週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.130

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. ブログ、note更新のお知らせ

  5. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

マスタリングを担当した楽曲がリリースされました。

「亜門」さんの、自作楽器を使った音楽シリーズ第二弾の曲です。

アーティストとして素晴らしい感性を持つ彼との作品に関わると、僕の方もいつも研ぎ澄まされますし、マスタリングという行為が瞑想のように作用して、作業が終わった後は、なんだかとっても心地良い感じになります。

僕はあまり詳しくないのですが、「羊文学」というアーティストが所属していたfelicity_capというレーベルから出てるみたいです。

よかったら聴いてみてくださいね。

さて、最近はこんなことを考えています。

AIミュージックレーベルを作るにあたり、どのようなコンセプトが良いかいくつか考えていたのですが、昨日ひとつアイデアが浮かびました。

まず、ザニア・モネの例から見ると、彼女が音楽の素人だったにもかかわらず、音楽レーベルと5億円の契約を果たせた理由は、その歌詞に人間味が溢れていたからだと思います。

AI生成の音楽であろうと、「人間が後ろに見える」という部分が最も重要だったのではないでしょうか。

なので、音楽レーベルを始めるなら、たとえAIで音楽を制作していたとしても、歌詞は必ず人間の手で書くべきだと思います。欲を言えば、実体験に基づく一貫したストーリーや、リスナーの悩みに寄り添うような魅力的な歌詞が書ければ理想的ですが、僕自身にはそのような能力はおそらくないので、これは誰かに書いてもらう必要があるでしょう。

そして近頃、僕がよく紹介しているYOASOBIやAdo、もしくはTukiといったアーティストはいずれも、10代の若い学生の頃から音楽を作り、世に出て活躍していた人たちです。なぜ、これまでそのような人たちが出てこなかったのかというと、10代の多感な時期に、友達との関係、恋愛の悩み、社会への不満など、感受性豊かな彼らにはたくさんの思いや考えがあるはずなのに、それを音楽にして世界に届けるための下地が整っていなかったからだと思います。

ここ数年で、音楽の作り方を学べる無料のYouTubeなどのプラットフォーム、安価で購入できる音楽機材、そしてそれを発信できるSNSという三つの環境が整いました。これらの普及のおかげで、これまでも才能を秘めていた10代の潜在的なアーティストたちが、ようやくその才能を発揮できるようになったのです。そして、その流れをいち早く取り入れたのが、先ほど紹介したアーティストたちです。

つまり、10代という多感な時期は、誰もが音楽にはしていなくても、たくさんの思いを抱えているわけです。その思いを歌詞という形にして音楽に乗せ、作品として生まれ変わらせる――。僕のこれまで培ってきた音楽制作のスキルやAI作曲の技術を使って、それらの思いを音楽に変える、というのが良いのではないかと思いました。

どうやって募集するかという点については、例えば歌詞買取サービスのようなものを作って歌詞や体験を募集する、もしくはInstagramやTikTokなどで直接交渉する方法もあると思います。自分に音楽の才能があるなんて思っていない人でも、気軽に自分の思いを投稿し、それをお金に変えられるような仕組みがあれば、中学生や高校生が「ただ日常的な不満や悩みを書いただけなのに、お金になるんだ」と感じ、気軽に自分の体験を提供してくれるかもしれません。

これを長期的に継続するには、まずAIミュージックレーベルを軌道に乗せなければ、ただ趣味で若い子の歌詞を買い取っている変な人になってしまいます。なので、もっとローリスクで始められるアイデアがないか探ってみますね。

2026年1月からは、あるオンラインスクールで全12回のAI作曲セミナー(有料)の開催も決まっているため、色々とやることはあるのですが、このプロジェクトも徐々に進めていきたいと思っています。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

