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週刊「スタジオ翁」ニュースレター vol.69
このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。
プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。
あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。
目次
近況
今週の音楽ニュース
AI時代の作曲術
作曲とミキシングのアイデア帳
Q&A
Okina’s Picks
ブログ更新のお知らせ
📝近況
ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。
SONICWAREさんから新しいハードウェアシンセが登場したようです。
動画のデモを見るとわかりますが、即戦力になりそうな様々なアンビエントサウンドを奏でることができます。
製品ページからいくつか説明を抜粋してみましょう。
使い方は至ってシンプル。鍵盤ホールド機能で1つのレイヤーの音を鳴らします。その音色に耳を傾けながら、ノブを回して変化させたり、別のレイヤーの音色を重ねて心地よいサウンドにしてゆくだけです。
Ambient Øのために「うねり」と「ゆらぎ」の研究を重ねた結果、ウェーブテーブルをベースとした新たなシンセエンジンを開発しました。
Blendwave Modulation Synthesisは、個性的な6つのストラクチャーと複雑な倍音変化を持つ32個のWAVEの組み合わせによって、強烈な低音ドローン、浮遊感のあるパッド、透き通るようなピチカートなど、アンビエント・ミュージックに最適な音作りが簡単に行えます。
動画や文章を見る限り、誰でも簡単に音の流れに身をまかせて、サウンドメイキングができそう。
電池駆動に対応していて、スピーカーが付いているのも魅力的ですね。
最近は円安の影響により、なかなか新しいシンセに手が出しにくい状況が続いていますが、これはなんと37,800円で販売されており、かなりお買い得だと感じました。実際、売れ行きは良いようで、現在は予約注文による販売となっています。
没入型アンビエント・ジェネレーター「LIVEN Ambient Ø」、個人的にはかなり当たりなのではないかと思っています。
アンビエント作ってみたいけど、どうやって作ればいいんだろう?と悩んでいた人は、試してみてはいかがでしょうか。
📱今週の音楽ニュース
「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
WebSamplerを使えば、DAW上でインターネット上のオーディオをサンプリングできます。
→曲によっては、リリースの際に権利系で引っかかりそうですが、ネット上のあらゆるオーディオをサンプリングできるツールが販売されています。
RIAAがUdioとSunoを提訴したことは、果たして期待通りの勝利となるのだろうか?
→それぞれ1兆円以上の賠償金を求められているそうで、どう決着が着くのか気になりますね。ちなみにOpenAIやMicrosoftも、著作物を勝手にAI学習に使っているという理由で訴えられています。
→もう個人の発信なんて珍しくもなんともないですね。そしてZ 世代の89%が、自分は誰かまたは何かのファンだと言っているそうです。小さくても熱狂的なファンを集めることが今後のビジネス戦略の中心になっていくのかもしれません。
スタインバーグが贈る、フリーの超ディープ・スペクトラル・シンセ: Xストリーム
→まだ使い始めたばかりですが、なかなか面白い。無料なので、これ系のプラグインが好きな人は試してみてください。
Soulyft Audioからグラデーション・シンセ・アプリが登場
→色からアプローチするシンセサイザーアプリ。コンセプトは好きです。
🤖AI時代の作曲術
最新のAIプラグインやAI作曲ツールに関する情報を紹介します。
ChatGPTで音楽理論を勉強中
最近、作れる楽曲の幅を広げたいと考え、音楽理論を学び直しています。
音楽理論の本はKindle Unlimitedに結構あるので、本から学びたい人はUnlimitedに登録しておくのがオススメです。僕はとりあえず片っ端からUnlimitedにある作曲の本をダウンロードして、わからない理論などなどを中心にいろんな本を読み漁っています。
また、自分の好きな曲がどのような構成になっているか、どういったテクニックが使われているかといったことをChatGPTに質問して学んでいます。有名な曲のコード進行ならギターのコード譜などがネット上にあるので、それをChatGPTに読み込ませてコードについて解説してもらうと、どのようなコード進行になっているのか、どういった特徴があるのか、どんなテクニックが使われているのかを学べます。
ただ、コードを打ち込んで「このコード進行について解析して」と頼んでもあまり良い返事が得られない場合も多々あります。なので、ここでも『AI時代の作曲術』でお話ししたように、プロンプトエンジニアリングが大切になってきます。例えば、「あなたは一流の音楽講師で、ダイアトニックコードしか知らない人にわかりやすく、このコード進行の特徴を教えてください」と尋ねれば、「このコード進行を解説してください」と尋ねるよりもはるかに良い答えが返ってくるでしょう。
