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スタジオ翁のメルマガ vol.136
このメルマガは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。
プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。
あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。
目次
近況
作曲とミキシングのアイデア帳
今週の音楽ニュース
サービス・書籍のご紹介
📝近況
ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

2026年1月からスタートする全12回のオンラインAI作曲セミナーに向け、準備を重ねています。
別プラットフォームでのご案内となりますが、これはAI作曲に特化した講座でして、来月にでも詳細をお伝えできればと思います。
その準備の中で、作曲とテクノロジーの歴史について調べていたのですが、AIが登場する以前も「新しい音楽技術が登場するたび、非難されては受け入れられてきたんだな」と思いながら歴史を振り返っていました。
ざっと時系列にまとめて見てみましょう。
録音技術の始まり
最初の大きな革命は、音を“保存できるもの”にした録音技術でした。1877年の蓄音機の登場によって、音楽はその場限りではなく、何度でも再生できるものになりました。
当時は「本物ではない」「耳が退化する」「演奏を学ぶ人がいなくなる」など、強い批判もありましたが、実際には録音の普及によって音楽への興味はむしろ広がり、楽器を学ぶ人が増えていきました。
シンセサイザーの登場
1960〜70年代になると、モーグやブックラといったシンセサイザーが登場し、電気信号から音を生み出すという新しい時代が始まります。
当初は「本物の楽器ではない」「魂がない」「技能が不要になる」などの批判がありましたが、電子音によって生まれた“無限の音色の自由”が、新しいジャンルや新しい音楽文化を生み出しました。
サンプリングの登場
1980年代には、既存の録音を切って貼って再構成するサンプリングが登場します。
「盗作だ」「創造性がない」「音楽を壊す」など批判されましたが、サンプリングは“過去の音を借りて未来をつくる”という新しい文化を生み、ヒップホップやエレクトロニカなど都市型音楽の大きな原動力となりました。
楽器が弾けなくても作曲できるようになったことで、より多くの人が音楽制作に参加できるようになり、大きな民主化につながりました。
MIDIとDAWの登場
1983年のMIDI登場、そして2000年代に広がったDAWにより、音楽制作は完全にデジタルへと移行していきます。
「音が冷たい」「品質が落ちる」「スタジオが衰退する」などの批判はありましたが、現実にはYOASOBIやBillie Eilishのように、自宅から世界へ発信するアーティストが数多く生まれました。
高価なスタジオ環境がなくても、ノートPC1台で制作から発信までが完結できるようになり、音楽は“誰でも始められる表現”へと変わっていきました。
と、こんな感じでテクノロジーは常に批判されては、表現の一部として組み込まれてきたんですよね。
そして現在、AI作曲・生成音楽が新たな段階を切り開いています。
もちろん、「仕事が奪われる」「創造性がない」「著作権の問題がある」「多様性が失われる」などの批判は強くありますが、歴史を見れば分かるように、新しい技術はいつも最初は批判され、それでも最終的には音楽の門戸を広げてきました。
賛否両論ありつつも、AIは作曲の可能性を大きく広げるツールとして進化を遂げていくことになるでしょう。
と、最近はAIに傾倒していますが、本格的な作曲にはまだまだAIを組み込めていません。アーティストがAIを活用して自分の感性を音楽に落とし込める、そんなふうにAIが進化していってくれるといいですね。
ここ最近は、Sunoを自動作曲ツールとしての機能を中心に探ってきましたが、このあとお話しするような、アーティストが相棒として使えるようなAI活用術を、これからもっと探っていこうと思います。
📘作曲とミキシングのアイデア帳
作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

