週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.33

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  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先週は、とあるイベントで奥多摩の山奥に遊びに行ってきました。

せっかくなので何か録音機材を持っていこうと持参したのが、最近Dante対応バージョンも出たSpatial Mic。2次アンビソニックマイクといって、8つのマイクカプセルを搭載した、VR映像と共に使うことでもできるマイクです。

96kHzサポートで音質も悪くなく、今月ついに専用のiPhoneアプリも出たことで、さらに便利になりました。(アプリは使いにくいですが…)

実際に録れた音はこちらです。(専用appで2chに変換しています)

良い音ですが、カプセル8基で値段が10万円超ということで、実はカプセルごとのクオリティは特別高いわけではありません。音が綺麗に録れて臨場感が…というよりも、音に包まれるような面白い音が録りたいという方に向いています。

そもそもマイクには、セルフノイズという微量のノイズが常に入っているのですが、カプセルが8基もあるとさすがにノイズも大きくなるので、静かな環境での録音にはあまり向かず、例えば海の波の音や川のせせらぎを近くで録るといったことに向いているのかなと思いました。

Senheiser Ambeo VR micのような1次アンビソニックマイクで、もっと音質の良いものを作れると、フィールドレコーディングがさらに楽しくなりそうなので、来年は日本が誇るマイクメーカーPrimoのマイクカプセルを使って、フィールドレコーディング用マイクを自作してみようかと考えている今日この頃です。

Ambeoで公園の音を録ってみたこともありますが、あまり音質が良くないんですよね。

アンビソニックマイクで音質を求めると、この製品のようにとんでもない見た目と値段になってしまうので、もっとコンパクトで持ち運びに便利かつ、音質も妥協しないものが作れると良いなと思っています。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. Splice Desktop v5 には、常にゾーンにいるためのアップデートが含まれています。→Spliceのデスクトップアプリがアップデートされました。AIを搭載したCreateモードに対応したことで、デスクトップアプリから素早くアイデアを形にすることができます。このCreateモードは音楽制作の経験がない人でも、一瞬で楽曲の基礎となるドラム・ベース・メロディなどをAIが構築してくれる機能です。

  2. Waldorf Largo 2 Synthesizer Now Available→Waldorfのシンセはいつもメルカリでチェックしています。アンビエントととても相性が良いんですよね。そんなWaldorfからソフトシンセが発売されました。ハードシンセの音は好きなのですが、ソフトの方は少し安っぽい…? 気になる方は、こちらのページでチェックしてみてください。

  3. Fortniteにモジュラーシンセとカスタム音楽エンジンが登場:パッチワーク+UE→ついにFortnite内でモジュラーシンセによる音楽制作ができるようになりました。Fortniteの将来性についてはいろんなところで語られていて、僕はあまりゲームをしないので興味がなかったのですが、本格的に音楽が作れるとなると無視できない存在になってきますね。こちらの動画が、Fortniteの可能性を知る上でとても面白かったです。メタバース界に衝撃!たった1人で100億稼げるフォートナイトのオープン化とは(前編)【佐藤航陽×堀江貴文】

  4. グライムスのAIクローンボーカルがクリエイターコンテンツに登場→Grimesというアーティストが自分のAIクローンボーカルをオープン化し、誰でもGrimesの声を使って作曲できるようになったことで話題になりました。声のクローン化の技術が進めば、好きなアーティストの楽曲から手軽にクローン化ができそうですよね。かつてフリーミアムという新たなビジネスモデルが非難され、定着してきたように、アーティストの声がタダ同然で手に入るような未来がやって来るのでしょうね。(ただし歌い方やイントネーションまでは真似できないでしょうから、歌手の価値がなくなるかといえば、全くそんなことはないでしょう)

  5. Audeze MaxwellがDolby Atmosレンダラに対応→Audeze Maxwellヘッドフォンでは、ヘッドトラッキングシステムを使ってDolby Atmosを制作できるようになります。とはいえ、サラウンドスピーカーの存在を脅かすものではなく、スピーカーを補完する補助的なツールとして使う前提で開発されていると思います。スピーカーは設置場所や部屋の調整がとても面倒なので、ヘッドフォンだけでサラウンドミックスできる技術がもっと進んで欲しいですけどね。Sony VMEはその点で、現在トップを走っています。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

今日はミックスバランスが面白いなと思った、こちらの一曲をご紹介します。

今週、この曲にハマりすぎてずっと聞いています。個人的に好きなのは3:21からのエレピのような優しい音が入ってくるパートです。

さて、この曲を聴いてもらえばわかりますが、楽器全体がかなり低音寄りです。唯一の高音域を担当しているシェイカーでさえも、かなりEQで高域がカットされているか、もしくはオフマイクで録られていそうです。

