週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.15

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近、マスタリングで使うリミッタープラグインの見直しをしました。

今までFabfilterのPro-Lを使っていたのですが、Mix With The Mastersを観ていると、リミッターでキャラクター付けをしたり、楽曲に応じて複数のリミッターを使い分ける人がいたので、リミッターに興味を持ってしまいました。

リミッターは、色んなメーカーから出ているのですが、なるべく透明で自然に音圧が上がるものを調べた結果、DMG LimitlessOzone 10 MaximizerNewfungled Audio Elevateの3つが良さそうだったので、これらを比較してみることに・・・

結果としては、Ozone 10のマキシマイザーがとても優秀で、これから主力選手として使うことにしました。

大胆にスレッショルドをあげても破綻せず、音が細くなったりしないんですよね。特に一番新しいアルゴリズムである「IRC Ⅳ Modern」は、クセもなくスムーズに音圧を上げられるのでおすすめです。

さて、残りのLimitlessとElevateもかなり好印象で・・・

Elevateは、トランジェントへの影響を最小限に抑えられるので、場面に応じてOzoneと使い分けても良さそう。これは、そのうち買ってもいいかなと思いました。

周波数を26個に分けて、それぞれをリアルタイムで解析&調整してくれるAI系リミッターで、Pro-Lよりも自然でクリアなサウンドを保ったまま、音圧を稼ぐことができます。

めちゃくちゃパキッとしたモダンなサウンドになるので、好みはわかれるかもしれませんが、僕は好きな音でしたね。

公式ページにデモがあるので、気になった方は聞いてみてください。

Limitlessは、Jasen JoshuaとDave Pensadoがおすすめしていたマルチバンドリミッターですが、こちらもかなり優秀で、特にダンスミュージックやヒップホップに合うと思います。

今までは「Fabfilter最高ー!」と、ずっとFabfilterのお世話になっていましたが、気がつくと、良いプラグインがたくさん出てきているので、常に情報収集は欠かせませんね。

iZotope Ozoneはマスタリングを自分でやってみたい人が、まず最初に候補に入れるプラグインだと思いますが、リミッターも優秀なので、Ozoneを持っている人は、存分に活用してみてください。

ちなみに、7月6日までサマーセールがやってるので、半額で買えるようです。

  1. 音楽をつくる人のためのリンク集

「音楽制作」「ミキシング」「プロモーション」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。

 

  1. AIマスタリングはアーティスト、エンジニア、そして音楽にとって何を意味するのか?→Soundcloudでもオンラインマスタリングサービス「LANDR」が使えるようになるくらい、AIマスタリングは主流になりつつありますが、マスタリングエンジニアはいったいこれからどうなっていくのでしょう?この記事で面白かったのは、「90年代や2000年代初頭にマスタリングされた曲は、2020年にマスタリングされたものとは明らかに違って聞こえる。誰かがルールを破ったからだ。あるエンジニアが標準と異なることを行い、他のエンジニアがそれを聴いて気に入り、真似をして、新しい業界標準が生まれたのだ。」という一文。全てのエンジニアがAIに置き換わってしまうと、このような変化は起きなくなる可能性がありますね。

  2. メタ社のAIツール「MusicGen」は2万時間の音楽で訓練されている→GoogleがMusicLMという音楽生成AIを発表しましたが、FacebookのMeta社も負けじとMusicGenを発表しています。こちらのリンクからサンプルを聞けますが、今のところAIマスタリングほどの脅威は感じられません。

  3. Two Loop Ruleは、マンネリ化したエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーを助けることができるだろうか?→RomeというYouTuberが、2バーのループを組み合わせて音楽を組み立てていく方法について解説しています。彼はEDMの作り手なので、すごくわかりやすい展開づくりをします。音楽の展開をどう付ければいいのかよくわからない、という人には参考になるかも。

  4. MusicLM: Generating Music From Text→GoogleのAI。最先端のAI音楽がどんなもんか、ここでたくさん試聴できます。

  5. ユーザーの聴こえ方を測定し、個々人に最適なサウンドを提供する。デノンから医療技術を応用したパーソナライズ機能を備えた完全ワイヤレスイヤホンが2モデル発売→これからは商業的な側面が目立っているDolby Atmosよりも、パーソナライズイヤホン市場が急速に伸びていくのではないでしょうか。自宅でサラウンドなんて、たぶん今後も流行らないので、このパーソナライズイヤホン市場を制する者が、これからの音楽市場を制するのだと思います。

  1. ミックスが上手くなるコラム

ミキシングが上達するための、動画や記事をご紹介します。

クリッパー vs リミッター - その違いと使い方 (Clippers Vs Limiters Differences and Uses - Rapid-Fire Q&A #19)

「リミッターの前にクリッパーを入れると、音圧が稼げる」なんて、どこかで聞いたことはないでしょうか?

この2つは、とても似ていてややこしいツールですが、これらの違いについて、例のモヒカンの彼が解説してくれています。

簡単に言えば、Fabfilter Pro-Lなどのリミッターは、音への影響を最小限に抑えたまま音圧を上げるツール、StandardClipなどのクリッパーは、音を潰して倍音成分を付与したりするツール。

クリッパープラグインは、本当にいろいろ出ていますが、最近ブログにも書いたGold Clipはかなりおすすめです。

リミッターは、音への影響を最小限に抑えるとはいえ、メーカーによって音のキャラクターは全然違っています。

冒頭でもお話ししたDMG Limitlessなんかもすごく良くて、「リミッターなんて、ただの音圧上げツール」と思っていた節がありましたが、Limitlessを使ってみて、「リミッターで、曲全体のシェイプを作りこむ」という世界があることを知りました。

Limitlessはマルチバンドリミッターなので、扱いが難しいですが、プリセットから組み立てるだけでも、かなり迫力のあるマスターを作ることができます。

クリッパーとリミッター、ここもこだわり出すと沼ですね・・・

  1. ブログ更新のお知らせ

ピンクノイズを使ったミキシングの方法について、いろんな方が記事や動画にされていますよね。

これは、ザーというピンクノイズを音楽の後ろで流しっぱなしにして、各楽器を調整していく方法なのですが、その効果は賛否両論。

実際に試して、どういう効果があったのか、自分の耳で確かめてみました。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

📖本: 作れる鳴らせる超初心者の真空管アンプ制作入門 - 今、真空管アンプを自作しているのですが、素人にはとんでもなく難しい!いろんな本を見てみた結果、この本が一番初心者にわかりやすく書かれている真空管アンプ入門書であることがわかりました。真空管アンプの自作に興味を持っている人は、ぜひ手に取ってみてください。

💿MV: Hania Rani — Hello: live session in the mountains - ポストクラシカル界で名の知られるHania Raniの新作MV。音楽の世界観がうまく出ていて、とても美しいです。

🖊️記事: SynplantがFlumeのお気に入りのシンセである5つの理由 - Synplantは10年以上前に販売されたシンセプラグインですが、他のシンセと違った、おもしろい見た目をしています。植物の枝を伸ばしたり、遺伝子操作をして音作りできるシンセサイザー。昔、Swedish House Mafiaがこれを使って曲作りをしていましたねー。懐かしい。

📺YouTube: FM SYNTHS in under 4 minutes - FMシンセって何?という人のための動画。わかりやすいイラストで解説されていて、「FMシンセが何なのか」が大雑把に理解できます。

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2023年6月30日発行

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