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週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.44
このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。
プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。
あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。
目次
近況
今週の音楽ニュース
作曲とミキシングのアイデア帳
DIYアーティストのためのマーケティング戦略
Q&A
Okina’s Picks
📝近況
ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。
今週は映画の仕上げに追われていますが、Distrokidに1曲、リリース予定の曲をアップしました。
多忙な時期だと、青山ミチルスタイルはなかなか難しいですね。
来週からは、週1曲のリリースを目標に音楽制作を進めていこうと思います。
さて、以前のニュースレターでSubmitHubに自分の曲を提出し、フォロワー3,000人のプレイリストに乗せてもらったとお話しましたが、あらためて確認してみるとSubmitHubには「承認済み」となっていたものの、「あなたのトラックは静かすぎて、私の一番大きなプレイリストに合わない」ということで、同じプレイリスターの別のプレイリスト(フォロワー150人ほど)に載っていました。
僕がちゃんと読んでませんでしたね・・・
フォロワーが少ないプレイリストだと、載っても再生回数はほとんど増えないので、どこかのタイミングで大きなプレイリストを狙いに行く予定です。
毎回SubmitHubにお金を払うわけにもいきませんので、しばらくはSpotifyのピッチ機能のみを使って、プレイリストを狙うことにしたいと思います。
📱今週の音楽ニュース
「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
AlgoriddimがDjayをApple Vision Proに導入→Djayは、ステム分離やオートミックスなどのAI機能がついたDJソフトです。来月のApple Vision Proの発売にともなって、Vision Pro内でDJができるサービスを開発中とのこと。もう自宅でのDJ練習にもミキサーやCDJを買う必要がなくなり、観客が大勢いるクラブやフェスの環境を再現しながらDJできるようになっていくのでしょう。一度、クラブでもVision ProをかけながらDJしてみたいです。
AI音楽ジェネレーターSplashがAmazon Alexaスキルをデビュー、音声プロンプトでカスタム曲作成が可能に→AI音楽生成プラットフォーム「Splash」がAlexaで使えるようになります。SplashはAIマスタリングツール、高品質のwavやステムのダウンロード、歌詞ビデオの作成機能まで備えていて、簡単な音楽なら誰でも瞬時に作れますし、ステムデータを使って編曲することも可能。僕も仕事でAI作曲ツールを使う機会が増えてきましたが、数年後にさらに精度が上がれば、プロの作曲家ですらAI作曲ツールを積極的に使うことになるだろうと感じます。
フリー・モジュラー・シンセサイザーVCV Rackを使ったモジュラー・シンセシス入門→無料のVCV Rackを使ったモジュラーシンセ入門講座の動画。モジュラーシンセとは何か?から細かいモジュールの役割について丁寧に解説されています。モジュラーシンセに興味が湧いてきたら、まずはこの動画で概要をつかんでおくと良いでしょう。
ヤマハからポータブルな音楽制作オールインワンギアSEQTRAK登場→OP-1を意識したポータブルワークステーションが登場。シンセ、ピアノ、ドラムなどの内蔵音源をシーケンサーで組み立て、さまざまなエフェクトをかけたり、iOSアプリを使ってより詳細なエディットをしたりと、思い描いたアイデアを形にするためのさまざまな機能がついています。本格的な作曲ツールにはならないでしょうが、これだけの機能がついて55,000円はかなり魅力的です。
ベスト・リバーブ・プラグイン2024:無料のリバーブ・プラグインと有料のリバーブ・プラグイン→MusicTechが選ぶおすすめのリバーブプラグインの記事。SuperPlateとSeventh Heaventhはかなりいいですよ。smart:reverbは、VaundyもおすすめしているAIリバーブプラグイン。僕なら、AltiverbとBlackholeもリストに入れますね。
📘作曲とミキシングのアイデア帳
作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。
サブウーファーは必要か?