ここで楽曲のバランスを確認できるiZotopeのソフト、Tonal Balance Controlで全体の周波数バランスを確認してみましょう。

Tonal Balance Controlでは、ジャンルごとの平均的な周波数バランスを確認できるのですが、ここでは「Folk」を選択しています。

見ての通り、高域が極端に下がっており、逆に低域は平均的なゾーンをはるかに上回っています。

アーティストがこれを意識して作っているのかどうかはわかりませんが、このバランスが個人的にとても心地よく、音がこんなに低域に寄っているのに、声やギターがしっかり聞こえるミックスの方法もあるんだ、というのは新たな発見でした。

楽器が少ないから成立しているのかもしれませんが、僕がこの曲をミックスしたら、もっと高域を上げてボーカルやギターの抜けを意識していたかもしれません。

Scott OrrさんのYouTubeを見ていると、アナログ機材がたくさんあるので、きっと音にもこだわりを持って作っているのでしょうね。

このアルバムに収録されている他の楽曲もとても気持ち良いので、ミキシングの参考にしたい方はもちろん、こういうチルサウンドが好きな方にもぜひ聴いてみてもらいたいです。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🫧Life Hack: LoE Doyeq remix production insight - 5年以上前に保存したFacebookの動画ですが、このメロディーの作り方はかなり有益です。僕もこの手法をすっかり忘れていたのですが、久しぶりに使ってみようかなと思います。

🌟Gear: サウンドスケープを創り出すHologram Microcosmの選択肢 - Microcosmとはグラニュラーサンプリングなどを行うエフェクターで、InstagramやYouTubeのアンビエントチャンネルでもよく見かける製品です。この記事ではMicrocosmの代替品としていくつかのエフェクターが紹介されています。Microcosmも気になりますが、記事中で紹介されているChase Bliss Mood MKIIも気になります。初代は持っていましたが、エフェクターって結局繋いだり電源入れるのが面倒で使わなくなっちゃうんですよね。それなのに新しいものは欲しくなるのは悪いクセですね。

Plugin: Create Ambient Wonders. - アンビエント制作に特化したプラグインシンセ。かなり用途が限られますが、アンビエントパッドを作るにはかなり優秀なシンセだと思います。デモ版をダウンロードしてみましたが、なかなか面白そう。

Tutorial: GoldClip by Schwabe Digital: Full Master Class - LavryのADコンバーターのクリッパー部分を再現したプラグインの解説動画です。ブログにも書いたことがありますが、自分でマスタリングするときに必ず使うプラグインです。自然に音圧が上がるのでかなりおすすめ。機能の一つ一つが丁寧に解説されています。

  1. 作品のお知らせ

アンビエント作品のリリースです。

今までは全てレーベルからのリリースでしたが、DIYリリースの効果的な方法を探っていく目的もあって、新たな名義でリリースを重ねていこうと考えています。

11月11日劇場公開の映画「ケト・サピエンスは牧草牛の夢を見るか?」に、オリジナルソング22曲、全曲のマスタリング、サラウンドミキシング、フォーリーで参加させて頂きました。

医師である斉藤先生が、本当に美味しい牛肉を求めて全国を旅するロードムービー。観終わった後、日本の食に対する考え方が一変します。

そして斉藤先生がたどり着いたお肉、僕も口にしましたが、「これが牛肉?」という新食感。いや、これが牛本来の味だそうです。今の日本の和牛は、本来の生態からかけ離れてしまったのだと気付かされました。

以下、概要です。

美味しく健康的な牛肉とは、どんなものだろうか?

現代人に不足しているタンパク質と良質な脂を含んだ牛肉を求め、日本全国、こだわりのある和牛生産者を訪問した。 和牛のルーツを探るとともに、日本初の牧草牛専門精肉店を開き、孤軍奮闘するドクター斎藤の挑戦を追うドキュメンタリー映画。 果たして、美味しく健康的な黒毛和牛は存在するのか? 世界に誇る日本の和牛はどの産地が最良なのか? 本当に美味しい和牛の秘密をいま解き明かす。 知っているようで知らない和牛のルーツとは?

主演 斎藤糧三 [医師]

製作総指揮・撮影 高城剛

監督 徳武秀明

制作 NEXTRAVELER FILMS

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.33

2023年11月3日発行

Blog: https://studio-okina.com/

Twitter: https://twitter.com/studiookina