週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.19

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最新の医療技術を使ったBluetoothイヤホン「Denon Perl Pro」を試聴してきました。

どんなに良いイヤホンやヘッドフォンを持っていたとしても、人によって耳の形や周波数ごとの聞こえ方が違う(年齢によっても変わってくる)ので、最高の音を聴くためには「補正」のプロセスが必ず必要になってきます。

10万円も出せば、耳の形に合わせて特注のイヤホンを作ることができますが、これは単に耳にフィットするイヤホンを作っているだけなので、鼓膜内部の影響をゼロにすることはできません。

今月発売されたPerl Proイヤホンでは、医療技術を応用することで、各人の耳の形に合わせたオーダーメイドサウンドを簡単に実現することができます。

これを秋葉原のeイヤホンで視聴してきたので、その感想をお伝えします。

 

まず、音質ですが、補正しない状態だとかなり音が悪いです。

おそらく補正を前提に音を作ってあるので、補正なしで聴くのはおすすめしません。

しかし、ひとたび補正をすれば、このイヤホンは化けます。

BGMが鳴っている店内でカリブレーションしたのですが、かなり精度は高いようで、忠実に自分の耳の特性を把握してパーソナライズしてくれているのがわかりました。

「これって本当に自分の耳に合わせてパーソナライズしてあるの?」と、ふと疑問に思ったのですが、たまたま、他の人がパーソナライズしたデータが試聴機に入っていたので、そちらも聴いてみることに。

すると、びっくりするくらい音のバランスが崩れます。

自分の耳に合わせてパーソナライズされた音の方が、圧倒的に違和感なく再生されるので、これは確実にパーソナライズの効果があるということがわかりました。

ただ、音質そのものに関して言えば、AirPodsの方が若干優れていると感じましたね。音の細部の表現力、特に低音の解像度はAirPodsの方が上だと思います。

ノイズキャンセリングの自然さと中高域のバランスは、Denonの方が上なので、AirPodsとPerl Proのどちらかを選ぶとなると、かなり難しいところではあります。

僕がどちらのイヤホンも持っていなければ、迷いに迷って、最終的にDenonを選ぶかもしれません。

これを機に、パーソナライズの技術が発達してくれれば、音楽にそれほどお金をかけられない人々でも、優れた試聴環境で音楽を楽しめるようになるでしょう。

耳は9歳から老化すると言いますが、加齢によって耳の悪くなってしまった人でも、若い頃のように音楽を楽しめるようになるかもしれませんね。

Denon Perl Pro、なかなかおすすめです。

  1. 今週の音楽ニュース

「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

  1. すべてのミュージシャンが使う必要がある、無料かつ手頃な9つのアプリとプラットフォーム→ミュージシャンにおすすめのアプリが紹介されていますが、この中で日本で有名なのはWeTransferくらいでしょうか。日本でサービスを展開していないものもありますが、SNSの管理、ライブの管理などが簡単にできる DISCOPublerBandsintown for Artistあたりは、なかなか面白そうです。

  2. TikTok Music、米国でのローンチに大きく近づく→10億人のユーザーがいるTikTokは、Spotifyの牙城を一気に崩してしまう可能性を秘めています。正直、音楽サブスクはたくさんありすぎて、もはや何でもいいやとなってしまっている僕ですが、若者の多くがTikTok Msuicを使うようになれば、そこが流行の震源となるでしょうから、登録せざるを得なくなりますね。今のところ、SpotifyとTidalで十分ですが…

  3. ディア・リアリティが新しいゲーム・オーディオ・ワークフローを発表→音楽制作を仕事にしたい人にとって、ゲーム業界というのは大きな市場であり、最新のテクノロジーが生まれる場所なんだと思います。イマーシブオーディオ企業のDear Realityが発表したミキシングワークフロー「Spatial Connect for Wwise」を使えば、このような空間(https://www.dear-reality.com/)で音作りができるようになります。Dear Realityは、「DearVR Pro」というイマーシブ系プラグインも出していて、VRオーディオ系で、いま最もアツい企業の1つです。

  4. チェイス・ブリス・リバース・モードCは、スーパーディレイ・アルゴリズムを多方向へと導く→最近ノってますねー。Chase Blissが新エンジンを備えためちゃくちゃ可愛いディレイペダルを発表しました。MOOD2同様、アンビエント系アーティストがこぞって使う予感がします。

  5. ソニー、フラッグシップイヤホンの新製品を発表 - "史上最高 "とアピール→「ノイズキャンセリングにおいて過去最大の進歩」を遂げた,、最新のイヤホンがSONYから登場。冒頭で紹介したDenon Perl Proもいいですが、こちらも気になりますね。また、どこかのタイミングで試聴に行ってきたいと思います。

  1. 作曲とミキシングのアイデア帳

作曲・ミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。

日本人プロデューサーがDIYサウンドから音楽を生み出す理由|ドキュメンタリー|Red Bull Music

最近よく聴くアーティスト、Yosi Horikawaさんのドキュメンタリーが面白かったので、ここでご紹介します。

簡単にまとめると、こんな感じ。

  1. DIYから始めた音楽制作

  2. 自作マイクを使った屋久島での収録

  3. スタジオでの音作り

  4. サラウンド環境での特別なライブ

おもちゃを与えてもらえなかった幼少期にはおもちゃを自作したり、ラジカセのインプットにヘッドフォンをさしてマイク代わりにして録音していたりと、幼い頃から実験的な精神で、音の探究をしていたことがわかります。

ちなみに、ヘッドフォンはマイクと逆の構造になっているだけなので、マイクインプットにさせば、マイクとして使うことができるのです。(音はめちゃくちゃ悪いですが・・・)

動画の後半では自分でサラウンド環境を構築してライブをやっていますが、この辺り、Stimming並みのギーク魂を感じますね。

静岡県沼津市を舞台にしたカルチャーフェスティバル「MUSO Culture Festival 2021」では、大中寺というお寺での圧巻のライブを披露。

ロケーションといい、音楽といい、海外の方に受けそうな要素がたっぷりですね。

いつか、彼のライブに足を運んでみたい。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

💿Music: Yosi Horikawa - Bubbles - この曲めっちゃいいなー、と思っていたら、日本人アーティストでした。かなり有名な方?のようで、数々の著名アーティストや施設とコラボされています。海外のコンテンポラリーダンスに使われていたり、椿山荘の音楽を担当されていたり。フィールドレコーディングを組み合わせた独特なサウンドがとても面白い。

🌳Field Recording: Capturing the Incredible Sounds of the Blue Ridge Mountains 🔊 | PBS - いますごく欲しいマイクが、こちらの「Telinga Modular Parabola」というパラボラマイク。動画では、このマイクを使って野鳥の鳴き声を聴いていますが、よく録れてますよね。フィールドレコーディングというと、みんな似たような機材で似たような音を録っていることが多いですが、こういった音が録れれば、ずいぶんと差別化ができると思います。

🔌Plug-in: Magic Death Eye Compressors - 個人的に好きなコンプレッサープラグイン。この独特なスナッピー感が大好きで、これは他のプラグインではなかなか再現できないのです。

🎞️Film: イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ - 観よう観ようと思って、まだ観ていないバンクシーの初監督作品。英語でよければ、こちらから無料で観られます。

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2023年7月28日発行

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