週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.116

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. お知らせ

  2. 近況

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. 今週の音楽ニュース

  5. サービス・書籍のご紹介

📢お知らせ

Splice音楽制作講座の「選抜モニター版」にご応募いただき、ありがとうございました。

僕の想像を遥かに超える多くの方にご応募いただき、感謝しかないです。本当にありがとうございます!

ここ数週間ほど、Waves発のAIサンプル生成ツール「Illugen」が話題ですが、こういったAIで本格的な制作を行うには、精度的にもまだ時間がかかりそうです。

そして何より、AIでサンプルを生成したとしても、そのサンプルをどう組み立て、どのようにアレンジすればいいのかという、

「プロデュース力」

「リミックス力」

「アレンジ力」

などは依然として重要なスキルであり、つまり今、

「Splice音楽制作術をマスターし、クオリティの高い楽曲を作れるようになると同時に、AI時代の作曲の土台も築いておこう!」

というのが、今回のSplice音楽制作講座の重要なテーマの一つでもあります。

そんな、これからの時代にもマッチした、多くの方々に役立つ音楽制作講座を作れるよう、貴重なご意見をいただけそうな方々にメールを送らせていただきます。

2回目の募集を行うかは未定ですが、今回の選抜テスター版による講座のアップデートが完了次第、またこちらでご連絡したいと思います。

今回参加していただける方、本当にありがとうございます!😭

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先月Suno AIがアップデートされ、DAWのような見た目になったことで、

「あ、Ableton Liveなどの、既存DAWの時代が終わるな…」

と思っていたのですが、今週さっそく、SunoがAIを搭載したDAW「WavTool」を買収するニュースが出ていました。Sunoのスピード感には驚かされます。

まあ自分たちで一から作るより、買収して変えていく方が速いですからね。

WavToolというのは、内部でChatGPTを使った言語ベースの作曲ができることで話題になったDAWですが、正直、使い勝手があまり良くなかったので買収されてよかったと思います。

勢いのあるSunoのチームが、大きく変革してくれると嬉しいですね。

「あと数年もしたら、AIが入ってないDAWなんてありえないでしょ」

という時代になっていると思います。

「スマホといえばブラックベリーでしょ」という時代から一気にiPhoneにシフトしたように、DAW業界にもとんでもない変化が訪れるかもしれません。

その変化の大きさと衝撃をリアルにイメージできるよう、まだ観れていなかった映画「ブラックベリー」を、今週末にでも観てみようかと思います。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

今週も前回に引き続き、XG「WOKE UP」のミキシング・マスタリングを担当したDavid Kimの動画をご紹介します。

「歯が痛い」とか言って、口に指を突っ込む汚いおっさんの絵で始まる動画ですが、ミキシングの腕は本物です。

この動画では、Jay Parkの曲のボーカルをどのようにコンプレッサーを使って処理しているかが解説されています。

ボーカルには、主に3つのコンプレッサーが使われており、頭からFabFilter Pro-C、McDSP MC-404、そしてMcDSP Channel Gが挿さっています。それぞれでおよそ -3〜-6 dB のゲインリダクションがかかっており、普段あまりボーカルを積極的に処理しない僕にとっては、ボーカルには複数段に分けて、思った以上にしっかりとコンプレッションをかけるのだなと感じました。

最初のコンプレッサーは基本的な圧縮を担当し、2段目のマルチバンドコンプレッサーでは中低域をメインにコンプレッションがかけられています。これはコンプレッションの役割だけでなく、帯域バランスを整えるという意味で、ある種、EQ的な役割も果たしているようです。最後のコンプレッサーは、有名なSSLをモデリングしたもので、全体を軽くまとめる、いわゆる「グルー(Glue)」的な効果を狙って使われています。

このように、

「コンプレッション」

「周波数バランスの調整」

「グルー」

の3つの目的で構成されているボーカルコンプレッションチェーン。普段からボーカルを処理している方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。
  1. Expressive EのSoliste MPE弦楽器は、「指で実際に弓を弾くように物理的にモデル化されています」

  2. AIR MusicのAIR Stutter Rhythmic FXプラグインはBlack Octopus Soundから無料で入手できます。

  3. 書籍『NHKの電子音楽』が刊行…… 日本で初めて電子音楽スタジオが設置されたNHKを中心に、我が国の電子音楽の歩みに迫った1冊

  4. 独立系アーティストが「権利を最も踏みにじられた人々」のためにSunoとUdioを相手取り集団訴訟を起こす

  5. SpotifyのHiFiロスレスストリーミングは本当に実現するのか?リークされたコードによると実現か

  6. SamplesonのTactileは、マウスとトラックパッドを「映画のような」ソフトウェア楽器に変えます

  7. Roland、デジタルハンドパンパーカッション楽器「Mood Pan」を発表

🎧サービス・書籍のご紹介

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.116

2025年7月4日発行

Blog: https://studio-okina.com/