週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.2

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週のフィールドレコーディング

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近取り組んでいる映画の音楽に、アコースティックギターの音色を入れたいと思い、お茶の水の楽器屋にギターを選びに行きました。

ちなみに僕のギター経験は、小さい頃に1万円程度の父親のアコギを借りて、コードをいくつか弾いていた程度です。

今回は3万円程度の予算で、何か良いギターが買えないかと楽器屋に行ったのですが、さすがお茶の水ですね。

数万円から、100万円近いものまで、さまざまなギターが用意されていました。

暇そうな店員さんがいたので、「すいません。ギターを買いたいんですけど、ギターの音色の違いなんて、聴いてる人にはわからない程度ですよね?」とふっかけてみると、「おやおや、奥深いギターの世界に足を踏み入れたがっている若造がやってきたぞ」と言わんばかりに、3万円のギターと10万円のギターを気持ちよさそうに弾いてくれました。

正直なところ、僕は、ギターの音色なんてSpotifyやTidalを聴いていてもあまりわからなかったので、「安いのでいいや」と思っていたのですが、

生で聴くと、やはり違いますね。

すぐに、

「あ、ギターは最低でも10万円からじゃないとダメですね」

となってしまいました。

次に、「せっかくなので30万円のギターも聴かせてもらっていいですか?」と尋ねてみると、「いいんですか? 戻って来れなくなりますよ?」とノリノリな様子の店員さんが、30万円のギターをたっぷり時間をかけて聴かせてくれました。

すると、ここでも、

「あ、ギターは最低でも30万円からだな」

となってしまい、店員さんに導かれるままに、奥深いギターの世界に足を踏み入れてしまいました。

やはり、普段から良いスピーカーで聴いていても、「生音」で聴くと全然違うもんですね。

楽器屋に行って、店員さんに色々弾いてもらって話を聞いてみるだけでも、音作りをする上ですごく良い経験になると思います。

もっと「音」に対する感覚を養いたい人は、楽器屋でもいいですが、コンサートなどにも足を運んでみて、「生演奏独特の空気振動としての音楽」を味わってみることをおすすめします。

ちなみに、ギターの話ですが、「ギターは最低でも30万円から」となったので、完全に予算オーバー。

よって、

「今は、VSTプラグインでいいや」

という結論になりました。

はたして、今後ギターを購入する日はやってくるのか。

「いつか、とんでもない値段のギターを買ってしまいそうだな」と感じた、楽器屋での一コマでした。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. Waves makes U-turn on subscription-only model following user backlash: “We are genuinely sorry”→Wavesが「これからはサブスクのみで運営する!」といった直後に、「やっぱり今までの買い切りライセンスも続ける!」と右往左往していましたね。サブスクのみだとユーザーがかなり離れて行きそうだったので、いい決断だったと思います。

  2. Union Audio, MasterSounds Valve MK2 Mixers Debut→Union Audioが立て続けにミキサーを発表しています。Model 1の生みの親が作っているので、音質は間違いないでしょうね。

  3. CHORD MACHINE AKT-0.1→コードやメロディを生成するための面白そうなデバイス。ローンチ前に登録しておくと、80ドルの割引を受けることができます。

  4. CHOMPI Sampling Keyboard Kickstarter Launches, Immediately Blows Past Goal→こちらは、遊び心あふれるデザインのサンプラー。Kickstarterですぐに目標額を達成したようです。

  5. Auto-Bounce App Debuts for Logic Pro Users→Logic Proユーザーはバウンスのための便利なアプリを利用できるようになります。ステムの書き出しなどが、より簡単にできそうですね。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

先週のニュースレターでも少し紹介しましたが、AIを使った作曲ツール「Mubert」は、プロンプト(言葉による指示)を打ち込むことで、瞬時に音楽が作れてしまうアプリ。

僕も実際に使ってみたのですが、BGM程度の音楽なら、1~2分でサクッと生成できてしまったのですごいなと思いました。

音楽の尺も指定できるので、動画につける音楽とか、そういったものにはとても役立ちそうですね。

ただ、頭でイメージした通りの音楽が簡単に作れるかと言うと、そんなこともなく、「ビートなしで」と指定してもビートを入れてきたり、「雰囲気はいいけど、なんか安っぽい曲だな」と感じてしまうようなことも多々あるので、完全にAIまかせの作曲というのは、まだまだAIには難しい領域なんだなと感じました。

落合陽一さんはMubertで音楽を生成し、Djay Proを使ってビートを抜き取り、他のステムと混ぜ合わせて…という高度な技で作曲をされてますが、さすがですね。

Djay Proのビートやボーカル抜き取り技術は、かなりレベルが上がってきているものの、まだまだ精度は高くありません。

なので、この作曲方法でクオリティの高い音楽を作るのは、今のところ難しいですが、これが音楽制作の未来なんだと思います。

最近は、Spliceで拾ってきたピアノコードなどを、

  1. AbletonのAudio to Midiで解析

  2. Scaler2でキー&コード解析

  3. Scaler2のコードサジェスト機能で、続きのコード進行を書いてもらう

という方法で、音楽に展開をつけたりしながら作曲しています。

こうやって、部分的ではありますが、AIをうまく使いこなしていくのが良いと思います。

究極的には、Mubertの精度がもっと飛躍的に上がって、専属の作曲家みたいになってくれれば最高なんですがね…

まだ、その未来は当分、先のようです。

  1. 今週のフィールドレコーディング

代々木公園で、フィールドレコーディングを行いました。

マイクはこちらの記事でも紹介している「Clippy」です。

ハイの抜けが良く、とても綺麗に環境音が録れるのでおすすめ。

フィールドレコーディングの音をYouTubeやSoundCloudで聴いていると、たまに「マイクがもう少し良ければなあ」ともったいなく感じることがあるので、マイク選びはとても重要だと思います。

カラスの鳴き声が多めですが、鳥の鳴き声や子供たちの声に癒される、いい録音ができたと思います。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。その際は、このQ&Aコーナーにも貼らせていただきますのでご了承ください。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🔎ウェブツール: Mindfull Harmony - 五度圏を使ったコード進行の生成や、移調をサポートするツール。とても使いやすいです。

🖥️YouTube: WORKSHOP - ATC Loudspeakers - Studio Monitor Setup - ルームアコースティックに関するATCのセミナー動画。こういった知識があると、Sonarworksに頼らずスピーカーの調整ができるようになります。

📚本: 感動を作れますか?久石 譲 - ジブリ音楽でお馴染みの久石譲が、仕事として音楽をつくることについて語っています。

🎧DJ: Four Tet, Fred Again.. & Skrillex live from Times Square - タイムズスクエアで行われた、豪華メンバーによるDJ。Four TetとSkrillex…?と思いましたが、かなり良いです。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.2

2023年3月31日発行

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