品やサービスを売買するような、プラットフォームの形が出てくるのでしょうか。YouTubeのメンバーシップ、Patreon、メルマガやニュースレターなど、すでにスーパーファンを意識したビジネスはいくつかありますが、今後はアーティストにとって、いかにファンと交流を深めるか、ということがより重要になってきそうです。

  5. NAMM 2024:SoundCloudがDJ Freshが設立したVoice-Swap AIとのパートナーシップを発表→SoundCloudは、AIの導入に積極的です。Voice-Swap AIは自分の声を他のアーティストの声にAIを使って変換できるサービスですが、こういったテクノロジーは2023年に良くも悪くも色々と話題になりました。「声には著作権がないのか!」と規制を求める人もいますが、この流れはますます加速するでしょうね。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

AIVAを使ったAI作曲

過去にAI作曲に関する記事を書きましたが、この中で紹介しているAIVAは、今のところ一番実用的なAI作曲ツールなのではないかと思います。

AIVAは、曲の長さやリファレンス曲などを指定するだけで、自動的に曲を作ってくれます。うまくいけば、AIが自動作曲したとは思えないクオリティの曲がでてきます。

まだ発展途上の技術ということもあり、曲のところどころに違和感はありますが、実は、AIVAはステムを書き出せるので、そのステムからリミックスのような形でアレンジすることにより、違和感のない曲に仕上げることができます。

リミックスといっても、元素材はAIが作っているため、完成したものは自分のオリジナルソングとなります。

最近はsumo AIなどの高性能な作曲ツールが登場していますが、やはりまだ完全にAIが作曲するのは技術的に難しいため、いろんな会社がAIVAのようにステムを吐き出せる仕様になるのが理想ですね。

📊DIYアーティストのためのマーケティング戦略

音楽で稼ぐにはどうすればいいのか?どのようにリリースするのが効果的なのか?DIY(インディペンデント)アーティストが、より多くの人に自分の音楽を聞いてもらう方法を探っていきます。

リスナーが求める曲を知る

先週ご紹介した「Musicstax」を使えば、Spotifyでリリースされている曲の「人気度(Popularity)」を数値で知ることができます。

ある程度リリースを重ねたら、このサイトで自分のアーティストページをチェックし、どんな曲がリスナーに人気なのか調べてみましょう。

SpotifyやApple Musicでも人気曲はわかりますが、数値まではでてこないので、実際にどのくらい人気があるのかまではわかりません。

また、好きなアーティストと比較してみるのも面白いです。ジャンルによって人気度はかなり違うので、自分と同じようなジャンルの曲を作っているアーティストと比較することをおすすめします。ポップスだと売れているアーティストの曲の人気度はかなり高く、80~90%あることもあります。ダンスミュージックだと、30~40%あれば、かなりの人気曲だと言えるでしょう。

自分の個性を殺してまで流行りに合わせる必要はありませんが、1つでも人気曲を持っていれば、それに関連して他の曲も聴かれる可能性が増えるので、意識して売れる曲を作ってみるのも戦略の1つとして良いのではないかと思います。

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

Q1.

毎週メルマガ投稿ありがとうございます!

質問なのですが、下記の曲のようなベース感をだすおすすめ方法があれば教えていただきたいです。

機材、プラグインどちらでも良いのでお伺いしたいです。 (よければどちらも🙇🏻)

よろしくお願いいたします!

A1.

ご質問ありがとうございます!

ベース機材には疎いのですが、プラグインで揃えるなら、クリスピーなサウンドのベース音源「SCARBEE RICKENBACKER BASSに、アンプシミュレーターやエフェクター全部入りバンドル「Guitar Rig 7 Proを組み合わせるのはいかがでしょうか。

この2つだけでも、いろんな種類のベースサウンドを再現することができます。

また、このベースを再現するなら「ディストーション」と「コーラス(フェイザー・フランジャー)」も大切です。例えば、Eventide「Instant Flanger MK2」や「TriceraChorus」などの空間系プラグイン、Fabfilter「Saturn」やiZotope「Trash」といったディストーションをお試しになると良いと思います。

あと、ベースのグルーブ感・まとまりを出すために、dbx160を試してみてください。(UADのサブスクで使えますが、WavesやNative Instrumentsなど他のメーカーのものでもOKです)

普段、僕がシンセベースに使っている方法ですが、思い切って10dbくらいゲインリダクションをかけると、音にまとまりが出て、曲に馴染みやすくなります。

🖊️ブログ更新のお知らせ

最近、マスタリングチェーンに必ず入れているリミッタープラグイン。

これは、高性能のトランジェントシェイパーとクリッパーも入っていて、かなりおすすめですよ。

リミッターをどれか1つ選ぶとしたらiZotope Ozoneになりますが、ここからさらにマスタリングの精度を上げていきたいなら、次のリミッタープラグインとしてElevateが選択肢に入ってくると思います。

🧠Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🕺🏻Interview: Barker - Against The Clock - エレクトロミュージシャン/DJのBarkerが、Octatrackなどのハードウェアを駆使し、メロディアスで複雑なサウンドを、ものの数分で生成します。他にもBarkerは、パーカッシブな実験のためのプレート・リバーブを作る方法の動画のなかでマニアックなDIYプレートリバーブを披露したりと、かなり面白いアーティストです。

💿Album: 多くの空港のための音楽 - Brian Enoの、20世紀で最も重要な録音のひとつ「Music for Airports」に影響を受けたアーティストの作品が紹介されています。

🔧Live Setup: Mattokind: Live Setup - Mattokindによるライブセットアップの紹介動画。MIDIコントローラーに複雑なパッチをアサインし、巧みにコントロールしているのが見事ですね。AbletonのLooperや、iPadのグラニュラーシンセアプリを使うことで、自分自身もライブで飽きないよう工夫がなされています。

🎵Tips: COULOU が教える音楽のアイデアを生み出す 6 つの方法 - 制作のアイデアに行き詰まった時に役に立ちそうな、いくつかの実用的なアドバイスが記載されています。「音楽以外のインスピレーションの源を使うことも、本当にパワフルだとわかった。本を読んだり、ショーや映画を見たり、美術館に行ってアートを見たり、アートを見ている人たちを見たり......そういった空間で、どんな音楽がそのような経験をより豊かにしてくれるかを考えることができる。私たちは皆、毎日聴いている音楽で人生のスコアをつけているのだから、音楽がないときに何が出てくるかを聴くことは、創造性を掻き立てる素晴らしい方法だ。」「ギターやピアノで曲を学んだり、自分でカバー曲を再現したりレコーディングしたりするのも好きです。「新しい曲や新しいコードを覚えた後、その新鮮な体験が習慣を打ち破り、アイデアが自然に湧いてくることがよくあるんだ」「それから1週間、私はリアルでエキサイティングな音楽を創り続けた。それ以来、私は何度も創造的なブロックを経験したが、そのブロックを乗り越える唯一の方法は、ただ座って何度も何度も創作することだとわかった。」

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 Vol.46

2024年2月2日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info