サブウーファーを導入すると、どれくらいリスニング体験が変わるのかを紹介した動画がありました。
サブウーファーがあった方が、確実に低音のミキシング・マスタリングの精度は上がります。大きな音が出せる環境があるなら、絶対に導入した方が良いと思います。
ただ、ウーファーを入れると部屋鳴りもしっかり調整する必要があり、ウーファーを入れることで余計ミックスしにくくなってしまう可能性もあります。
なのでウーファーを入れるなら、Neumannのような部屋鳴りを調整するための測定マイクがついているものがおすすめ。
いま僕が使っているスピーカーだと、解像度は高いのですが80Hz以下の低音が弱いので、マスタリングには必ずヘッドフォンを使う必要がでてきます。ヘッドフォンだとかなり低い低音までチェックできますが、やはり低音はスピーカーの方が圧倒的に聴きとりやすいですね。スピーカーだと低音を身体で感じることができます。
これから新しいスピーカーの購入や乗り換えを検討している人は、まずKH80やKH120を購入し、よりミキシングやマスタリングの精度を上げたくなったら、サブウーファーKH 750を導入するという順番が良いかと思います。
📊DIYアーティストのためのマーケティング戦略
音楽で稼ぐにはどうすればいいのか?どのようにリリースするのが効果的なのか?DIY(インディペンデント)アーティストが、より多くの人に自分の音楽を聞いてもらう方法を探っていきます。
音楽マーケティングのチャンネルを運営しているAndrew Southworthが、「ほとんどの音楽マーケティング担当者が同意すること」として次の文章を紹介していたので引用します。
素晴らしい音楽を作る
これはあまりショックなことではないと思うが、音楽が重要であることは誰もが認めるところだ。
素晴らしいマーケティングを行った凡庸な曲が、ほとんど、あるいは全くマーケティングを行っていない素晴らしい曲を上回るという点では、人々は同意しているようだが、音楽がゴミであってはならない。音楽が主観的なものであることは明らかだ。これは、少なくとも良いと思う聴衆がそこにいなければならないということだ。
素晴らしい音楽は、マーケティングを容易にする。
ソーシャルメディア
ソーシャルメディアが重要であり、オプションではないことは誰もが同意する。あなたが音楽アーティストになりたい場合は、少なくともソーシャルメディア上で多少アクティブでなければなりません。
しかし、その時の流行や人気のあるものに合わせる必要はない。あなたが楽しんでいて、実際にあなたのファンがいるプラットフォームに集中するのが理想的だ。もしあなたのオーディエンスが35~44歳だとしたら、TikTokはあなたのベストなプラットフォームではない可能性が高い。
ソーシャルメディアページをあなたのステージとして扱う。コンテンツを作るのではなく、記録する。
リリーススケジュール
ほとんどの場合、4~8週間ごとに音楽をリリースするのがベストであることは誰もが認めるところです。
アーティストがそれをやり遂げることができれば、2週間ごとや毎週リリースすることに意味がある場合もあるが、これは普通ではない。ほとんどのアーティストにとって、4~8週間ごとにリリースすることは理想的であるだけでなく、持続可能である。
そうすることで、音楽を作る時間だけでなく、音楽を適切に宣伝する時間も確保できる。
ストーリーを語り、ブランドを構築する
自分のストーリーとブランドを理解し、そのストーリーとブランドを消費するターゲット・オーディエンスを知るべきだ。
私が話をした誰もが、アーティスト(またはその周りのチーム)がオーディエンスを理解することで、自分たちのやっていることがそれに沿ったものであることを確認することができると話していた。
アーティストにはストーリーがあり、曲にはストーリーがある。これは、ソーシャルメディアのコンテンツや広告、そして時には音楽そのものにさえも影響を与える。
広告は素晴らしいが、それ以上でなければならない
広告だけでもかなりの成果を上げることができるが、オーディエンスを増やすには広告以上のものが必要だ。
ソーシャルメディア・コンテンツ、ブランド構築、ライブ活動、Eメールリスト構築、ライブストリーミングなど、あらゆるものが必要になってくる。
多くの場合、アーティストが予算を得る前に、自分の音楽を無料で売り込む方法を知っていれば理想的だ。そうすることで、オーディエンスを知り、コンテンツ戦略を考える時間ができ、広告がとても簡単になる。有料のマーケティングは、あなたのリーチを増幅し、オーガニックよりもはるかに速い速度で新しい人々を引き込むことができますが、あなたがそれらの人々の興味を維持しなければ、彼らは周りに固執しません。
ここまで引用です。
良い音楽を作る、ターゲット層によってSNSを使い分ける、ストーリーを売る、という意見には納得です。
リリーススケジュールは4~8週間ごとが理想と書かれていますが、これに関しては、アーティストによると思います。
青山ミチルスタイルでいくなら毎日アルバムリリースですし、 レコーディングが必要な音楽なら、4~8週ごとのリリースが理想的かもしれません。
アンビエントやパソコン内で完結する電子音楽なら、曲作りにあまり時間をかけなくても良いので、もうちょっとリリースの頻度を上げてプレイリストに乗る確率を高める戦略も良いでしょう。 マスタリングもAIで十分ですし、プレイリスト狙いなら2~3分の曲で十分。なぜなら、現在のSpotifyのアルゴリズムでは、30秒再生されれば1再生とカウントされるからです。
アーティストとしてのスタイルや作っている音楽、音楽制作にかかる時間などを考えて、最適なリリーススケジュールを組むのがベストだと思います。
🙋♂️Q&A
音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。
Q1.
