週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.10

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の…

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先日、坂本龍一が音響監修を手がけた、新宿の109シネマズに行ってきました。

今年の4月14日に開業した、東急歌舞伎町タワー9F&10Fに位置するこの映画館は、音が素晴らしいのはもちろん、「109シネマズプレミアム新宿」という名前だけあって、何もかもがスペシャルでした。

エントランスを入ると、高級ホテルのように美しいラウンジが広がっており、そこで上映までの待ち時間を過ごします。

ラウンジでは、ドリンク飲み放題、ポップコーン食べ放題というVIPな対応。お酒を頼めるバー(有料)もあって、とにかく至れり尽くせり。坂本龍一が作曲したBGMが、ラウンジをさらに優雅な空間にします。

ちなみに、ポップコーンは、今まで食べた映画館のポップコーンの中で一番美味しかったですね。

肝心の映画館の音ですが、まず感動したのは、吸音にかなり力を入れていたこと。

シアターに入った瞬間、静けさが漂い、他の映画館より音に力を入れているのがすぐにわかります。

Dolby Atmosでの上映でしたが、実際に映画が始まると、天井スピーカーのリアまでしっかり聴こえたので、驚きました。

いくつか、楽器屋やメーカーの7.1.4ch Dolby Atmosシステムを聞いたことがありますが、リアや天井のスピーカーがしっかり聴こえないので、「Dolby Atmosってこんなもんか…」というのが正直な感想だったのですが、「精密に整えられたシステムではこんなにも綺麗に360°からの音が楽しめるのか」と、Dolby Atmosの凄さを改めて感じることができました。

スピーカーは坂本龍一さん監修なので、ムジークなのかなと思いましたが、見たことない形のスピーカーがぶら下がっていたので、正確にはわかりませんでした。

映画体験で言うと、僕の人生の中で2番目くらいに良かったです。

ちなみに1番はTHXですが、これは日本に数カ所しかない、元ルーカスフィルムの音響部門が認定しているシアターで、埼玉でこれを体験した時は、かなりの驚きがありました。

音の臨場感や迫力ならTHX、音の定位や包まれている感なら109シネマズ、といった感じですね。

映画好き、音好きなら、ぜひこの2つは体感してみてください。

普通の映画館で、映画が観れなくなるほどに感動しますよ。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. How to unlock the power of emotional chord progressions→コード進行ならAIでも書けますが、シーンに応じた的確なコード進行を選べるほど、まだAIは進化していません。こちらの記事では、実際の楽曲とともにコード進行と、そのコード進行が持つムードを解説してくれています。エモーショナルな楽曲を作りたい人、映画のシーンに合わせた楽曲を作りたい人におすすめの記事。

  2. Global dance music industry grew by 34% last year [Mark Mulligan, MIDiA]→パンデミックで減少してしまったダンスミュージックの成長が、2022年にはパンデミック前を凌ぐほどの急激な成長を見せています。コロナで押さえつけられていた欲求が爆発したのでしょうか。この成長は一過性の可能性がありますが、音楽に携わる僕たちとしては、このニュースは嬉しい限りですね。成長の内訳としては、「録音された音楽: 11%増の15億ドル、出版: 22%増の4億ドル、音楽ハードウェア, ソフトウェア, サウンド, サービス: 4%増の28億ドル、ライブ: 78%増の45億ドル」となっています。

  3. Mini Moog Factory→MOOGの名器、Model Dの歴史を学べるサイトがオープン。「最近、Moogのシンセ気になってるんだよな…」という方は、ぜひこちらのサイトで歴史や、著名アーティストの記事を読んでみてはいかがでしょう。

  4. Musicians Are Already Using AI More Often Than We Think→AIを使ったボーカルのディープフェイクが話題です。画像生成ならMidjourneyやDALL-Eなどが有名ですが、音楽ではMubertやJukeboxなど話題性のあるツールはいくつかあるものの、実用性に欠けています。ところが、最近はフランク・オーシャンの声をAIで模倣し、その曲を50万円で販売したり、ドレイクの声を使った楽曲がオンラインで公開され、著作権問題が勃発したりと、AIの知識がある人なら、本物と聞き分けられないくらいの楽曲を作れるまでになっています。この記事の著者は、Spliceなどのサンプリング文化が勃発したのと同じくらいのインパクトが、ボーカルディープフェイクにはあると言っています。

  5. UMG partners with Endel “to create AI-powered, artist-driven” music for wellness→ユニバーサルミュージックが、AIによってヒーリング音楽を自動生成するアプリを販売する企業Endelと提携。アンビエントやドローンのようなジャンルの音楽は、よほど個性的でない限り、真っ先にAIに侵食されてしまうでしょうね。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピューターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

