週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.22

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先日、神楽坂のヒカルランドさんを再び訪れ、開発されたばかりの最新モニタースピーカーを試聴させていただきました。

アンプ非内蔵のパッシブ駆動となっていて、バーティカルツイン構造をしているこのスピーカーは、スピーカーユニットがとても特殊な形をしており、これが世の中に出ているスピーカーとはまったく違う画期的な構造になっているということを、開発者の藤田さんに教えていただきました。

どんな形をしているかというと、通常のスピーカーユニットはパラボラアンテナのように、真ん中が凹んだ構造になっていますよね。

藤田さんは、これが世の中に出ているスピーカーの大きな問題点であり、正しい波面を生成できない原因だと言います。確かにユニットが凹んでいると、生成された音同士がすぐにぶつかり合いますが、凸型になっていれば音の衝突を最小限に抑えて音を自然な形で拡散できることは、すぐにイメージできますよね。

なので、この最新のモニタースピーカーのユニットは、すべて真ん中が出っ張った、従来のユニットとは真逆の構造をしており、それが自然な音の波面を生み出し、聴き疲れしない滑らかな音になるようです。

確かに、4時間ほど試聴させていただいたのですが、聴き疲れは本当に一切なく、不思議な感覚でした。

さて、このスピーカーからどんな音が出てくるのか、一聴すると柔らかくて丸い音ですが、出るべき音のアタック部分はしっかり出ます。

真ん中のツイーター部分は同軸になっていて、ツイーターとミッドウーファーを兼ね備えているため、中低域がしっかり出ていて、さらにコーン紙がめちゃくちゃ硬くて丈夫にできているせいか、低域まで音がタイトな印象です。

ひとつ、気になるところがあるとすれば、耳に刺さらない柔らかい音なので、ミックス時の音のあら探しには向かず、音のピークなどが感知しづらいのではないかという点。

これはもう少し検証の余地ありですが、この聴き心地は他のスピーカーではなかなか体験できそうもないので、世界レベルのモニタースピーカーとして認知される可能性を秘めていると思います。

数十年後には、もしかすると世界中のスピーカーが凸型ユニットを採用しているかもしれませんね。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. パトロン+スポティファイ:ポッドキャスターのためのクリエイター・コントロールの新時代→以前、こちらの記事で紹介したことのあるPatreonと、Spotifyがポッドキャスターのためのパートナーシップを結びました。世界最大の音楽ストリーミングサービスとPareonが繋がることで、個人での収益化がより簡単に行えるようになります。

  2. Kits.AI音声生成技術→前に、ニュースレターで紹介したVoice Swapと似ていますが、こちらもアーティストの声をクローン化し、声の著作権を守るためのサービス。AIで簡単に有名アーティストの声を真似できるようになった現代、こういったサービスの需要はますます高まっていきそうですね。

  3. MNTRAインストゥルメンツ、シネマティック・インストゥルメント「Mirage」を無償リリース→MNTRAというプラグインメーカーが、「Mirage」という新たなインストゥルメンツを無料でリリースしました。個人的に注目しているメーカーでして、MPE対応キーボードやAbleton Push3などをお持ちの方はぜひチェックしてもらいたいです。

  4. Bertom Audio、EQカーブアナライザーv2.0.0をリリース→無料のプラグイン測定ソフトがバージョンアップして、ちょっとだけ新しい機能が追加されました。プラグインの挙動(周波数特性)が簡単にチェックできるので、持っていて損はないプラグインですよ。

  5. FIRST LOOK - Kazrog Avalon VT-747SP - 再定義されたアナログ・アイコン→KazrogはKClip3やTrue Ironなどの素晴らしいプラグインを開発しているメーカーですが、なんとAvalon Designとコラボして新たなプラグインをリリースしました。UADからもAvalonのプラグインは出ていますが、どれくらい音の違いがあるのか気になるところですね。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲・ミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

サチュレーションで音の抜けを良くする

僕がよく使う、サチュレーションのテクニックを1つご紹介します。

音の抜けが悪い楽器に対してこのテクニックを使うことで、ミッド~ハイを目立たせ、存在感のある、きらびやかな音に仕上げることができます。

使うプラグインは、Plugin AllianceのBlack Box。

このテクニックは設定が命なので、細かい設定まで公開しちゃいます。

ちなみにこれは、レーベル「Innervisions」のマスタリングなども行うMATHIAS SCHOBERが、マスタリングチェーンで使用している設定でもあります。

抜けの悪いトラックにこれを使うと、EQを使うよりも手軽に抜けを良くして存在感までプラスすることができます。

ここから右上のMixの数値を上げていくのですが、マスタリングなら1~3、個別のトラックに使うなら5~20くらいを目安に使ってみてください。

これだけで、ミキシングのクオリティが一気に上がりますよ。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎵Tips: 🔥Make Your Hi Hats Sound Like This🔥 - ボコーダーを使って、単調なハイハットの音にバリエーションをつけましょう。このテクニックは僕もよく使いますが、打ち込みなのに有機的で生楽器のようなサウンドになるのでおすすめです。

🎥Documentary: 心と意識と: 幻覚剤は役に立つのか - 幻覚剤というと日本では白い目で見られますが、このニュースレターの読者なら、幻覚剤がどのくらい役に立つのかすでにご存知でしょう。このシリーズはも出ていますがとても分厚いので、映像の方が観やすいかと思います。

🥃Drink: マンサン by マリリン・マンソン - 幻覚剤ついでに変わったお酒を紹介ししょう。ニガヨモギから作られたお酒アブサンは、酔うとハイになり、頭の回転が上がります。(個人的な感想です) 中でも、マリリン・マンソンがプロデュースしたマンサンは、とても飲みやすくておすすめです。

🎵Tips: メロディーとコード進行を上達させる11のヒント - メロディー作りや音作りの参考になる動画。メロディーやコードのヒントだけでなく、Abletonのプラグインだけで人気プラグインRC-20を再現する方法なども紹介されています。

  1. マスタリングサービスのお知らせ

普段、知人のDJやアーティストの楽曲をマスタリングしているのですが、こちらでもマスタリングのご依頼を受けることにしました。

なるべくクローズドにいきたいので、まずは、こちらのメルマガでのみご紹介させていただきます。

気になる方は、気軽にご連絡、またはお申し込みくださいませ。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.22

2023年8月18日発行

Blog: https://studio-okina.com/

Twitter: https://twitter.com/studiookina