週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.43

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

音楽制作ツールの発達で、プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。

AIを活用した次世代の音楽制作、これからの時代の新しいリリースの方法を研究していきます。

目次

  1. 近況

  2. 今週の音楽ニュース

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. DIYアーティストのためのマーケティング戦略

  5. Q&A

  6. Okina’s Picks

  7. ブログ更新のお知らせ

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今週、アーティストを応援するプラットフォームPatreonにて、Tape Notesという音楽制作に関するチャンネルに登録しました。

Tape NoteではJames Blake、Diplo、Disclosureなどの著名アーティストに定期的にインタビューを行なっており、彼らの制作の様子(時にはプロジェクトファイルや、使用機材まで)や音楽制作における考え方を学ぶことができます。

YouTubeやSpotifyのポットキャストでもインタビューの一部を観れるようになっているのですが、Patreonのサブスクに登録することでフル尺のインタビューや制作機材を見ることができます。

僕はJames Blakeが制作過程やモジュラーシンセシスについて話しているのが気になったので登録したのですが、2時間ほどのインタビューで制作に関する彼の考え方など、いろんなことが学べました。

アーティスト数はさほど充実していないので、今後のラインナップに期待といった感じですが、好きなアーティストのインタビューがあればぜひ登録してみてください。

📱今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
  1. ニュース速報ニュース+カルチャーSoundCloudは「ユニコーン」か?投資グループのオーナーは今年10億ドルの売却を目指す→Soundcloudがおよそ1500億円で身売りを検討しているとのこと。記事では、大企業の投資先の1つとして買収・運営される可能性が指摘されています。アーティストのための壮大なビジョンではなく、単に金儲けの手段として運営されれば、これから広告が増えたり、アーティストにとってあまり便利ではないプラットフォームになる可能性もあります。志のある企業に買収されるといいですけどね…

  2. テープ・ディレイO.G.エコーとは何か?→新世代のテープディレイを製造するEcho Fixへのインタビューを中心に、テープディレイの歴史や代替となる最新の機材について語られています。Echo Fixはなかなかのお値段ですが、記事にも登場するBOSSのRE-202は、僕のまわりでも好評でおすすめ。

  3. Bandcampの代わり:そろそろ乗り換え時?→Bandcampの代わりになるかは分かりませんが、いくつかの選択肢が紹介されています。記事中で紹介されているPatreonは、販売プラットフォームではありませんが、名前の通りパトロンを募って特定のファンだけに音楽や動画などを配信するサービス。おそらく数年後には、日本でも似たようなプラットフォームが登場するでしょう。

  4. アップルのクラシック音楽配信アプリ「Apple Music Classical」に、ローカライズ版が登場。1月24日のアプリ提供に向けて、予約注文を受付け中→やっと日本でもクラシック専門のApple Musicがスタートします。クラシックはコンテンツの量も大切ですが、なにより大事なのは音質だと思います。Apple Musicはロスレスを謳っているものの、TidalやQobusの音質に劣っているように感じるので、Apple Music Classicではここが改善されていると嬉しいです。

  5. iPhoneとiPadのためのベストiOS DAWとアプリ 2024→このリストを見ていると、iPadによる音楽制作市場がいまいち盛り上がっていないように感じるのは僕だけでしょうか? iPadの利便性を活かした素晴らしいアプリがもっと登場しても良いと思うのですが、しばらくiPadだけで素晴らしい音楽を作るのは難しそうですね。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

有料プリセットを活用する

既存ジャンルの曲を作るのであれば、こういったシンセプリセットやサンプルが大量に入ったバンドルを利用するのがおすすめです。

例えばこのバンドルは「Melodic Techno」に特化したバンドルで、このジャンルの音楽を作るために必要なシンセプリセット、Ableton Liveのプロジェクトテンプレート、チュートリアル動画などがすべて揃っています。

これでジャンルの構造をサクッと理解し、チュートリアルを参考にサンプル素材を組み合わせるだけで、自分だけのオリジナル曲が簡単に作れるというわけです。

新しいジャンルや、マイナーなジャンルだと、こういったテンプレートは売っていないことも多いですが、もし自分の作っている曲に対応したテンプレートがあれば、ぜひ活用してみてください。

📊DIYアーティストのためのマーケティング戦略

音楽で稼ぐにはどうすればいいのか?どのようにリリースするのが効果的なのか?DIY(インディペンデント)アーティストが、より多くの人に自分の音楽を聞いてもらう方法を探っていきます。

年末の帰省のタイミングで、プレイリストに関するこちらの本を読みました。

ストリーミング中心の時代において、プレイリストの重要性を理解することはとても大切だと思います。

どこにも載っていないスペシャルな情報みたいなものはありませんが、今後のリリース戦略の参考になりそうなことが書かれていたので、いくつか抜粋します。

One of the best ways to make sure that your music has every opportunity to be heard on these playlists is by adding as much detail as possible. When filling out Editorial submission forms and uploading music through a distributor be sure to always include as much detail as possible.

“プレイリストであなたの音楽を聴いてもらうための最善の方法の一つは、可能な限り詳細を書き加えることです。エディトリアルの投稿フォームに記入したり、ディストリビューターを通じて音楽をアップロードしたりする際には、常に可能な限り詳細を含めるようにしてください。”

One very important piece of information that is often overlooked is that your song will be added into the Release Radar for ALL of your followers if you submit it at least 7 business days before release day.

“見落とされがちな非常に重要な情報のひとつに、リリース日の7営業日前までに楽曲を提出すれば、あなたの楽曲はすべてのフォロワーのためのRelease Radarに追加されるということがあります。”

Spotify Marquee allows artists to create a full-screen sponsored recommendation for new releases. The Marquee will display in the app with a prompt to listen to the new album release.

