週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.131

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. ブログ、note更新のお知らせ

  5. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

Splice楽曲完成メソッドをリリースして間もないですが、Spliceユーザーに朗報です!

Spliceはイギリスの著名なオーケストラ音源ブランド「Spitfire」を買収し、SpitfireのツールがSpliceからも利用できるようになりました

SpliceはAI機能も魅力的なので、積極的に事業を拡大して、音楽制作を始めたばかりの人が、最短で上達への階段を駆け上がれるようなサービスになってくれればいいなと思います。

さて最近は、AIが楽しくていろんな情報を漁っているのですが、AIによって音楽制作や音楽業界がどうなってしまうのかを考えていると、音楽とテクノロジーの歴史についても、自然と興味が湧いてくるものです。

音楽の歴史はテクノロジーの歴史でもあるわけですが、音楽史における最初の重要なテクノロジーとして、エジソンの蓄音機の発明があります。

「音楽が録音できなかった時代」なんて僕らには検討もつかないですが、それまで音楽と言えば、ライブで聴くのが当たり前。自宅で録音物を聴くなんて事はありえない話で、当時は、「音楽家の仕事がなくなる」「録音なんて本物じゃない」「人々が楽器を演奏しなくなる」「繊細な感性が失われる」と散々言われていたようです。ところが、自宅やお店で音楽が聴けるようになったことで、楽器の演奏者が増えたり、人々の生活を豊かにしてきました。

そして、テクノロジーの進歩は、音楽の性質も変えてしまいます。当時の楽曲や交響曲は長いと1時間くらいあったのですが、初期の録音媒体は2、3分しか録音できなかったため、そのフォーマットに合わせて曲が短縮され、短い音楽が主流となりました。今では、「3分のポップソングは蓄音機の発明である」と言われているほどです。

そして蓄音機は、ジャズと言う新しいジャンルを生み出しました。なぜなら、ジャズはライブで聞いただけでは習得できないほど難しいものですが、録音を繰り返し聴くことで技術を磨き、習得することができるようになったからです。

こうやって、音楽の歴史をさかのぼってみると、どこかで聞いたことあるような話がたくさん出てくるなと思いませんか?

蓄音機への批判は「AIで作った音楽は本物じゃない」「AIで音楽の仕事がなくなる」といった話と似ていますよね。TikTokやSpotifyが登場したことで、楽曲のイントロや全体の尺が極端に短くなったことも、蓄音機の登場によって曲が短くなったことに似ています。テクノロジーによって新しいジャンルが生まれた歴史は、ドラムマシンやサンプリング技術が発展したことにより、ヒップホップというジャンルが生まれたことにも似ています。

このように、音楽はテクノロジーの発展と共に進化し、さまざまな楽しみ方、音楽ジャンル、トレンドを生み出してきました。これまで生まれたテクノロジーに現在も納得いかない人はいるでしょうし、「音楽は録音ではなくライブで聴くべき!」という考えの方も、もちろんいらっしゃるでしょう。

しかし、蓄音機の後にも「楽器の電子化」「サンプリングの普及」「ラップトップ1台で音楽が作れるDTMの普及」など様々なテクノロジーが登場し、その度に音楽の世界は大きく変わってきました。どの時代も、人々は新しい技術にワクワクしたり、ちょっぴり不安になってきたのかもしれません。

AI作曲は素晴らしい!と一概には言えないのは確かですが、音楽制作への門戸を広げ、多くの人が音楽を楽しめるようになるのはとても良いことだと思います。今は、珍しさからAIオンリーの作曲で有名になろう!みたいな風潮もありますが、結局はAIを使っても使わなくても、人の心を動かすのは、魂の込められた良い音楽だけです。

時代が変わっても、音楽を楽しむ心と、新しい表現を探求する心は変わりません。これからもテクノロジーと音楽の関係を面白がりながら、新しい時代を楽しんでいきたいな、と音楽の歴史を通して考えさせられた一週間でした。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

