週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.27

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先日、聴力検査を受けに行ってきました。

耳の不調を感じているわけではないのですが、どの周波数に敏感で、どの周波数が聞き取りにくいかを調べられるということで、試してみることにしました。

1畳ほどの防音室に入り、ヘッドフォンで左右から流れるサイン波を聴き取れたら手元のボタンを押す、という健康診断での聴力検査みたいな感じです。

そして、結果はこちら。

高域はまったく衰えがなく、いい感じです。

僕は街中で19kHzのモスキート音も聴き取れるので、これは予想通り。

気をつけなければいけないのは250Hzで、特に右耳の250Hz帯域が聞き取りにくくなっているそうです。

これは、以前にiPhoneの聴力検査をした時も同じ結果が出たので、間違いないと思います。

ちなみにこれは、聴力検査 & 耳年齢テストという無料のアプリです。

250Hzといえば、ボーカルや楽器の芯となる部分ですよね。

いろんな楽器の音が密集しやすい帯域でもあるため、ミキシングの際にここを持ち上げ過ぎてしまうと、ミックス全体が濁ってスッキリしない音になる可能性があります。

確かに振り返ると、ここを上げてしまう癖があるなと感じたのですが、こうやって結果として出てくると、ミキシングの際に自分はどこに気をつけるべきなのか、ポイントがわかるのでとても良いと思います。

クラブでPAやDJをやっていると、どうしても聴力が心配になるので行ってみましたが、思ったよりも悪くなくてよかったです。

自分の聴力の衰えが気になる方はもちろん、自分のミキシングの癖を知っておきたい人は、こういった聴力検査を試してみるのがおすすめです。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. Mastering The MixのFUSERプラグインは "パーソナル・ミキシング・エンジニアを持つようなもの"Trackspacerのようなミックスの濁りを取るためのプラグインが登場しました。すごいのは、位相の自動検知機能が付いているところ。音のかぶりだけでなく、位相を整えてキャンセルされている音を修正してくれます。

  2. Twiddle CodingがMindful Harmonyをアップデート - クラウド同期とプレミアム機能が利用可能に→以前、ニュースレターでも紹介したMindful Harmonyにサブスク型のプレミアバージョンが登場しました。コード進行をブラウザ上で直感的に生成できる、とても便利なサービスです。

  3. Kits.AIのインストゥルメント・コンバーターがあなたの声を楽器に変える→声を楽器に変換できるAIサービスが登場しました。要は、Ableton Liveにもあるような「Audio to MIDI」のAIバージョンです。好きなアーティストの声をAIに学習させて、その声で歌うといったことも可能。実際に使ってみましたが、かなり精度も高く、この手のサービスのパイオニア的存在となるかもしれません。

  4. Rupert Neve Designs Master Bus Transformer:SSL Fusionキラー?→SSL Fusionは素晴らしい機材で、スタジオエンジニアだけでなく、PAさんが使っているのもよく見かけますね。Neveがリリースしたこちらの機材はFusionキラーとなるのでしょうか?音が気になりますね。

  5. Waves、AIを搭載したマスタリングツール「Waves Online Mastering」を発表→AIマスタリングにWavesも参入。大手が参入することで、今後AIマスタリングが一段と盛り上がりそうですね。音楽を作り始めたばかりで、とりあえずリリースしてみたいという人はAIマスタリングを、本格的にリリースしていきたいならプロのマスタリングエンジニアに頼むというのが良いと思います。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

最高のミキシング・アドバイス

「最高のミキシングアドバイス」というタイトルの動画ですが、決して誇張ではなく僕もこの考え方に同意します。

要は、いくら高いスピーカーやオーディオインターフェースにお金を注ぎ込んでも、いくら高価なアナログEQやアナログコンプに手をつけても、部屋の音が整っていなければ、何の意味もないよ。最初に部屋の音を調整しようね、という動画。

すべての部屋には、部屋独自のキャラクターが存在していて、部屋によってやスピーカーの置き位置によって音が変わってしまいます。

これによって、本来聞こえるはずの音が聞こえなかったり、余分なピークが聞こえたりするので、「高価なアナログEQを使っていても、実は全然見当違いの周波数を調整していた」ということにもなりかねません。

これを解決するために、彼はSonarworksという機材を紹介していますが、実際これはかなりおすすめできる製品です。

この測定マイクで部屋を調整すれば、かなり正確に音を作り込むことができるので、「家で作った音が、他の場所で聴くと全然違って聞こえる」という方は、ぜひ試してみてほしいですね。

ちなみにSonarworksで100%部屋のクセを取り除けるわけではなく、最初にスピーカーの位置も考えておく必要があります。

ここら辺の考え方は、過去に書いたこちらの記事を参考にしてみてください。

本当に、この部屋鳴りの問題を考えずにプラグインや機材に走る人が多いと感じています。

こういう調整が面倒だという方は、ヘッドフォンで制作するのも良いでしょう。ヘッドフォンならどんな環境で聞いても同じ音が聞こえて、部屋の反射を考える必要も全くないですからね。

今は、Dolby Atmosですらヘッドフォンで作れる時代なので、ヘッドフォンだけでミックスするというのも、全然アリだと思います。

  1. ブログ更新のお知らせ

これ、AIを活用してDJミックスを作れるサービスなのですが、めちゃくちゃ高速でDJミックスを作ることができるので、普段からよくプロモや仕事でDJミックスを作っている人におすすめです。

1時間のDJミックスを作るのに、1時間かけて家でDJするのも面倒だし、Ableton Liveでポチポチ作っても1時間以上かかっちゃいますからね。

本当にいい時代になりました。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎙️Interview: Soundtoys Process: Tycho - 最近、Reverbという海外のマーケットで、100以上のシンセやアナログギアを販売したことでも有名なTychoのインタビューです。曲の作り方や、機材に対する考え方など、音楽制作の参考になる話が随所に散りばめられています。

🎹Synth: Best of Blofeld Sounds - かなり前から販売されているデスクトップ型シンセBlofeldですが、音色が最高なので最近購入しようかと考えています。この浮遊感のあるデジタルサウンドが、アンビエントにピッタリなんですよね。

🎨Sound Design: 自然からインスパイアされたツールでサウンドデザインを次のレベルへ - こちらもアンビエントの制作にピッタリなMax for Liveのツール「Inspired by Nature」です。設定すれば、自動的に音楽を生成してくれるのでとても便利。Ableton Live Suiteを持っている方は無料で使えるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

🎵New Song: Mother Drum (Sebastian Mullaert’s Holds The Sky Mix) - Sebastian Mullaertの新譜がとても良かったのでご紹介します。シンプルですが、とても心地良いサウンドですね。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.27

2023年9月22日発行

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