“Spotify Marqueeでは、アーティストがフルスクリーンでスポンサー付きの新曲推薦を行うことができます。Marqueeはアプリ内に表示され、新譜リリースの試聴を促します。”

Curators add songs that fit into their playlists. The song must match a specific feel, genre, or style with the rest of the songs. Think about radio edits of songs: they are short and to the point. This is for time management and to keep the audience from changing stations. The same principle applies to playlists. This is why it is important to release a short version of your song specifically catered for playlists.

-Song length (Under 4 minutes) -Intro length (Less than 15 seconds, or people may skip before the 30 second mark) -Outro length (Less than 15 seconds, so people let your song play all the way through) -Song structure (Start with the main hook, vocal, or something that lets people know what your song is about in the first 15 seconds). Playing a song only counts as a stream if people listen for more than 30 seconds. If they listen to your song for less than 30 seconds, it doesn’t count and you don’t get paid. You need to grab their attention early so they don’t skip, then hold their attention at least past the first 30 seconds (and hopefully for the rest of the song).

“キュレーターは、自分のプレイリストに合う曲を追加する。その曲は、他の曲と特定のフィーリング、ジャンル、スタイルにマッチしていなければならない。ラジオの編集について考えてみよう。これは時間管理のためであり、視聴者が局を変えないようにするためでもある。同じ原理がプレイリストにも当てはまる。だからこそ、プレイリストに特化した短いバージョンの曲をリリースすることが重要なのです。

-曲の長さ(4分未満) -イントロの長さ(15秒未満、もしくは30秒の前にスキップされる可能性がある) -アウトロの長さ(15秒未満、もしくは曲を最後まで聴かせる) -曲の構成(メインのフックやボーカル、もしくは最初の15秒で曲の内容が分かるようなものから始める)。曲の再生は、30秒以上聴かれた場合のみストリームとしてカウントされる。30秒未満しか聴いてもらえなかった場合は、カウントされず、報酬は支払われません。スキップされないように早い段階で注意を引きつけ、少なくとも最初の30秒を過ぎても(できれば曲の残りの部分でも)注意を引きつける必要があります。”

In the submission form, it's important to add as much detail as possible. This information is attached to your song and will help it to be delivered to the right audience. For instance, if you create beautiful instrumental piano music, you want to make sure it reaches the classical editorial team. Correct information means your song will be delivered to various listeners through editorial and algorithmic playlists and artist radio stations in Spotify.

“投稿フォームでは、できる限り詳細を追加することが重要です。この情報は、あなたの曲に添付され、適切な聴衆に届けるのに役立ちます。例えば、美しいインストゥルメンタルのピアノ曲を作った場合、それがクラシック編集部に届くようにしたいものです。正しい情報があれば、あなたの曲はSpotifyのエディトリアルやアルゴリズミック・プレイリスト、アーティスト・ラジオ・ステーションを通じて様々なリスナーに届けられることになる。”

まとめると、

  1. プレイリストに載る確率を上げるために、曲紹介などの記入欄があれば、できるだけ詳細な情報を書く

  2. 曲の芸術性を維持しつつ、Spotifyのアルゴリズムに沿った作曲を意識する

ということです。

Spotifyでは再生時間ではなく、再生回数によってロイヤリティが発生するので、30秒聴かれればこちらのものです。最初の30秒でリスナーを惹きつける作曲を意識しましょう。

サクッと読める短い本なので、プレイリストについて学びたい、復習したい人におすすめです。

🙋‍♂️Q&A

音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。

🧠Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🧪Science: 音楽理論:432Hzチューニング - 事実と虚構を分ける - オカルトチックな周波数についての噂を科学的なアプローチで解説してくれています。例えば、こういう風に。「フィクション: サイマティクス(未踏の科学領域)は、432Hzが水/宇宙の周波数であることを証明する画像を提供する。事実: 432Hz説の証拠として、美しいサイマティック・イメージを紹介するビデオや画像がいくつか出回っている。しかし、これらのイメージは、異なる周波数で共鳴するように調整できる共鳴体(水や金属板)によって生み出される。」432Hzを聴いた水の波紋はこんなに美しい!という実験結果も、実は調整可能であることが書かれていたり…

⚜️Sound Design: Soundtoysがアビーロード・リバーブのトリックを披露 - Soundtoysの新しいプラグイン「SuperPlate」を使った、リバーブのテクニックが解説されています。

🧑‍🏫Class: Masterclass: Jimi Jules - 前回のニュースレターでも紹介したJimi Julesの、別のチュートリアル動画です。彼が制作したサンプルパックもついていて、一石二鳥。Innervisions系の音楽が好きな方は必見です。

🪘LiveSet: Stimming Live 2023, recorded in my studio - BlackboxやOP-1を使ったStimmingによるライブセット。このライブセットを構築するのに、どれほど時間がかかるのか。ライブパフォーマンスの構築を考えている人にとっては、とても興味深い動画だと思います。

🖊️ブログ更新のお知らせ

最新のAIツール、sonible「smart:EQ 4」を導入すべきか?

sonibleから新しいAI搭載EQプラグインが登場したので、早速使ってみました。

AIによるマスキング解消や奥行きの調整はとても便利ですが、他のEQプラグインを差し置いてでも絶対に使っていきたい!というほどの魅力は感じませんでしたね。

記事にも書いているように、このプラグインにしかできない便利な機能はあるので、補助的なツールとして今後、使っていきたいと思います。

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2024年1月12日発行

Blog: https://studio-okina.com/

HP: isseykakuuchi.info