マスタリングにはPro Toolsを使ってみよう

みなさんはAbleton Live、Cubase、Studio One、Logic Proといった、さまざまなDAWを使って音楽を作られていると思います。

このDAWというのは、それぞれ音が微妙に違っていて、昔はAbleton Liveは音が悪いとか、Studio Oneは音が良いとか色々言われていました。

今となっては、どのDAWもかなり音質が良くなってきているので、音が悪いと言われていたAbleton Liveも、今ではマスタリングで使っている著名エンジニアがいるくらい改善されてきています

そうは言っても、依然としてDAWによる音の違いはあります

もし自分の使っているDAWの音が気に入っていない、もしくはもっと音を良くしたい!とお考えの方がいれば、マスタリングの時だけPro Toolsを使ってみるのがおすすめです。

僕は普段、Ableton Liveを使っているのですが、マスタリング時にはPro Toolsを使っています。音が全然違います。

MetaPlugin(https://ddmf.eu/metaplugin-chainer-vst-au-rtas-aax-wrapper/)みたいに音を良くするプラグインを使うと、どのDAWでもかなり音質UPを狙えるのですが、僕はPro Toolsの音が好きなので、最近はマスタリング時のみPro Toolsを使っています。

そうは言っても、「マスタリングのためだけにPro Toolsを購入するのはちょっと…」と思われたかもしれませんが、トラック数の制限がある「Intro」なら無料で使うことができるので、マスタリングやステムミキシング程度なら、無料で十分使えます。

今使っているDAWの音に不満があるという方は、ぜひPro Toolsを活用し、マスタリングを楽しんでみてください。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。
  1. Audacity 4: Audacityが新UIを初公開、ループベース編集とAIアシストを備えた近代的DAWへ進化。

  2. Xone K3: Allen & Heathが新MIDIコントローラー「Xone:K3」を発表、DJとライブ制作用に最適化。

  3. TR-1000: 製品開発ストーリー 〜 開発者が語る、TR-808/TR-909のアナログ音源を継承した“究極のリズム・マシン”の誕生秘話

  4. Demon Box: Eternal Researchの「Demon Box」レビュー、ノイズと美を両立したハード音源。

  5. Spotify ChatGPT: SpotifyがChatGPTを統合、AIレコメンドと会話型音楽検索を実現。

  6. VocalNet: Session LoopsがAIボーカル生成「VocalNet Realtime」を発表、即時歌唱合成を実現。

  7. Spitfire Labs: SpliceがSpitfire Audioと提携し、「Splice Instrument」でLABSサウンドを統合。

  8. David Bowie: MusicRadarがデヴィッド・ボウイの革新的録音技法を再検証、「Heroes」誕生の裏側を紹介。

  9. KSHMR: SpliceがKSHMRの制作映像を公開、プロの音作りを学べる限定チュートリアル。

  10. Omnisphere 3: Spectrasonicsがフラッグシップシンセ「Omnisphere 3」を発表、膨大な新音源とAIサウンド探索を搭載。

ブログ、note更新のお知らせ

🎧サービス・書籍のご紹介

<Splice楽曲完成メソッド>

5時間にわたる音楽制作の講座が完成いたしました。

この講座では、音楽理論や楽器の演奏からスタートする"従来の作曲法"とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決し、アイデアがない状態から1曲を完成させる実践的な技術を身に付けます。

音楽制作フローを加速させたい方は、ぜひチェックしてみてください。

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Chrome拡張>

Chrome上で再生される全ての音を「ガンマ波」に変調します。ガンマ波は、深い瞑想状態で現れる脳波であり、学習、記憶、注意力、意識の統合に関わるとされ、「脳を覚醒させる周波数」として注目されています。

日々の、集中力や思考力を高めるツールとしてご活用ください。

ついに誰もがアプリケーションを自作できる時代の到来です!これからアーティストは、自分の道具すら自分で作る時代になります。こちらはSpotify Webプレイヤーで再生中の曲に、タイムスタンプ付きのメモを取るための拡張機能。

無料ですので、ご自由にお使いください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.131

2025年10月17日発行

Blog: https://studio-okina.com/