週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.3

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の映画

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近、Acustica Audioのプラグインを使い始めました。

やはり評判通り、すごく完成度の高い製品ですね。

仕事でMcDSP APB-16を使っているのですが、これは1UのボックスにThunderboltケーブル経由で音を送り、そこでハードウェア処理したものをパソコンに戻すというもの。

これが、現時点で最強のプラグイン(ハードウェアが必要なので、プラグインの部類に入れて良いのか分かりませんが…)だと思っているのですが、Acusticaはその次にランクインするほどの素晴らしいプラグインですね。

いくつかデモを試してみて、良いと思ったのは、El Ray, Taupe, Sand, Fire The Pan, Cream2あたりです。

中でも、Fire The Panは、あらゆるコンソールの「Pan Law」(パンの規則)をエミュレートするもので、これはまさに僕の探していたプラグインだったので、見つけた時はとても感激しました!

Pan Lawについては、こちらのYouTubeが参考になります。

というのも、個人的にPro Toolsの音が大好きで、最近、Ableton Liveの音をそれに近づけられないかと考えていました。

ミキシングの段階で、オーディオファイルを書き出してPro Toolsで処理するのも良いのですが、それでは時間がかかりすぎて大変です。

実は、すべてのDAWは、それぞれパンニングの特性が微妙に違うのですが、それをAbletonのものではなくエミュレーターを使うことで、Abletonぽさを解消しようとしたわけです。

これだとPro Toolsのパン特性は真似できないですが、NeveやSSLといった名コンソールのPan Lawを取り入れることができるので、こちらの方が理想の音に近づけそう、ということで採用しました。

Acusiticaの話に戻りますが、El Rayというコンプが特に素晴らしく、とても気に入りました。

今まで求めていたコンプ感(まとまりや厚み)が得られますし、変化が劇的です。

CPUを食いすぎるので今まで敬遠していましたが、CPUを消費しにくいバージョンがあるので、そちらを使えば問題なし。

リアルタイムでの打ち込みがある時などは使いづらいですが、ミキシング時なら問題ないでしょう。

まだ使ったことがないという人は、El Rayだけでもぜひ試してみてください。

さて、来週からは、世界最大の音楽機材の展示会&発表会である、NAMM Show 2023に行ってきます。

こちらは、レポートにまとめますが、ニュースレターの読者には無料で提供する予定です。

まだニュースレターに登録されていない方は、ぜひご登録をお願いします。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. IFPI Global Music Report: Global Recorded Music Revenues Grew 9% In 2022→今年もIFPIによるグローバル・ミュージック・レポートが発表されました。世界的に音楽業界の収益が拡大しています。特に、ストリーミングの領域での成長が顕著ですね。

  2. Piastrone is a perfect, playable reverb for Ableton Live – even when other reverbs fail→アルゴリズムによってプレートリバーブの挙動を解析したPiastroneは、ライブなどでリアルタイムでコントロールできるのが大きな特徴。文末のリバーブ関連の資料もとても参考になります。

  3. GPU Audio offering free impulse responses→演算をCPUではなくGPUに引き渡すことで、プラグインの処理速度を向上させる技術を扱うGPU Audio。このメーカーが行ったIRコンペで、見事勝ち抜いた人たちの、独創的なIR(インパルスレスポンス)を無料でダウンロードできます。(How to make an IR with Altiverb 7) かなり風変わりなIRがあって、音楽制作のスパイスとして活用できそうです。

  4. WavTool: AI-Accelerated Music Production→ChatGPTのように、プロンプトを使うことで音楽制作ができる時代になりました。このあとに、実際に使ってみた感想を書いています。

  5. New App, GlitchScaper, For Making Glitchy Patterns & Soundscapes→iOS, MacOSに対応した、ドラムマシンソフトが発表されました。面白くて変わったグリッチパターンを制作したい人におすすめです。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

WavTool

話題のブラウザベースAI作曲ツール?「WavTool」を試してみました。

これはChatGPTのように、プロンプト(コンピュータに動作を促すための言葉)を打ち込むだけで作曲ができてしまうという画期的なDAW。

「ヒップホップっぽいビート作って」「もっとメロディアスにして」「ベロシティをランダマイズして」「キックとハイハットを足して」などといった指示を理解し、作曲を進めてくれるということで、さっそく使ってみることに。

「本当にそんなうまくAIが作曲してくれるの?」

と半信半疑な方もいるかと思いますが、実際にやってみたところ・・・

「これで作曲は、まだまだ厳しいな。」

と感じました。笑

一応、指示に近いことはやってくれるのですが、ヒップホップっぽいビートをリクエストしても、ヒップホップとは呼べないような結果が返ってきたり、メロディがつまらなさすぎたり・・・

前に紹介した「Mubert」の方が、まだうまく機能しているように思います。

フランスのIRCAMが「Orchidea」というオーケストラ自動作曲ツールの制作を進めているようですが、こういった構想段階のものはたくさん登場し始めているものの、DTMerが一般的に使うようになるのには、あと数年かかると感じますね。

  1. 今週の映画

素晴らしき、きのこの世界」は、世界一有名な菌類学者、ポール・スタメッツが主人公の、きのこに関する映画です。

スタジオ翁の読者の方なら、きのこと言われれば、きっとマジックマッシュルームを思い浮かべることでしょう。

もちろんそんな話も出てきますが、医療や治療、環境問題などに対する菌類を使った知られざる解決策を明かしていくのが、この映画の醍醐味です。

きのこは、アルツハイマーやがんなどの治療などにも役立つ、素晴らしい生物なのです。

そして何よりも音楽が素晴らしい。

吉祥寺のシアターでも観ましたし、Prime Videoでもレンタルしたのですが、何度も見直したい(音楽を聞きたい)ので、DVDも買ってしまいました。

圧巻の映像美で、きのこに興味がなくても、きっと楽しめると思います。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。その際は、このQ&Aコーナーにも貼らせていただきますのでご了承ください。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🙏坂本龍一: Ryuichi Sakamoto was always a leap ahead: sounds, machines, outpouring of remembrances - 今一度、坂本龍一さんの偉大な功績を振り返ってみましょう。

🖥️YouTube: Rhythmic Sound Design with MaxForLive Parameter Sequencers - Ableotn認定トレーナーELPHNTが、変わったビートメイキングの方法を紹介しています。

📚本: 限られた時間を超える方法 - 音楽を作る時間がない?それなら時間を超越しましょう。かなりの良書です。

🎧Live: Steve Reich - Drumming - スティーブ・ライヒのドラミングには、何とも言えない中毒性があります。すべてを忘れて聴き入りましょう。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.3

2023年4月7日発行

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