週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.11

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の…

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今週は、歌舞伎町にできた新しいクラブZero Tokyoに行ってきました。昼間はライブハウス(Zepp Toyko)、夜はクラブ(Zero Tokyo)という、表参道のVentのような感じで運営されています。

初めて行ったのですが、さすが東急グループが作っているだけあって、内装がとんでもなく豪華なつくりになっています。箱の見た目や照明・VJの感じは、いわゆるEDM箱っぽいですが、実際はヒップホップやハウス/テクノのイベントが多いようで、夜の年齢層は若干高めなのかなと感じました。

ちなみに、その日のDJは、今はなきResident AdviserのDJランキングで4年連続世界一だったドイツのDJ「Dixon」。Dixonと彼のレーベル(Innervisions)が大好きな僕は、久々に楽しい夜を過ごすことができました。

歌舞伎町のど真ん中なだけあって、Dixonのフロアに、歌舞伎町の夜の人たちが大勢がいるのは、とても新鮮でしたね。

スピーカーはカナダのAdamsonのラインアレイで、ボリューム感は文句なしの115dB。低域から高域まで綺麗に伸びていました。フロアの設計上、場所によって音のばらつきはありますが、フロアの真ん中後方あたりなら、低音がブーミーになりすぎず、心地よいバランスで聴けると思います。

Adamsonのラインアレイは、ウーファー無しでも40Hzくらいまで出るらしく、サブウーファーとのバランスやクロスオーバーの具合の調整が難しそうでした。分離の良いスーパークリアな低音というわけではありませんが、バンドライブなら十分、DJものでも十分楽しめると思います。

DJミキサーはなんだったのかわかりませんが、Dixonなので、おそらくIsonoe「ISO420」。スピーカーから飛び出すような音と、超低ノイズが特徴のミキサーです。

と、メインフロアのことばかりお話ししていますが、他にもフロアがいくつかあって、それぞれ全然違うジャンルの音楽が流れていました。

歌舞伎町のクラブなので、連日、ディープな国内外のDJが集まるといった感じではないですが、日によってはかなりハウス・テクノ勢も楽しめるイベントがあるので、また気になるイベントがあれば訪れたいと思います。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. will.i.am expresses concern over AI: “I own the rights to the songs I wrote, but I don’t own the rights to my face or voice?”→これまで積極的にテクノロジーを取り入れてきた、アーティストでプロデューサーのwill.i.amですが、音楽におけるAIに懸念を示し、「自分の曲の権利は保護されるのに、自分の顔や声は保護されない」ことに疑問視しています。確かに、自分の声や顔に権利がない今の状況だと、今後、規制が強化されると考えるのが妥当でしょうね。

  2. Montana vs. TikTok: State’s $10,00-a-Day Fine Stands as Attorney General Digs In→モンタナ州は、アメリカで初めてTikTokの使用を州として禁止しました。過去に、TikTokがユーザーを監視していた問題により、アメリカ全体でTikTok禁止の流れが出てきているので、今後、アーティスト活動においてTikTokをメインSNSにしようと考えている人や、TikTokで収益を上げようとしている人にとっては考えものです。

  3. Twitch Bumps Price of Ad-Free Viewing Subscription—Is Spotify Next?→Twitchがサブスク料金の値上げを発表したことで、Spotifyを含む音楽サブスクリプションサービスにも、この流れが押し寄せる可能性があります。音楽系サブスクが値上がりするとかなり辛いのですが、VPNを使って、価格の安い国から契約すれば、なんてことはありません。

  4. We Asked 1,500 Music Producers How They Use AI in Music Production→AIについての様々な質問を、1500人の音楽プロデューサーに投げかけています。レポートによると、AI作曲に否定的な人は少なく、著作権やオリジナリティが失われてしまうことへの懸念はあるものの、将来、AIが仕事を奪うというよりは、自分たちの仕事を助けてくれる存在になるであろう、という楽観的な意見が意外と多いのがおもしろかったです。

  5. SSL launch UF1 DAW Control Centre→今週SSLから、UC1, FU8に次ぐ新しいコントローラー「UF1」がリリースしました。SSL純正プラグインだけでなく、あらゆるDAWに対応しているのが特徴で、これ一台でフェーダーからパンニングまで様々な操作が可能。SSLはフェーダーの感じが安っぽいのであまり好きではありませんが、こういうのは新しく販売されると欲しくなっちゃいますね。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

DAACIはイギリスのスタートアップ企業で、AI作曲ソフトを開発する会社です。

すでに、AIVA、Amber、Ecrettなど、私たちが使えるAI作曲ツールが市場にたくさん出ていますが、DAACIもこれらの一部と考えて良いでしょう。

まだ、一般に利用できるサービスではないのですが、DAACIチームが、AIによって作曲したこちらの音楽を聴いてみると、かなり可能性を感じさせてくれます。

これはコード進行、ストラクチャー、オーケストレーション、リズムなどが、DAACIによって作られています。

DAACIは、主にメタバースやゲームの世界に焦点を合わせているようで、おそらくメタバース内でリアルタイムに変化する情景に合わせた音楽が、DAACIによって自動生成されたり、多くのゲーム音楽がDAACIで作られることになるのでしょう。