リスナーを飽きさせないビート作りの極意

タイトルのままですが、ビートを4小節とか8小節で作り、最初から最後までそのパターンを繰り返してしまうと、リスナーが飽きてしまう可能性があります。

リスナーですら、自分が単調なビートに飽きてしまっている、と気づいていないかもしれません。

この動画では、リスナーを飽きさせない3つのテクニックが紹介されています。

  1. ChanceモジュールでMIDIノートの出現率を変化させる

  2. サチュレーション(or リバーブ)+LFOでランダムに歪みを与える

  3. リサンプリングしてリバース

1はAbleton Liveの機能ですが、2と3は、ほとんどのDAWで再現できると思います。

Abletonを使っている人は、1を絶対試しましょう!例えば、MIDIでドラムを打ち込むシーン。あるハイハットのワンショット音をドラムビートに組み込み、そのワンショットがあってもなくても成立するようなビート構成にします。

そのワンショットを、Chanceというモジュールを使い、例えば50%の値で出現させたりさせなかったり、と自動化することでリスナーの不意をつくことができるのです。

Abletonを使っていない人は、2をぜひ試してみてください。LFO的な機能が付いていれば、サチュレーションやリバーブの出現をランダムにして、歪みを与えたり与えなかったり、といったランダムパターンを生成することで、「なぜか飽きのこないサウンド」を短時間で作ることができるでしょう。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。
  1. Fundamental — sonicLABがAIパッチングを統合した「Fundamental 4」を発表、自然言語プロンプトでシンセ操作可能に 

  2. SettingSun — 日本がかつてのダンス音楽技術大国から取り残された構図を、文化・産業・政策の観点で探る長文ルポ 

  3. Genelec8380 — Genelecの革新的スタジオモニター“8380A”がその精密性と音場表現で話題に

  4. ORIAmini — AudientとSonarworksが共同でハードウェア型ルーム補正器「ORIA Mini」をリリース、低遅延でモニタリング品質改善 

  5. Live12 Suite — AbletonがLive 12 Suite向けに買い切り型の分割払いプラン「rent-to-own」を導入、支払い中も利用可能 

  6. Suno Studio — SunoがAI主導のDAW「Suno Studio」を発表、ビート・ボーカル・シンセ音源の即時生成を目指す 

  7. HiFAL — Schwabe Digitalが高周波制御に特化した新プラグイン「HiFAL」を公開、明瞭さを保ちつつ高域の過剰成分を抑制 

  8. TR-1000 — Rolandが約40年ぶりに真のアナログ技術を取り入れた新型ドラムマシン「TR-1000」を発表、古典と現代技術を融合 

  9. Orchid — Tame ImpalaのKevin Parkerが率いるTelepathic Instrumentsがデジタルポリフォニック・シンセ「Orchid」の世界発売日と専用プラグインを発表 

  10. Splice Instrument — Spliceがサンプル提供プラットフォームから一歩進み、クラウド連携型の仮想楽器プラグイン「INSTRUMENT」をローンチ 

ブログ、note更新のお知らせ

🎧サービス・書籍のご紹介

<Splice楽曲完成メソッド>

5時間にわたる音楽制作の講座が完成いたしました。

この講座では、音楽理論や楽器の演奏からスタートする"従来の作曲法"とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決し、アイデアがない状態から1曲を完成させる実践的な技術を身に付けます。

音楽制作フローを加速させたい方は、ぜひチェックしてみてください。

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Chrome拡張>

Chrome上で再生される全ての音を「ガンマ波」に変調します。ガンマ波は、深い瞑想状態で現れる脳波であり、学習、記憶、注意力、意識の統合に関わるとされ、「脳を覚醒させる周波数」として注目されています。

日々の、集中力や思考力を高めるツールとしてご活用ください。

ついに誰もがアプリケーションを自作できる時代の到来です!これからアーティストは、自分の道具すら自分で作る時代になります。こちらはSpotify Webプレイヤーで再生中の曲に、タイムスタンプ付きのメモを取るための拡張機能。

無料ですので、ご自由にお使いください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.130

2025年10月10日発行

Blog: https://studio-okina.com/