週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.121

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

最近こんな記事を見つけました。

脳神経細胞は大人になると成長しなくなるという定説が、実は嘘だったかもしれないという話です。僕も30歳を過ぎてから、かなり頭が良くなっている気がするので、使えば脳は進化していくんだと思っています。

成長を止めず、自分のやりたいことを突き詰めていきましょう。そして音楽を作りましょう!

さて、今週は神戸京都と、久々に移動をしています。神戸は10年来の大学の友達に会いに行ったのですが、解散した後、ふらっと立ち寄ったバーで19歳の大学生がカウンターに立っていたので、就活、留学、音楽などの話をしていました。

19歳ともなると結構ジェネレーションギャップがあって、「EDM」という単語すらあまり聞いたことがないと知り、衝撃を受けましたが「最近どんな音楽を聴いているの?」と聞くと、「XG」と返ってきたので、あっという間に意気投合。大学生の音楽観や人生観について知ることができました。

びっくりしたのが、XGは「声が良い、音が良い」と言っていたこと。多分EDMも知らないくらいなので、めちゃくちゃ音楽好きというわけではないと思いますが、YOASOBIやAkasakiといったDTM的な軽い感じ、いかにもベッドルームで作りましたみたいな音ではなく、韓国やアメリカの人たち、トッププロで作り上げた音の違いが若い層にも伝わるんだということに、ちょっとびっくりしました。

あと、XGは練習生時代からのドキュメンタリーをYouTubeで公開しており、その大学生はドキュメンタリー映像を全て見ているほどの大ファンだそうです。

音楽そのものが良い、歌やダンスがずば抜けている、日本語・韓国語・英語が堪能というスペックの高さだけではなく、練習生時代からの物語、デビュー直前に才能のあるリーダーが辞めさせられるなどのドラマ性、ドキュメンタリー的な要素も、かなりこの人気を後押ししているんだなと感じました。

これまでストーリーやナラティブと言われ、物語性の大切さがビジネスにおいて語られてはきていましたが、誰でも本格的なクオリティーの作品が作れるAI時代、もはやストーリーを伝えることは「やったほうが良いこと」ではなく、「必ずやるべきこと」なのだと痛感しました。

やはり積極的に足で稼いで外に出て、生の声を得るのはとても大切だし、面白いなと感じさせられた今回の旅でした。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

こちらは、今年のフジロックにも出演した「フレッド・アゲイン」の音楽制作のヒントが詰まった動画です。

中でも参考にしたいのは、「ドローン」「コール&レスポンス」「オートメーション」の3つ。

まず「ドローン」とは、曲の中でずっと続く一つの音や和音のことを指します。イメージとしては、景色の背景にずっと流れている穏やかな音のようなものです。フレッドはこのドローンを使って、曲全体に美しい雰囲気や広がりを持たせています。やり方はとても簡単で、好きな音色を選び、リバーブを強くかけて、音を長く引っ張るだけ。(ここではSupermassiveという無料プラグインが使われています) たくさんの音を鳴らす必要はありません。むしろ、シンプルに少しだけ音を加えることで、ふんわりとしたアンビエントな空間が生まれます。普通のコード進行だと、曲全体の雰囲気や次に乗せるメロディ、ドラムのパターンなども決まりやすくなってしまいますが、ドローンなら曲の雰囲気を保ちつつ、自由に新しい音やリズムを足すことができるのです。

次に「コール&レスポンス」という考え方があります。これは、曲の中で“誰かが呼びかけて、それに応える”ようなやり取りを作るテクニックです。例えば、歌(ボーカル)が“コール(呼びかけ)”となり、その後にシンセや楽器のフレーズが“レスポンス(返事)”として続きます。こうすることで、曲の中に会話のような動きが生まれます。大切なのは、こうした装飾的な音は、すでにメインになる部分(歌やメロディ、ドラムなど)ができてから加えること。主役の音を引き立てるための“ちょっとしたひと工夫”だと思っておくとわかりやすいです。

最後は「オートメーション」です。これは、音のボリュームやエフェクトを曲の中で少しずつ変化させるテクニックです。たとえば、サビの後半で歌声を細かく刻んで“連続で繰り返す感じ”にしたり、盛り上がる場面でだんだん音が高くなるようにしたりします。イコライザー(EQ)を使って、徐々に高音を増やしていくことで、自然に盛り上がる展開を作ることもあります。さらに、曲全体の“ノリ”や“動き”を出すために、「Shaper Box」というエフェクトを使って音に波をつけたりもします。これらの細かい変化が、曲に命を吹き込むポイントになっています。

こうした「ドローン」「コール&レスポンス」「オートメーション」の3つのテクニックを組み合わせることで、フレッド・アゲインの音楽は深みや感情が増し、聴く人の心を強く引きつけているのです。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。
  1. Ableton Live 12 Suiteのクロスグレード版が49,800円で販売中…… 新規購入の約41%OFF、完全数量限定

  2. Spitfire AudioのライブラリがSpliceのレンタル購入プラットフォームに登場し、ユーザーは大喜びしている。

  3. Five Gからオリジナルのモジュラーシンセ用フレームが登場…… ラックマウント用の耳も付属、販売価格9,800円

  4. Kali Audio Highland Park HP-1:DSP搭載ANCヘッドフォン

  5. Ableton Liveの改良されたオートフィルターでトラックに命を吹き込む6つの方法

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  7. ElevenLabsは大手レーベルとの契約を結んでいないことを認めたが、「彼らのデータは使用していない」

🎧サービス・書籍のご紹介

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.121

2025年8月8日発行

Blog: https://studio-okina.com/