未完の大作をAIで完成させる
こんな記事を見つけました。
イギリス3大バンドの一つ、The Whoのギタリスト「ピート・タウンゼント」が、AIに興味を示しているという記事。
彼は「昔作ってリリースしなかった音楽をAIにアップロードすれば、また新たなヒットソングを作れるのではないか?」と考えているそう。その数は400曲ほどにも上るものの、そのほとんどは駄作だと言います。
確かに「最後まで完成しなかった曲をAIにアップロードしたら、リリースできるくらいの曲が出来上がるかもしれない!」と思い、早速このアイデアを試してみることにしました。
ところが結果から先にお伝えすると、全然うまくいきませんでした…
いくつかの曲をSunoにアップロードしてみたのですが、
設定次第では、音楽に新たな視点を与えてくれるものの、元の曲と音程が合っていない楽器が追加されたり、こちらが納得いくようなアレンジが生成できなかったりと、むしろ元の音楽より酷くなって出力されることが多々ありました。
とはいえ最近は、Sunoのアップロード機能をうまく使いこなして、面白い音楽を生成している方がいるのも事実。
この方は、わざとヘンテコなビートを与えてSunoに音楽を生成してもらう実験をされていたのですが、試行錯誤の末に出来上がったものは、なかなかクオリティが高く面白いものだと思いました。
ただ、Sunoとしては、こういったクリエイティブな創作は今のところ苦手なようなので、かなり回数を重ねないとなかなか良いものが仕上がってこないということもわかりました。
今後は、こういったAIを使った実験的クリエイティブのための機能も徐々に強化されていくことと思いますが、「現状はこんな感じなんだな」ということが理解できたので、とりあえず収穫はありました。
あと数年すれば、未完成曲をブラッシュアップしてくれる機能も強化されていくと思うので、「この曲はダメだ!」と思っても、未完成曲はしっかり残しておくようにしましょうね。
📰 今週の音楽ニュース
毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。

Xania Monet: AIアーティスト「Xania Monet」の生みの親Tulisha Nikki Jonesが創作の裏側と人間との共生を語る。
AI Distribution: Ari’s TakeがAI時代の音楽配信戦略を解説、アーティストの自立支援モデルを提示。
Lunacy Taps & Portals: Lunacy Audio、Benn Jordanとの共同開発で新ディレイ&フィードバックエフェクトを発表。
Songscription: AI自動採譜サービス「Songscription」、500万ドルの資金調達に成功。
Valhalla FutureVerb: Valhalla DSP、8年の開発期間を経た新リバーブプラグイン「FutureVerb」の発表。
SuperSonic: SuperColliderのシンセエンジン、WebAssemblyによりブラウザ上でインストール不要・無料で動作可能に。
Sonarworks: 仮想モニタリング環境を再現するVirtual Monitoring Proによるプロスタジオ体験。
SongDNA: Spotifyがサンプルやカバー履歴を可視化する新機能で創作背景の透明化。
EXO Series: EVE Audioのコンパクト・モニタースピーカー新シリーズによる高精度リスニング環境。
Polyend Mess: 予測不能なパターン生成を特徴とするシーケンサーによる創作実験性の拡張。
🎧サービス・書籍のご紹介

<5日間メール集中講義(無料)>
最近音楽を作り始めた方は、まずこれを読んでみてください。
最短でステップアップできるよう、これまで培ってきた知識と、AIを含めた音楽制作の最新情報を2万字を超える文章に凝縮しました。
<Splice楽曲完成メソッド>
5時間にわたる音楽制作の講座です。
音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決し、アイデアがない状態から1曲を完成させる実践的なテクニックを身に付けます。
音楽制作の体系的な方法を、短時間で学びたい方におすすめ。
<AI YouTubeチャンネル>
実験的にAIカバーソングを生成し、YouTube上でリリースしています。
ただAI生成するだけでなく、エディット、マスタリング、場合によってはステムミキシングを行い、他にはない最高品質のAI音楽を作っています。実験的なコンテンツも多数投稿予定です。
<著書>
作曲AIに関する書籍です。
アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。
<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>
ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。
使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。
プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。
<Chrome拡張>
AI時代は、MYOG(Make Your Own Gear)の時代です。
アーティストが自分のギアを作る可能性を模索中。その研究成果として2つのウェブアプリを開発しました。
週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.136
2025年11月21日発行
Blog: https://studio-okina.com/