週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.23

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

Sonyの最新イヤホン「WF-1000XM5」を試聴してきました。

最近、DenonのPerL Proという、耳の形に合わせて音をパーソナライズしてくれる新型イヤホンを聴きに行ったばかりですが、WF-1000XM5はかなり完成度が高く、個人的にはPerL Proよりも好きでした。

PerL Proは耳の測定を行ってくれるので、音のバランスはかなり良いのですが、イヤホンの性能そのものはそこまで良いわけではなく、解像度に関してはWF-1000XM5の方が高いと感じました。

WF-1000XM5について、Wiredの記事には「悪く言えば平凡、よく言えば最高」と書かれていますが、おそらく音の出方がとても自然なので、このような書き方になっているんだと思います。

僕はフラットめの音が好きなので、確かに味付けの少ない平凡な音に感じてしまう人もいるかもしれませんが、過度な味付け(低音モリモリだったり、高音が無駄に伸びている)が嫌いな方にとっては、好きなタイプのサウンドだと思います。

最近、AirPodsの音質に満足できなくなってきて、最新のAirPods Proも音がイマイチなので買い替えを検討しているのですが、今のところこのSonyのイヤホンが第一候補ですね。

9月1日に発売するようなので、気になる方はぜひ、オーディオショップや家電屋で試聴してみてください。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. Strymon、テープ・エコー・ペダル「Deco」をエフェクト・プラグイン化→最近販売されているシンセは、どうしてもビンテージ比べるとクリーンすぎて味気なく感じてしまいます。Decoを買ってテープサチュレーションを加えようかと思っていたところに、なんとプラグインバージョンが登場しました。実機とは比較していませんが、こっちでもいいかもしれません。

  2. GPUオーディオ、賞金2000ドルと無料サンプルパックのビートメイキングコンテストを開始→コンテストの勝者は、賞金に加えてAudio Thing、Sonible、MNTRAなどの豪華プラグインがもらえます。制作し始めの頃は、何か目標がないとなかなか完成まで持っていけないことが多いので、こういうコンテストにはよく参加していました。腕試しにいかがでしょうか?

  3. AI生成アートは著作権で保護できない、米国連邦裁判所がまたも画期的な判決を下す→AIによって作られた音楽は著作権で保護されないという判決が、アメリカの裁判所で下されました。人間の手によって作られた作品のみが著作権で保護されるとのことですが、どこまで人間の手が加われば作品として認められるのでしょうか。この手の裁判は、今後も議論が続きそうですね。

  4. 電子音楽制作に最適なハードウェアシーケンサー→ソフトシーケンサーもたくさんありますが、ハードだと直感的にサクサク操作できるので、とても便利ですよ。この中だと、Erica Synths Black Sequencerがずっと気になっているのですが、定番はDoepferやArturiaのシーケンサーでしょうね。

  5. Soundtoys SuperPlateは待った甲斐があった→SuperPlate、さっそくデモ版使ってみてますが、楽曲に合わせて色んなプレートを選べるのと、プリアンプを変えて音のキャラクターを変化させられるのがとても良いです。今までLittle Plateという簡易的なプレートリバーブしか出てなかったので、Soundtoysの愛用者からすると、やっと!といった感じでしょうね。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲・ミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

MacBook Proのスピーカーを使って制作するメリット

最近は、曲づくりでMacBook Pro 16inchのスピーカーを使っています。

高価なモニタースピーカーを持っているにも関わらず、MacBookを使って作曲する理由は2つあります。

1つは、M1 MacBookから搭載されている、空間オーディオ対応の6スピーカーサウンドシステムによって、かなり音のバランスが整えられているので、わざわざモニタースピーカーを購入せずとも、ある程度のところまでミックスが詰められるということが挙げられます。

さすがに低音だったり、リバーブのかかり具合などの細かい部分はわかりにくいので、最終的にはモニタースピーカーやヘッドフォンで調整することになりますが、ミックスの70%くらいはMacBook Proのスピーカーで調整可能なところまで来ていると思います。

もう1つは、細かい音まで聞き取れないので、細部にこだわりすぎず作曲に専念できるということです。

僕は、今まで楽器を追加するたびに、EQ・コンプ・リバーブ・サチュレーションなどを使って、細かい部分まで音を調整をしながら楽曲制作していました。

そのため、完成にかなり時間がかかったり、結局完成まで持っていけなかったりすることも多かったのですが、MacBook Proは良い意味でモニタースピーカーよりも粗い音なので、「ここはEQで低域をカットしたいな」「この楽器はコンプでもうちょっと整えないとバランス悪いな」といった細かいことを考えなくても良くなり、楽曲制作がはかどるようになりました。

その後、改めてモニターで聞いてみると音のバランスがおかしい時もあるのですが、僕は性格上、細かい音の調整が好きなので、一度全体のラフが完成してしまえば、その後の作業はサクサク進めることができます。

ここは人によると思いますが、僕と同じようなタイプの方は、モニタースピーカーで良い音を聞きながら曲を作るより、いったん粗めのスピーカーで制作して、その後じくり調整するといったやり方が合っていると思います。

音の良いスピーカーを搭載したパソコンを買ってしまえば、あとはヘッドフォンでの微調整のみで済んでしまうので、これからの時代、モニタースピーカーは絶対に購入すべきものでもないのかもしれませんね。

音楽スタジオがどんどん潰れていくこの時代、音楽制作のためのスピーカーまで必要なくなるなんて・・・

テクノロジーの進化は素晴らしい!

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎙️Interview: プロデューサー、YouTubeでビートを売って1億円以上を稼いだ方法を明かす - 最近は、ビートを販売して稼ぐアーティストが増えてきている印象。1億円とまではいかなくても、ビートを作るのが得意な方は試してみる価値がありそうです。

🎹Gear: Teenage Engineering Pocket Operator Modular 400 - モジュラーシンセを始めたいけど初期費用が高すぎる・・・そんな方におすすめなのがこちらのModular 400。基本的な機能がついて、このデザインで10万円しないので、モジュラーの基本を学びたい人にピッタリだと思います。原宿のBeamsに飾ってあったのですが、実物はかなり可愛いですね。思わず欲しくなってしまいました。

🎵Tips: TRAINSPOTTING - TOILET SCENE + BRIAN ENO - DEEP BLUE DAY - Brian EnoのDeep Blue Dayという曲が大好きなのですが、トレインスポッティングに使われていたんですね。このシーンにBrian Enoのこの楽曲をチョイスするなんて、Danny Boyle監督は天才です。

🔌Plugin: Soundtoysのトップ7プラグイン2023 - Soundtoysのバンドルを買って何年も経ちますが、いまだに頻繁に使っています。ちなみに僕は、Echoboy・PanMan・PrimalTapあたりをよく使っていますね。新しく登場したSuperPlateもデモ版を試していますが、好感触です。昔はプレートリバーブにUADのEMT140を使っていましたが、すっかりUADから離れてしまっていたので助かります。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.23

2023年8月25日発行

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