週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.113

このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せるような仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. お知らせ

  2. 近況

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. 今週の音楽ニュース

  5. サービス・書籍のご紹介

📢お知らせ

製品リリースのお知らせです。

今年に入ってから、Spliceを使った音楽制作講座を作っているのですが、8割ほど完成し、いよいよ皆さんにお披露目できる段階まで来ました。

ですが、せっかくなら、皆さんに「本当に必要とされる講座」に仕上げたいと思っています。

そこでここから、長年、僕のブログやニュースレターを読んでいただいている皆さんの声を取り入れ、一緒に最高の講座をつくりあげるための「プリローンチ企画」を行うことにしました!

Spliceは、僕にとって非常に思い入れのあるツールです。なかなか思うように音楽が作れない状況で何年も悩み続け、ようやく音楽の仕事を取れるようになった時に一番助けられたのが、このSpliceでした。

この講座では、20歳を過ぎてから作曲を始めた僕が、難しい音楽理論を知らなくても、「曲が降ってくる」ようなセンスがなくても、劇場映画や企業に音楽提供できるようになったその作曲方法を、アイデア出しから作曲の進め方、構成の組み立て方、Spliceをフル活用するテクニック、さらにはミキシングやマスタリングの基礎、リリースの流れまで一貫してまとめています。

初心者の方でも、音楽を作れるようになるためのノウハウを凝縮しており、さらには作曲の幅を広げて、活躍の場を増やしたい経験者にもおすすめできる内容となっています。

まずはプリローンチとして数名の方に実際に受講していただき、フィードバックをいただきたいと考えています。その代わり、プリローンチ期間中は公式リリースよりもかなりお得な価格でご提供する予定です。

もしかすると「フィードバックをするなら無料で教えてくれてもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、少額でもしっかりお支払いいただくことで、僕自身もより良い講座を作る覚悟を持てますし、受講してくださる方にも本気で音楽制作に取り組んでほしいという思いがあります。

むしろプリローンチの受講料は、その内容や価値を考えると、正式リリース時よりも高くてもいいくらいだと思っています。なぜなら、プリローンチで受講してくださった方は、講座を見て「もっとこういう内容が知りたい」といった要望を直接フィードバックでき、自分が知りたい内容が講座に反映されるからです。

限定価格で誰よりも早く受講できる上に、自分の意見が教材に反映されるというのは、この期間だけの特別なチャンスです。

これをどういうふうに進めていくか近々、このニュースレターで発信していきます。「曲が完成しない」「自分には無理かも」と感じていた過去の僕のような方にこそ、ぜひ受講してほしいと思っています。もしご興味がある方は応募していただけると嬉しいです。

近々の発表をご期待ください!

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

Logic Proがアップデートされて、すごく便利になりました。

Ableton Liveには、いまだにステム分離機能すら搭載されていませんが、こういった部分では資本力のあるAppleがやはり強いですね。AI時代においては、資本力のある企業が開発しているかどうか、という観点からDAWを選ぶべきなのかもしれません。

さて、ステム分離には新たにギターとピアノのサウンドをきれいに分離する機能が追加されましたが、それ以外にも大きなアップデートとして「Flashback Capture」があります。

これはすでに内蔵されているDAWもありますが、録音ボタンを押していなくても、最後に弾いたMIDIノートをDAW側が記憶しており、ボタン一つでMIDI演奏を呼び出すことが可能になります。

周辺機能の豊富さやプラグインのバリエーションに関しては、やはり今僕がメインとして使っているAbleton Liveにはかないませんが、AIとDAWの組み合わせに関して、最も進化が早そうなのはLogic Proでしょうね。

今はステム分離機能くらいしか使っていませんが、今後も少しずつLogic Proを触っていって、「AI×DAW」の進化の過程を見ていきたいと思います。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

WAVESから、なかなかインパクトのあるAI製品が登場しました。

これはAIによってサウンドを生成するツールなのですが、こういったものは以前からちらほら登場していたものの、精度的にあまり実用的とは言えず、多くは実験的なツールだったと思います。

ところが、WAVESがこのように正式なツールとしてリリースしたということは、それなりに完成度が高いのではないかと思い試してみたところ、やはりなかなかの完成度で、使い方によっては普段の制作でも十分に活用できそうだと感じました。

このツールは音楽だけでなく、フォーリー用途にも使えます。たとえば動画制作をしている人がバックグラウンドノイズを追加したいとき、子どもたちの遊び声や水の音、森の音などを生成して挿入することも可能です。

これは既存のサンプルライブラリから取り出した音ではなく、AIが一から合成したものなので、他の人と同じ音を使ってしまう心配もなく、オリジナリティを保ったまま、AIを使っても独自性のある作品を作れるという大きな可能性を感じます。

生成音の精度を確かめるために、少し難しそうなプロンプトを試してみました。

2018年頃にリリースし、Spotifyで80万回近く再生されている曲があるのですが、その曲ではアヤワスカの儀式でシャーマンが歌う「イカロ」という、少し変わった歌をサンプリングしました。

当時はYouTubeからサンプリングしたのですが、今だとAIでも作れるのではないかと思い、「Icaro sung by shaman」と入力してみたところ、「おっ、使えそう」と思わせてくれる良い感じのサウンドが生成されました。

ちょっとノイズっぽい音ですが、可能性を感じませんか?

さて、AI作曲は大きく2つの方向に分かれると思っていて、1つはSUNO AIのように、プロンプト1つで簡単にAI作曲する方法。これはプロンプトを工夫することである程度の微調整は可能ですが、本当の意味で納得のいくものを作るのは難しいでしょう。でも音楽を作ったことのない人、気軽に音楽を作りたい人にとってはすごく便利で、商業的、軽い娯楽目的で使われると思います。

もう1つは、今回登場したWaves「ILLUGEN」のようなツールを駆使して、作曲の各ステージでAIツールを使い分け、作曲者の理想に近づけていく方法です。こちらはプロユース、アーティスト向けであり、著書『AI時代の作曲術』でも、作曲の各ステージにおけるさまざまなAIツールの活用法を紹介しました。

Suno AIを使った作曲の方が需要が大きいので、おそらく進化のスピードはこちらの方が速く、ILLUGENのようなプロユース、アーティスト向けのAIは、かなり遅れて進化してくるでしょう。

まだ時期尚早な感じはありますが、そのうち作曲家やアーティストがこういったAIツールを駆使して作曲していくようになるのは確実です。また精度の高い面白いものが出てきたらご紹介していきたいと思います。

📰 今週の音楽ニュース

毎週、世界中から厳選した音楽ニュースをお届けします。

🎧サービス・書籍のご紹介

<著書>

作曲AIに関する書籍を出版しました。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。Kindle Unlimitedで読めるので、気になった方はチェックしてみてください。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.113

2025年6月13日発行

Blog: https://studio-okina.com/