週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.129

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. ブログ、note更新のお知らせ

  5. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

まずは、ちょっとしたご報告から。

以前、僕がマスタリングを担当させていただいたSONY BRAVIAのCM曲が、無事にYouTubeで公開されていました。

何も連絡をいただいてなかったので、無事公開されていて一安心です。

さて今週、面白いポストを発見しました。

人気YouTuberの瀬戸弘司さんが、「Suno Studioで音楽を作った」という内容のポストを投稿していました。 (これからSuno使っていきます!ってポストだったかな?) ニュースレターでもご紹介した、Suno Studioですね。 僕としては「お、瀬戸さんも使い始めたのか」なんて思っていたら、その投稿が、ものすごい勢いで批判的なコメントを集めてしまったようで・・・

僕のタイムラインにも、その件に関する厳しい意見が次々と流れてきました。

「これは大変なことになってるな…」と、翌朝にじっくりユーザーの反応を追ってみようと思ったら、なんと瀬戸さんはポストを削除済み。ただ、僕が思い出せる範囲で、批判の主なポイントをまとめてみると、だいたいこんな感じでした。

  1. 「人の曲を勝手に学習して作られた音楽なんて、権利侵害じゃないか!」

  2. 「AIを使ってるって知っちゃうと、もうその人の曲を聴いても白けてしまう…」

なるほど。 世の中の人が「AI作曲」に対して、今どんなイメージを持っているのかがリアルに伝わってきて、非常に興味深かったと同時に、「ちょっと違うんじゃないかな」と感じる部分も正直ありました。

まず、権利侵害の問題

これは、確かにアーティストからしたら「自分たちが必死に作った曲を使って、何を勝手にやってるんだ!」って気持ちもわかります。でも、権利を持ってるレーベル側が「僕らの曲、学習に使ってOKだよ」と許諾すればクリアになる話で、実はもう水面下では双方が納得する契約になる方向で動いているっぽいです。大手レーベルも、AIを活用して収益を増やそうと考えているはずなので、解決は時間の問題かなと。

要約すると、これまでSunoやUdioに巨額の賠償金の支払いを命じていたけど、株式を一部取得させてくれたり、アーティストに報酬を与えたりと、レーベル側にもメリットがあるなら楽曲を使っていいよ、という交渉です。

もちろん腑に落ちないアーティストもいるでしょうが、方向的には、AI作曲サービスはこれからも発展していく流れなのかなと思います。

次に、「AIを使っているアーティストの曲は聴けない」という感情的な問題。 気持ちは分かります。だからこそ、ほとんどのアーティストは「AI使ってます」なんて公言しないでしょう。 これは、僕がオンライン講座でもご紹介している音楽制作ツール「Splice」と似たような構図ですね。

今やほとんどのプロが使っていますが、「Spliceのサンプルを使って曲作りました!」なんて言う人、いないですよね。

今の「AI作曲」って、プロンプト一発でポンと曲が出てくるイメージが強いと思いますが、これからはアイデア出しの相棒にしたり、曲の方向性を探るために使ったり、サンプリング素材として活用したり。AIをあくまで「人間主導で使いこなす」というスタイルが、主流になっていくでしょう。

ただ、現状ではAI作曲のイメージがここまで悪い。だから、第一線で活躍しているプロデューサーほど、AIについて語りづらい空気があるのも事実です。

そこで、僕みたいに、音楽を作る仕事をしつつも、世間的には知名度が高くない。AI作曲について発信しても、仕事に大きな影響が出にくいポジションの人間こそ、この新しい時代の作曲法について、リアルな情報を伝えていくべきなんじゃないかと思っています。

まだ構想段階ですが、文字だけじゃなく、動画での発信も面白いかなと考えています。 何かしらの形で、この新しい時代の作曲法を、音楽制作に悩む皆さんに届けられるよう動いていきます。

そのうちYouTube始めたら、観てやってください。

そういえば、前にご紹介したTuneeというAI作曲ツールが、招待制でなく一般公開されました。

かなり精度が高いことは、以前にもこの記事でお伝えしましたが、気になる方はぜひ試してみてください。Suno Studioみたいに細かな調整はまだできませんが、プロンプトで音楽のイメージをどんどん変えていく体験は、新しい時代の到来を感じられて、すごく面白いですよ。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

先ほどお話ししたSuno Studioですが、もうみなさん試されましたでしょうか。

Suno Studioで生成した曲からステム(各楽器のパート)を抽出し、サンプリング素材として活用する——いわゆる「AIサンプリング」は、今後ますます面白くなっていくと思います。

ただ、現状Suno Studioで作った曲は、ステム分離するとなぜか音がスカスカになってしまうんですよね。 今回はその理由と解決策をシェアします。(これは有料級ですね)

結論から言うと、Sunoが生成する音は「サイド成分」が多く、「ミッド成分」が少ない傾向にあることに気づきました。音の芯となる中心部分(ミッド)が弱く、左右に広がる成分(サイド)が多いためスカスカに聞こえてしまう、というわけです。

解決策はシンプルで、ステレオの広がりを調整するプラグイン(例えばWaves社のものなど)を使い、サイド成分を抑えてミッド成分を増やしてあげればOKです。

僕自身、Sunoで抽出したステムやパーツには、基本的にすべてこの処理を施し、音の芯を作って「AIっぽさ」を減らすようにしています。

現状のSuno Studioは、まだ作曲に積極的に使えるような実用的な音が次々と出てくる段階ではないですが、このように一手間加えることで、ステムをそれなりに使える素材にできることが分かったので、今回共有させていただきました。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。

ブログ、note更新のお知らせ

🎧サービス・書籍のご紹介

<Splice楽曲完成メソッド>

5時間にわたる音楽制作の講座が完成いたしました。

この講座では、音楽理論や楽器の演奏からスタートする"従来の作曲法"とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決し、アイデアがない状態から1曲を完成させる実践的な技術を身に付けます。

音楽制作フローを加速させたい方は、ぜひチェックしてみてください。

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Chrome拡張>

Chrome上で再生される全ての音を「ガンマ波」に変調します。ガンマ波は、深い瞑想状態で現れる脳波であり、学習、記憶、注意力、意識の統合に関わるとされ、「脳を覚醒させる周波数」として注目されています。

日々の、集中力や思考力を高めるツールとしてご活用ください。

ついに誰もがアプリケーションを自作できる時代の到来です!これからアーティストは、自分の道具すら自分で作る時代になります。こちらはSpotify Webプレイヤーで再生中の曲に、タイムスタンプ付きのメモを取るための拡張機能。

無料ですので、ご自由にお使いください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.129

2025年10月3日発行

Blog: https://studio-okina.com/