他にも、一般的な音楽制作や映画音楽にも利用できるようになるとのことで、作曲家が使ったり、YouTuberが自分の動画の音楽を自分で作るといったことも、こういったAI作曲ツールによって実現されていくのだと思います。

将来的には、DAWなどで使えるプラグインとして商用化、クラウド上のAIエンジンにアクセスして作曲できるようになります。

最近、いくつかの企業を買収して規模を拡大させており、一般ユーザーが利用できるようになる日が楽しみです。

最新情報は、DAACIのホームページから登録できるニュースレターでキャッチアップできますので、気になった方は登録してみてください。

  1. 今週の…

ここでは毎週違ったテーマ、例えば、日本や世界各地で録りためたフィールドレコーディング、おすすめの1曲、音楽に関する映画、などをお届けします。皆さんの音楽制作の刺激になるような、おもしろいコンテンツを毎週ご用意していきたいと思います。

今週は、どうしてもご紹介したい、この2人のセッションの動画をお届けします。

ガンクドラムとダルシマー。どちらも聞き慣れない楽器の名前ですが、ガンクドラムは三重の職人が作っているハンドパンのような楽器、ダルシマーはインドの弦楽器です。

初めて、この動画を観た時はぶっ飛びましたね。

特に、ガンクドラムの音色が素晴らしく、空気の揺れ方が他の楽器とは全然違いました。思わず、この動画に登場しているKenji Azumaさんに連絡し、ガンクドラムを楽器屋に見にいったことを覚えています。

この手の楽器は、本当に色々なものがありますが、模造品の安いものは、あまり買わない方が良いです。

こちらは三重の職人さんが作っているので、制作に数ヶ月かかってしまうのですが、それでもこういった本物の楽器を手にした方が、演奏する喜びも大きいでしょう。

2年以上前に書いた記事ですが、こちらでも紹介しています。

今は、いくつかのバリエーションがあって、通常のガンクドラムは大きくて重いので、UFOみたいな小さい方をおすすめします。

もちろん、大きさによっても音色は変わるので、実際に聴いて選んでみると良いでしょう。

僕はハンドパンの音色も大好きで、家に置いていた時期もあるのですが、ガンクドラムは、ハンドパンとはまた違った音がします。ハンドパンはリズミカルに演奏したり、アンビエントのような音楽と合わせてゆったり演奏したりと、演奏のバリエーションが豊富ですが、ガンクドラムは一音一音の響きが長いので、どちらかといえば、ゆったりした楽曲に合わせたり、瞑想のセッションで演奏するような用途に向いています。

ちなみに僕は、演奏するわけでもなく、家でたまに鳴らして自身をヒーリングするツールとして使っています。

気になった人は、ぜひ楽器屋に足を運んでみてください。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🎬記事: Rodriguez Jr has found freedom after 25 years as a producer: “The most important thing is doing what you really like”テクノロジー好きで知られるプロデューサー/ライブアーティストRodriguez Jr のインタビュー記事です。「私はただ自分の好きなことをするのが好きで、好きなことをすればするほど、より多くの人がそれを好きになってくれるようです。」「マテューは音楽技術の遥か彼方を探求してきました。例えば、前作『Bliss』でベルリンのImmersive LabのEric HorstmannとともにDolby Atmosの限界を試した後、没入型環境では、ハウストラックのキックドラムは、ミックスの一部が部屋の一番後ろにあるときに最もよく響くことを知りました。」と金言が満載の一本です。

🎧DJ Mix: Dixon | Dj Set - The Best Electronic Music of Innervisions →冒頭でDixonのお話しをしたので、Dixonのミックスをどうぞ。

📺YouTube: How (Not) To Test Your Plugin →最近、Plugin Doctorでプラグインをテストして使う人が増えてきた印象です。これは、自分の持っているプラグインがどのように機能するのかを可視化できるツールですが、このYouTube動画では、プラグインをテストする方法が丁寧に解説されています。ちなみに、この動画のスポンサーはFabfilterですが、最近、Kirchhoffなどの高性能EQが出てきて、Fabfilterが焦っている様子が想像できます。

🎵Playlist: My summer Spotify playlist→日本各地で梅雨入りが発表されており、梅雨が明ければいよいよ夏がやってきます!ということで、ひと足さきに夏のプレイリストをご紹介。こちら、選曲はなんとビルゲイツです。たまには、プロのキュレーターやAIが選んだプレイリストではなく、世界一の富豪であり、知識人であるビルゲイツの選曲を聴いてみるのはいかがでしょう。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.11

2023年6月2日発行

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