こちらは簡単に言うと「リバーブマッチングツール」で、あらゆるリバーブのかかった音からリバーブ成分だけを抜き出すためのプラグイン。

例えば、すでに無くなってしまった建物や、遠すぎてすぐには行けない場所で収録された音がある場合、その場所の響きを後から再現できるので、ちょっとしたリテイクのために、わざわざ遠くに足を運ぶ必要がなくなったりします。

音楽制作に活用するなら、例えば「ドラムをレコーディングしにスタジオに行ったけど、後からパーカッションを足したくなった」という時、ドラムとパーカッションの音の響きが微妙に違うと、ミキシングの時にうまく馴染まなかったりするのですが、最適なリバーブを延々と探すよりも、前にスタジオで録音したドラムの音からリバーブ成分を取り除き、自宅で録音したパーカッションに適用する、といった方法で、リテイクした楽器の馴染みをよくすることができます。

もっと精度が上がれば、曲中のボーカルにだけ使われているリバーブを再現し、自分の声に使う、といったことも可能になるはず。今後、注目の技術であることは間違いないでしょう。

今は、どちらかというと、MAやフォーリーに携わっている人が使うツールだと思いますので、映画関係のお仕事をされている方は、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

今週の…

ここでは毎週違ったテーマ、例えば、日本や世界各地で録りためたフィールドレコーディング、おすすめの1曲、音楽に関する映画、などをお届けします。皆さんの音楽制作の刺激になるような、おもしろいコンテンツを毎週ご用意していきたいと思います。

ロバート・モンローによって研究開発された、バイノーラル音源を「ヘミシンク」と言います。

ヘミシンクを聴いている最中、脳は右脳左脳ともに活性化していて、リラックス効果から知覚の拡大や意識の拡張まで、さまざまな効果があると言われています。

ちょっと怪しい感じがしますが、こちらの本では、ヘミシンクによって前世体験をした人々の体験談がまとめられています。

より音楽の世界に入り込むため、脳波をコントロールする方法を調べている時に見つけたのですが、深掘りしてみるとかなり面白そう。

前世体験まではできなくても、何かしらの特別な体験はできるかもしれません。

私たち人は、通常20ヘルツ以上の音を聞いています。左右の耳から、可聴領域の異なる周波数の音を聞く事で、脳内の器官、脳幹で左右の周波数の差に相当する信号が発生します。例えば右から100ヘルツ、左から104ヘルツの音を聞くと、その差にあたる4ヘルツの信号が発生します。その周波数によって脳波の状態が変化します。この4ヘルツという周波数は、深いリラックス状態の脳波の状態です。人は4ヘルツの音を単独で聞く事はできませんが、このヘミシンクの方法を用いることで、様々な脳波の状態を作り出すことが出来るのです。

参照: ヘミシンク®とは

この説明だけでは、いまひとつよくわかりませんが、音を聴くだけで脳が活性化し、変性意識体験ができるなら最高ですよね。

ちなみに、ロバートモンロー博士は、ヘミシンクによって誘発される意識にそれぞれ名前をつけていて、フォーカス49まで行くと「宇宙を超えた意識の領域」という、訳のわからない意識にまで辿り着けるそう。

そのうち、アメリカのモンロー研究所に泊まり込みで行ってみたい気持ちはありますが、音源はSpotifyなどでも聴けるので、そちらで自分なりに意識の変化を試してみたいと思います。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。その際は、このQ&Aコーナーにも貼らせていただきますのでご了承ください。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

🪑対談: 【武田双雲のポジティブ・ネガティブ道】 - 音楽制作のアイデア出しや、集中力に関係しそうなお話だったのでご紹介します。書道家、武田双雲さんの実践する丁寧道には、音楽制作に役立つだけでなく、人生を豊かに生きるコツが詰まっていると感じました。早速、実践していますが、なかなか難しい… でも、効果は感じつつあります。

🔌お店: アポロ電子 - 秋葉原のアポロ電子では、音を聞いてから真空管を購入できます。最近、真空管アンプ自作キットを購入したので、無事完成すれば、こちらのお店に遊びに行こうと考えているのですが、電子工作初心者の僕には、自作キットは難しすぎました。果たして今年中に遊びに行けるのでしょうか・・・

🖥️プラグイン: WHY buy a MAAG EQ2 after watching what the KIRCHHOFF EQ can do? .. no joke ..THEY MEAN BUSINESS!! - Maag EQ2やEQ4を購入した方に。最近話題のKirchhoff EQには、Maag EQをほぼ完璧に再現するフィルターが組み込まれています。Kirchhoffがあれば、あらゆるアナログエミュレート系EQが不要になる可能性があるので、高性能EQプラグインの導入を考えている人は、ぜひKirchhoffもチェックしておきましょう。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.10

2023年5月26日発行

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