週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.20

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先日、福岡に行ってきました。

ふと入ったミュージックバーのお兄さんにおすすめされ、Kieth Flackというクラブに行ってきたのですが、その日は20代前半の人たちが集まったヒップホップパーティーで、平日にもかかわらず10~20人くらいのお客さんが集まっていてちょっとした活気を感じることができました。

普段ヒップホップはあまり聴かないのですが、今の20歳前後に刺さるヒップホップというのは、「親しみやすい」「みんなで歌える」「共感できる歌詞」といった要素を持っていて、ポップミュージック色が結構強いのかなと感じました。

現在、地位を確立しているヒップホップアーティストは、どこか社会に馴染めなかったり、音楽がなければ反社会的な道に進んでいたんじゃないかという人が多いイメージですが、いま20歳前後でヒップホップをやっている人は、見た目こそちょっと悪く見えるものの、メチャクチャに悪さをしそうな人は少なく、話してみるとみんないい人だし親しみやすいんですね。

「ラップスタア誕生」や「フリースタイルダンジョン」といった番組の影響もあってか、ヒップホップはみんなが親しみやすいオーバーグラウンドな音楽に変化していっているんだと思います。

社会に馴染めない人たちの拠り所、という側面が少なくなくなることで、正直、音楽的にグッとくるものが減ってしまったなと感じる反面、Ralphのような次世代のかっこいいアーティストも登場してきていて、まだまだヒップホップ人気は続いていきそうだなと感じる博多での夜でした。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. Meta が AI Text-to-Audio Generator である AudioCraft を発表→Metaがテキストから音楽を生成するAIツール「AudioCraft」を発表。Hugging Faceで公開されているこちらのMusicGenで、デモを体験することができます。画像と比べて音楽の生成は複雑で難しいようですが、音楽方面もAIによる自動生成が進めば、新しい音楽のインスピレーション源として誰もが使える未来がやってくることと思います。Metaの声明を見ていると、人間にとってかわるAIというより、人間の手によって作られる音楽の発展に貢献することを目指しているようですね。

  2. 表情豊かなE Osmoseは「未来を垣間見る」モデル→爆発的なヒットの予感がする次世代シンセ「Osmose」が、本日ついに発売となりました。最近はMPE対応のプラグインが増えてきているので、Osmoseを組み合わせれば従来のMIDIではできなかった柔軟な表現が可能になります。NAMMでも試奏しましたが、プリセットが良質で、弾いていてとても楽しいシンセです!

  3. アップルの複合現実ヘッドセット「Vision Pro」は音楽制作に何をもたらすか?→VRゴーグルを使えば、バーチャル空間でコンソールやシンセを使い、作曲やミキシングができるようになります。マウスをぽちぽちするだけの、プラグインを使った音楽制作はどこか味気ないですが、実際に手を動かしてソフトを操作できるようになれば音楽制作がより一層楽しくなるでしょう。

  4. 無料のsqsl CanvasアプリでiPadとEurorackを接続→ユニークなiPad用シーケンサーを出しているsqslから、新たなモジュラーシンセ用のアプリが登場しました。アプリは無料で、Expert SleepersのES-8かES-9を持っていれば使えるのですが、ちょうどES-8があるので、試してみることにします。

  5. NEUMANN KH 120 II 〜DSPを搭載したルーム補正機能付きニアフィールドモニター→NeumannのKH120モニターに、新たなラインナップが登場しました。GenelecとNeumannは軸外特性がとても良いので、モニタースピーカーとしてかなりおすすめです。軸外特性が良いと、「スピーカーの正面で聴く音」と、「スピーカーの正面からズレた場所で聴く音」の差が少ない、つまりリスニングスポットが広くなります。マイクが有名なNeumannなので、専用のカリブレーションマイクもあわせて購入したいですね。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲・ミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

ハイハットはサチュレーションで馴染ませる

ミックスをしていて、ハイハットの音がキツく、ミックスに上手く馴染まないと感じたことはないでしょうか?

そんな時は、EQでハイを削るのもいいのですが、サチュレーターを使って音を丸くすると自然にミックスに馴染んでくれる場合があります。

EQでハイをカットすると、どうしても存在感が薄れてしまうことがあるんですよね。

サチュレーターにはコンプ的な効果もあるので、自然に音のピークを叩くのに効果的です。

どのDAWにもサチュレーターは入っているので、そういったものを使ってもいいですし、SoundtoysのDecapitatorやTone ProjectsのKelvinを使ってキャラクターを付けつつ、耳に刺さる高域を調整するのもいいと思います。

ハイハット以外の楽器でも使えるので、高域が刺さる楽器があれば、ぜひこのテクニックを使ってみてください。

  1. ブログ更新のお知らせ

以前にも、フィールドレコーディングの記事を書きましたが、色々と実験を重ねることで、当時よりも知識や知見がたまってきています。

今回は、今まで試してきたものを中心とする、マイクとレコーダー焦点を当てた記事を書いてみました。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

💿Music: Oppenheimer - Ultimate Soundtrack Suite - 映画Tenetを観てから、作曲家のLudwig Goranssonにハマっています。Christopher Nolanの最新作Oppenheimerはまだ日本で未公開ですが、サントラだけは公開されているので、映画より先に聴いてしまっています。今回もゴランソン節が全開です。

🌳Field Recording: ネットフリックス、パンクロック、808s:ドイツのヒットメーカー、バザジアンのスタジオにて. - ドイツ語版Netflixのヒット作『Skylines』のビート制作なども手掛けるバザジアンのインタビュー。Native Instrumentsのサンプラーも手掛けている彼ですが、型破りなテクニックで常に新しいサウンドを求める姿勢には学ところがたくさんありそうです。

🎵Goods: 永井博イラストのポータブルレコードプレーヤーSound Burgerが数量限定予約開始 - 永井博が好きな人にはたまらないレコードプレイヤーが登場しました。コンパクトで可愛いデザインですが、音はそんなに期待できなさそうですね。

🎞️Live: S+A LAB SESSIONS VOL I: CHURCH ANDREWS + MATT DAVIES - 常に革新的で面白いサンプラーソフトをリリースしている「SLATE+ASH」の、YouTubeで公開されたドラム+シンセのライブパフォーマンス動画。SLATE+ASHのページで公開されるだけあって、特徴的なシンセに変則的なビートが交わる、中毒性のある独特なパフォーマンスとなっています。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.20

2023年8月4日発行

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