週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.31

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今月、世界最大のロイヤリティフリー音楽サービス「Artlist」から売却した楽曲の収益が振り込まれ、無事取引を終えることができました。

Artlistとは、動画クリエイターなどに高品質な著作権フリーの音楽を提供するサービスなのですが、実はアーティストなら誰でも「私の曲買ってよー」とオファーを入れることができます。

一年ほど前、Artlistに曲を送ってみて2曲買い取ってくれるという話になったので、契約書のやりとりを進めていました。

けっこう時間がかかりましたが、やっと取引がひと段落したので記事にもまとめました。

僕自身、あまり曲を売った経験がないので相場がわからないのですが、ここだけの話、2曲1500ドル(約20万円)で買い取ってくれたので、予想外の嬉しいお小遣いを得ることができました。

曲の権利を譲渡するわけですが、アーティスト名は載るので、実績としてはネット上に残りますし、その曲が売れればロイヤリティの分配も行われます。

他のロイヤリティフリー音楽サービスだと、このように新規アーティストからの楽曲を受け付けていないところもあるので、自分で作った曲を高く買い取って欲しい!という方にはArtlistがおすすめだと思います。

音楽で収入を得たい人は、ぜひこういったサービスも活用してみてください。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. Landr AIマスタリングプラグインデビュー→今週一番アツいニュースはこちらですね。過去10年間で500万人以上のアーティスト、2500万以上の曲をマスターするために使用されたオンラインマスタリング技術に基づいて開発されたプラグイン。このAI時代に、個人でマスタリングの技術を学ぶのはナンセンスです。こういった技術をどんどん活用していきましょう。

  2. ユニバーサル・プロダクション・ミュージック、デジタルコンテンツ制作者向け定額制音楽ライブラリー「Universal Music For Creators」を発表→冒頭で紹介したArtlistのような「ロイヤリティフリー音楽サービス」が、ユニバーサルから発表されました。ザッと聴いた感じ、楽曲のクオリティーは悪くなさそうで、曲数もArtlistの30,000曲を超える50,000曲とかなりのボリュームです。使ってみないとわからない部分も多いですが、ステムもダウンロードできたりと、なかなか良さそうな印象です。

  3. Synplant 2への道:驚異のプラグイン続編の誕生秘話→2009年に登場した先進的なソフトシンセ「Synplant」がパワーアップして帰ってきました。AIを駆使した音の分析と生成が可能なほか、内部エンジンの大幅アップデートにより、新たなフィルタータイプ、サチュレーション、クリッパーを使ってよりクリエイティブな音作りを楽しむことができるようになっています。

  4. AudioThing x Hainbach Linesのファースト・ルック、新しいマルチFXプラグインがフィードバックを鳥のさえずりに変える→Hainbachは、音楽系YouTuberの中でも独特の路線を走っていますね。こちらはオールドビンテージの機材を再現した面白いプラグインです。エクスペリメンタルな音楽を作っている方は要チェック。

  5. UA、モデリングプラグインを備えた新しいマイクを発表→UAはTownsendを買収してSphereというモデリングマイクを販売していますが、ここにきて新たなモデリングマイクが発表されました。Sphereよりも安価なので、「マイクモデリングプラグインを使ってみたいけど高すぎて手が届かなかった」という人は、こちらを検討してみるのも良いかもしれませんね。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

周波数の話 (続編)

前回のニュースレターで、周波数についてお話ししましたが、今回は「低周波」に焦点を当てたお話です。

最近、大学で「低周波」を研究されている教授と出会い、お話しする機会がありました。

バーでたまたま出会ったのですが、とにかく面白い話題が次から次へと出てくるので、2時間ほどぶっ通しで音の話をしていました。

ここに全部書くと大変なので、気になる方は、教授が今年リリースされたこちらの本を読んでみてください。

中でも面白かったのは、全国のパワースポットを歩き回り、パワースポットと低周波の関係について調べたというお話。

パワースポットと呼ばれる場所は、低周波が出ているところが多く、人々が気を感じる場所には、低周波の影響があるのではないかとおっしゃっていました。

低周波とは、人間に聞こえるか聞こえないかくらいの音(10Hz~40Hz)のことで、これを測るための専用のアプリも教えていただきました。

鈴木教授は、認知症患者の病室にウーファーを置いて、低周波が認知症患者の脳にどのような影響を及ぼすかを調べたり(なんと認知症の症状が改善されたそうです!)、オーケストラにウーファーを入れて、低周波とオーケストラの生サウンドを同時に鳴らすことで、聴衆の感動を引き起こしたり(ウーファーを入れる際、コンバス奏者を説得するのが大変だったそうですw)と、かなり挑戦的な実験を行なっているそうです。面白いですよね。

さて、低周波がミキシングや音楽制作にどう役に立つかはわかりませんが、僕が、2時間のお酒を飲みながらの講義から感じたのは、低周波には人間の知覚を拡大させる効果があるかもしれないということ。

このエフェクトをどう使うかは人それぞれですが、僕は、いま作っている映画の重要シーンにこっそり40Hzの低周波を忍び込ませ、観客の注意を意図的に引くという作戦をとりました。(ヒトラーが演説にウーファーを使っていたというのは、有名な話ですよね。)

こちらの映画は来月公開なので、またニュースレターでも告知したいと思いますが、とにかく低周波というのは謎が多いので、決まった使い方というのはありません。

ただ、ここで「低周波にはそんな不思議な効果があるんだ」と頭の隅に留めておくことで、今後「なぜだかわからないけれど、あなたの音楽を聴くと感動するよ」と言わしめるような、特別な音楽が作れるようになるかもしれませんよ。

  1. ブログ更新のお知らせ

Artlistに楽曲提供したので、その経緯などを記事にまとめました。

音楽でお金を稼ぎたい人は、ぜひご覧になってみてください。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

⚙️Modular: Lluvias de Mayo | Rains of May - ずっと「これやってみたいな」と思っています。音、映像、メッセージのすべてが素敵です。

⚡️Buying Guide: ZIO (INAH KWON) : Tiny Desk Korea - Tiny Deskって韓国版もあったんですね。このバンドすごく素敵で、観ているだけで楽しい気持ちになります。

🔎Tutorial: MinimalのCurrentは、大量のFXとエクストラを備えたグラニュラー・ウェーブテーブル・シンセだ - グラニュラーシンセは常にいいものを探しています。最近のお気に入りはNovumですが、こちらもなかなか良さそうですね。

🔌Plugin: ギャビン・ラーセンとルーベン・コーエンによる音楽マスタリング・マスタークラス - Audezeの協賛による無料マスタリングクラス。マスタリングの技術なんてこの先必要なくなると言いつつ、こういうのはしっかりチェックしてます。今のところ、まだマスタリングは人間の方が優れていますからね。

  1. 作品のお知らせ

Arrival - 千葉珠音

千葉珠音さんのデビュー曲「Arrival」をミキシング・マスタリングさせていただきました。

なんと、たまたま日本に来ていたBrian Enoのマネージャーにお褒めの言葉を頂いたということで、ミックスに携わっている身としてとても嬉しくなりました。

デビュー作とは思えない圧倒的センスですね。

ぜひぜひ、チェックしてみてください。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.31

2023年10月20日発行

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