週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.128

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. お知らせ

  2. 近況

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. 今週の音楽ニュース

  5. ブログ、note更新のお知らせ

  6. サービス・書籍のご紹介

📢お知らせ

この度「Splice音楽制作講座」改め、「Splice楽曲完成メソッド」をリリースいたします。

ニュースレター読者様のフィードバックを経て、内容の変更や講座の追加を行い、5時間を超える音楽制作の講座が完成しました。心温まる素敵なコメントから厳格なフィードバックまで、本当に感謝です。ありがとうございました!

この講座では、音楽理論や楽器の演奏からスタートする"従来の作曲法"とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決し、アイデアがない状態から1曲を完成させる実践的な技術を身に付けます。

音楽制作フローを加速させたい方は、ぜひチェックしてみてください。

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

ここ一週間、すごく印象的な出来事がありました。

それは、「AIで作った曲が、頭から離れない」という出来事。

頭から離れないのはこちらの曲なのですが、僕の思っていた雰囲気に近いものができたこともあり、とにかく中毒性がすごい。

本当は自分のボーカルをのせたかったのですが、AIのボーカルの方が自分の録音より断然良かったので、結局、完全にAIで生成されたこちらの曲を採用。毎日リピート再生しています。(頭の中で)

まさか自分がAIで作った曲にハマるとは思わなかったので、「これからはエンタメを自分で作り、自分で消費する時代だ!」と前々から思っていたものの、実際に自分の身に起こると、なんだかとても不思議な気分です。

ただ、AIで作ったものなので、やっぱり音の広がりはイマイチだし、ちょっとAIっぽさのような、AI特有のノイズのようなものが乗るな〜と思っていたら、今週Sunoのバージョン5が新たに登場し、その音質の良さに衝撃を受けています。

でもここで感じたのは、確かにAIで作った曲にも「いいな」と思える瞬間があり、中毒性もあるのですが、それ以上のものは何もなく、その向こうにいる「人」を感じられないということ。だから「いい曲だな」という感想以外は何の感情も生まれず、AI作曲の味気なさを思い知らされたりもしています。

最近、僕はすっかり藤井風にハマっています。

特定のアーティストにハマると、僕の例で言えば、曲を聴くだけでなく、彼の生き様や生い立ち、生まれた場所や育った環境を知りたくなる。インタビューを読んで考えに触れたり、彼が出演する「徹子の部屋」を見て感激し、音楽番組でプロのアーティストが彼のすごさを語り合うのを見てさらに理解を深め、関心を持ったりする。藤井風の人生観が滲み出る一言一言に感動し、さらに彼がサイババに影響を受けていることを知れば、サイババの教えにも興味を持ち、本を買って読む。そうやって自分の中の好奇心やワクワクを刺激してくれる存在になります。

一方でAI音楽は、たとえ「いい曲」を作れても、それ以上のものは何もない。

AI時代の作曲術にも書いたように、企業CMや簡単なBGMなどはAIでも十分だし、かなりクオリティの高いものがこれからできるようになってくると思いますが、結局人間が心から感動できる、楽しめるものを作るというのはやはり、人間のアーティストにしかできないことだし、背後にいる「人」をこれほど意識して音楽を聴いていたのだな、と改めて感じさせられた今回の出来事でした。

でも、相変わらず「川に遊びに行こうよ」は、原稿を書いている今も、僕の頭から離れてくれません。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

3人のエンジニア (+AI)にマスタリング頼んでみた

価格帯の異なる3人のマスタリングエンジニアに同じ曲をマスタリングしてもらうという、面白い実験動画です。

3人の人間のマスタリングエンジニアに加えて、LANDRというAIにもマスタリングをしてもらい、それぞれの結果がどのように違うのかを考察しています。

ブラインドテストで実際に聴いてみてもらいたいのですが、先に僕の感想を言っておくと、BACDの順番で好みでした(サムネ画像と結果は違います)。この順番通りに価格が下がっていき、最後にAIのマスタリングが来るだろうと思っていたのですが、結果は大きく異なっていました。動画の後半で正解が出ているので、ぜひ実際にブラインドテストをして確かめてみてください。AIの精度がかなり高いことに驚かされます。

LANDRはAIマスタリングの老舗であり、定番マスタリングプラグインであるiZotope Ozoneよりも自然な仕上がりを実現できるため、安定して良い結果を出してくれます。

この結果から感じたのは、その辺の人間のマスタリングエンジニアに頼むくらいなら、AIに任せた方が良いのではないかということです。もちろん、自分の音楽の好みを理解してくれているマスタリングエンジニアがいれば、それが一番クオリティの高い音になるでしょう。ところがココナラやFiverrのようなサイトでマスタリングエンジニアを探すとなると、値段とクオリティは必ずしも比例せず、いいエンジニアに当たるかは運の要素が大きいと思います。

だからこそ、自分の大切な曲をエンジニアに頼む際は、値段ではなく「そのエンジニアがこれまでどんな音楽をマスタリングしてきたか」「そのサウンドが自分の好みに合っているか」という点を意識するのが重要になります。

そして、そうしたお気に入りのエンジニアがいない場合は、LANDRのようなAIを使うのが最も良い選択肢だと思いました。

AIマスタリング、恐るべし!

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。
  1. Neumann KH 805 II、KH 810 II、KH 870 II:新しいスタジオサブウーファーシリーズ

  2. Frequency Factory Dreamcatcher、夢のようなマルチエンジングラニュラーシンセサイザー

  3. このプロデューサーは、赤ちゃん向けの電子アルバムを制作し、「親子がマイクロレイブで絆を深められる」ようにした。

  4. Nothing Headphone (1)のレビュー:悪くはないが、確かに風変わり

  5. Daedelusと松井琢磨が、絵画のようなカラーホイールアルペジエーター「Tinge」について語る

  6. 本物を買うのはちょっと…?AlphaThetaのフラッグシップDJプレーヤーCDJ-3000Xをバーチャルリアリティで体験できます

  7. ラテン音楽の収益は急増しているが、アーティストは依然として利益を逃している

ブログ、note更新のお知らせ

🎧サービス・書籍のご紹介

<Splice楽曲完成メソッド>

5時間にわたる音楽制作の講座が完成いたしました。

この講座では、音楽理論や楽器の演奏からスタートする"従来の作曲法"とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決し、アイデアがない状態から1曲を完成させる実践的な技術を身に付けます。

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Chrome拡張>

Chrome上で再生される全ての音を「ガンマ波」に変調します。ガンマ波は、深い瞑想状態で現れる脳波であり、学習、記憶、注意力、意識の統合に関わるとされ、「脳を覚醒させる周波数」として注目されています。

日々の、集中力や思考力を高めるツールとしてご活用ください。

ついに誰もがアプリケーションを自作できる時代の到来です!これからアーティストは、自分の道具すら自分で作る時代になります。こちらはSpotify Webプレイヤーで再生中の曲に、タイムスタンプ付きのメモを取るための拡張機能。

無料ですので、ご自由にお使いください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.128

2025年9月26日発行

Blog: https://studio-okina.com/