お世話になります。
メルマガ毎週楽しく拝読させていただいております。
ボーカルに少しデジタル感の加工をしたいと考えているのですが、何かいい方法はありますでしょうか。
こちらの曲くらいの加工ができればと考えています。 よろしくお願い致します!
A1.
ご質問ありがとうございます!
最近、日本でもよく耳にする「アマピアノ」サウンドをうまく取り入れたTylaの「Water」、中毒性のあるとても良い曲ですよね。個人的にもアフロやアマピアノは大好きなので、かなりツボです。
おそらく、この曲のエンジニアは「デジタルっぽさ」を意識しているわけではないと思うのですが、確かにデジタルのようなざらつきを感じるところがありますよね。
この感じを出すには、2つ方法があると思います。
1つ目は、ボーカルの少しヒスっぽい、ノイズのようにも聴こえる高域部分。
これはマイクの特性だと思いますが、例えば、録音スタジオに置いてあるNeumann TLM 103なんかで録音すると、マイク特性によって高域がすごく伸び、シャリシャリしたような音に聴こえるんです。
なので、こういったマイクを使ってザラつきを出すのが1つ目の方法。
ちなみにマイク選びに迷ったら、Audio Test Kitchenを使って比較してみましょう。
2つ目は、サチュレーターやビットクラッシャーを使って、ひずみを与える方法。
この曲のボーカルは少しひずんでいますが、それがアナログ機材によるナチュラルな響きなのか、プラグインかは分かりません。
もしプラグインでボーカルにひずみを与えたいなら、いくつかおすすめがあります。
一番のおすすめは、Black Box HG-2。マスタリングにも使えるほどの繊細なサチュレーターなので、ナチュラルなひずみを与えるのにぴったりだと思います。
ビットクラッシャーなら、D16「Decimort 2」がおすすめ。
ビットクラッシャーというカテゴリですが、デジタルすぎない繊細なザラつきを与えられます。ボーカルには「ASR-10」というプリセットがおすすめです。
あと、うっすらですがオートチューンがかかっている気がします。最近の日本のヒップホップみたいにわざとらしい感じではなく、かなり薄く。
もしかしてデジタル風味を感じてらっしゃるのは、このケロケロボイスの部分でしょうか?ケロケロはAntaresで簡単に作れますね。
もし、「デジタル感」の意味が違っていたらすみません!
参考になれば嬉しいです。
🧠Okina’s Picks
最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。
🕺🏻Tips: Beginner Interface with TouchDesigner & Bitwig - TDBitwig - せっかくBitwigを持っているので、TouchDesignerと連携させて使ってみようと画策中。勉強になります。
🔌Plugin: プロエンジニアに、これがないと仕事にならないプラグインを聞いてみた - 最近話題のプラグインがたくさん紹介されていて良い。Pulsar Modular P42 Climaxはマスタリングチェーンに挟むと最高なのです。ちょっと高いですけど…
🔧Tool: Supertoolsで最高のAIツールを見つけよう - 最近流行りのAIサービスが網羅されています。AI音楽サービスも幅広く紹介されているので、今どんなAIサービスが流行っているのか知りたければ、こちらのサイトをチェックしてみると良いでしょう。
📊Research: 【徹底調査】今年のJ-POPはどうだったのか!? 1〜50位のコード進行を集計してみる【2023年】 - 最新J-POPのコード進行をまとめた動画が面白かったです。結局いつの時代も、定番のコード進行を使った曲がランキングの上位に来るんですよね。普段コード進行で悩んでいる人は、とりあえず王道コード進行を使い回し、メロディやその他の要素に労力を注ぎ込んだ方が良いと思います。
週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.44
2024年1月19日発行
Blog: https://studio-okina.com/
HP: isseykakuuchi.info