週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.1

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の一曲

  5. 質問コーナー

  6. Okina’s Picks

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

ここ数日は、性能が飛躍的に向上したと話題のChatGPT(GPT-4)を使って遊んでいます。

Twitterにも投稿しましたが、以前のバージョンでは読み取れなかった文脈が、新バージョンでは読み取れるようになり、飛躍的に進化しているのがわかります。

AIの進化はますます加速していきそうですが、これは音楽家にとって追い風になると感じています。

いろんな場所で「AIに仕事を奪われる論」が盛んに行われていますが、AIというのは今までになかった新しいものを生み出すというより、「業務(雑務)を効率化・高速化する存在」「人間のクリエイティビティを加速させる存在」です。

言ってしまえば、AIは「めちゃくちゃ有能なアシスタント」に過ぎないのです。

つまり、僕ら音楽制作者がやるべきは、

このAI化の波に乗り、音楽制作のプロセスを効率化して、よりクリエイティブな領域に意識を向け、時間を注ぐことです。

例えば、

  • Mubertで生成した音楽からインスピレーションを受けて、新たな楽曲を生み出す

  • ミキシングやマスタリングはOzoneに任せ、その時間を新たな曲のアイデアを生み出すために使う

こんな感じでAIをうまく活用すれば、クリエイティビティを加速させることができるでしょう。

つまるところ、人間に残された仕事は、「新しいことを生み出す」「芸術性を極限まで高める」というところ以外にないと思います。

音楽領域におけるAIの活用について、より多く知りたい方は、最近公開されたこちらの記事が参考になります。

ここら辺の技術は、僕の仕事がら、いち早く実践に取り入れてフィードバックすることができるので、メルマガやブログで随時お伝えしていければと思います。

  1. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. Union Audio, MasterSounds Valve MK2 Mixers Debut→Model 1の生みの親であるAndy Rigby-Jones率いる「Union Audio」が、最近新製品をいくつもリリースしています。こちらはイギリスのMasterSoundsとコラボして作り上げられたロータリーDJミキサー。今まで聴いたロータリーで一番良かったのはIsonoe「ISO420」ですが、Union Audioも相当音が良さそうなので気になりますね。どこかのクラブで導入されたら、ぜひ聴きに行ってみたいです。

  2. The magic of Eurorack and ChatGPT→ChatGPTを使ってユーロラックのパッチングを学ぶ方法が書かれた記事です。僕もユーロラックを持っていますが、何せ各モジュールを1から学んでいく必要があるので、とんでもなく大変です。もう挫折して、完全にインテリアと化しているのですが、ChatGPTに自分の持っているモジュールを打ち込めば、パッチングの例を示してくれるようなので、これを機に、またユーロラックを触ってみようかなと思いました。

  3. Beatport Launches ‘Beatport.io’ — New Web3 Hub for Electronic Music→ビートポートがWeb3業界に進出し、アーティストとファンの繋がりを強化するためのプラットフォームを発表しました。Web3やNFTは、AIの話題に隠れ気味になっている今日ですが、じわじわと確実に僕らの生活の一部となるでしょう。

  4. New App, Pixel Music, Lets You Create Musical Sequences From Photographs→画像からシーケンスを生成できるアプリがリリースされました。正直、あまり魅力的ではありませんが、発想が面白い!今後はAIの登場によって、こういったアプリが誰でも簡単に作れるようになるので、ワクワクするような新製品が増えていくことが予想されますね。

  5. AI-powered tool Auto-Instrumental from Chordal and AudioShake creates on-demand instrumentals→楽曲からボーカルを分離する機能は、DJソフト「Djay」などにも搭載されていますが、この分離技術で業界をリードするChrdalとAudioShakeの2社がコラボして、新たなAIによるインスト分離サービスを立ち上げました。今後は、こういったツールを使って、より手軽にビートなどを分離し、サンプリングすることができるようになるでしょう。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

いま気になっているプラグインに、DDMF「GrandEQ」があります。

DDMFは「PluginDoctor」という、プラグインの特性を解析する有名なソフトを開発しているメーカー。

プラグインごとの周波数特性、歪み、コンプレッション特性などを測るためのツールで、PluginDoctorを使ってプラグインレビューを書いている方もよく見かけますね。

このプラグインはEQですが、他のメーカーが作るEQとは一味違います。

PluginDoctorを使えば「デジタルアーティファクト」といって、アナログ機材では発生しない、デジタル機材特有の歪みを測ることができるのですが、DDMFはこの歪みを最小限に抑え、アナログ機材に限りなく近いEQを作りました。

最近は、この歪みを抑えるための「オーバーサンプリング」という機能がついたEQやコンプもよく見かけますが、デジタルの歪みが少ないと、とてもクリーンで自然なサウンドが得られます。

製品やメーカーごとに、この精度も違いますが、DDMFの集大成というほどのEQなので、かなり期待が持てますね。

  1. 今週の一曲

ここでは、おすすめの楽曲を取り上げてその素晴らしさをお伝えします。

今週取り上げるのは、Rhyeのアルバム「Home」から「Come In Closer」。

Rhyeの美しい歌声、厚めのキック、柔らかいLo-Fiなドラム、図太いベース、細部までこだわったミキシングなどの魅力がたっぷり詰まっていて、普段からリファレンスとしても使っている曲です。

注目すべきは、噛めば噛むほど味が出る、絶妙なレコーディング・ミキシング技術。

「ピアノは勝ち誇ったようなサウンドにしたくないので必ずミュートにする」「ドラムに癒されるような曲にしたいので優しく、ただし大きなスティックで叩く」といったレコーディングの際のこだわりがあったり、よくよく聴くと独特なパンニングで音響効果を演出していることにも気づきます。

こちらのインタビューに詳しいレコーディングの様子が書かれていますが、こういったアーティストのこだわりを知ることで、音楽を聴いた時により深い世界観に入っていくことができますね。

  1. 質問コーナー

みなさんからのご質問受け付けています。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。その際は、このQ&Aコーナーにも貼らせていただきますのでご了承ください。

  1. Okina’s Picks

最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。

📖記事: What are polyrhythms? How to use them in your music - ポリリズムの作り方がステップバイステップで書かれています。単純なビートに飽きてきた方におすすめ。

🖥️YouTube: Discreet Music, Original Speed (Brian Eno Synth Deconstruction) - Arturiaのソフトシンセを使って、ブライアン・イーノの音を再現しています。アンビエントを作る方は必見です。

📚本: 細野晴臣 録音術 ぼくらはこうして音をつくってきた - YMOの細野さんの音に対する姿勢を学べる良書。けっこう専門的なことが書かれていて素人向けではない気がしますが、音楽を作っている人には参考になることが多いです。

🎙️ポッドキャスト: 「音」から考える SOUND BOND RADIO - こちらは、空間のサウンドデザインをしている友人のポッドキャストです。「音」というものを改めて考えるきっかけを与えてくれます。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.1

2023年3月24日発行

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