さらに、わからない部分は突き詰めて質問することで、ChatGPTがいろんなことを答えてくれます。将来的には学校の先生や音楽講師もAIになるのかもしれませんが、今はAIがその人に合った様々な知識を教えてくれるわけではなく、あくまで聞いたことに対して答えるだけです。学びを深めたければ、ネット検索やYouTube、本などで詳しく紹介している人たちの文章や動画を見るのが良いでしょう。
ChatGPTの楽曲解析で疑問や気になった点をあぶり出し、本やネット記事など詳しく解説されているところで知識をさらに深めていく、というのが今の時代合った学びの方法だと思います。
📘作曲とミキシングのアイデア帳
作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。
ネオクラシカルの作曲家Olafur Arnaldsと、同じく作曲家のJanus Rasmussenのユニット「Kiasmos」のインタビューで制作の舞台裏や、彼らの使用している機材が紹介されていました。
いくつか気になった言葉をピックアップしてみます。気になる方は、記事の方もご覧になってみてください。特に興味深かった言葉は太字にしています。
Janus: 「新しいライブラリやプラグインがあったら、それを研究してそれに基づいて作曲しようとします。Slate + Ash の Cycles もその 1 つです。アルバムの曲の多くは、パッチを微調整して完璧になるようにするプロセスに基づいています。
Oli: 「レコード制作の途中で、Nonlinear Labs C15 シンセサイザーを手に入れました。これは本当に美しい物理モデリング デジタル シンセで、ハードウェア シンセです。実際、レコードのいくつかの曲にも使われています。
「このレコードのほとんどの曲で、コルグの大型ポリフォニック シンセ、PS-3100 を使用しました。SQ-10 と MS-50 と接続して、さらにモジュレーションを効かせています。アルバムの最後の曲である Squared など、いくつかの曲では PS-3100 を使用していますが、MS-20、MS-10、SQ-10、MS-50 も使用しています。」
演奏するよりもシンセサイザーをシーケンスすることがほとんどですか
Oli: 「主にシーケンスを作って、それからノブを操作します。」
Janus: 「Softube Juno Model 84 では、非常に慎重に調整されたパッチを使用しています。」
Oli: 「これは私たちが見つけた中で最も正確な Juno のコピーです。少なくともライブ セットでは許容範囲です。アナログ シンセの一部をソフトウェア エミュレーションに置き換え、実際のシンセを持ち込む代わりに MIDI キーボードで演奏します。」
Oli: 「ほとんどがハードウェアです。早い段階でメロディーの作成に集中したいときは、ソフトシンセを使うこともあります。アルバムにはソフトシンセは入っていないと思います。サンプラーのSlate + Ash Choreographs はソフトシンセのようなものですが、サンプリングされたシンセです。Burst のリードラインとして使用しましたが、それ以外は基本的にすべてハードウェアです。」
Oli: 「Kiasmos でよく使うトリックの 1 つは、Space Echo を使って歪んだフィードを作ることです。これは Kiasmos でしかやらないもので、自分の作品ではやらないことです。Space Echo を 2 つ用意するか、1 つしかない場合は 2 回実行して、本当にドライブさせるとフィードバックが多くなり、時間も少し変えてぐらつく感じにします。その後、4kHz までの低周波数をすべてカットして、高音のシルキーな部分だけを残します。これは本当に素晴らしく、どんな音にも合うハイエンドなアンビエンスです。私たちはこれをかなり使っています。」
「もうひとつの本当に重要なことは、ほとんどの人が気づかないけれど、特定の要素ではないのに私たちの音楽にアンビエントな雰囲気を醸し出すもの、つまり4小節のループを使わないことです。コードシーケンスの場合、5小節、7小節、6小節になることがよくあります。または、4小節のループが1つあって、次のループが3小節の場合、基本的には7小節です。
「それが、どこから始まるのかわからないような音楽の質を与えています。コード進行に取り組むときは、始まりがないように感じさせ、一定のサイクルのように感じられるようにするために多くの時間を費やすことがよくあります。それは、音楽をよりアンビエントに感じさせるために、実際の作曲にもっと取り入れられるものです。」
ヤヌス: 「音楽は 4/4 なので、4 小節のパターンも含めると、少なくとも私たちのやり方では、ちょっと露骨になりすぎてしまいます。どこかで連鎖を少し壊さなければなりません。実際には、それを変えるだけで、1 小節だけ取り除いても、あまり違和感を感じさせないのは、思ったよりずっと難しいのです。時には、それが一番難しい部分です。7 小節、9 小節など、完璧なループを見つけるのは、必ずしも簡単ではありません。」
「ピアノの録音をたくさんしていた頃、ちょうどピアノを買ったばかりだったので、どうやって録音したらいいかまだ模索中でした。いろいろなマイクを試していました。でも、ほとんどは古い AKG C12A マイクを使っていました。これは C414 の旧バージョンです。このマイクがこのピアノには一番のお気に入りになりました。また、いくつかのトラックでは新しい Neumann M67 も使っています。よりクリアでオープンな音になりました。だから正直に言うと、いろいろ試していたんです。」
Janus: 「Laced には本当に面白いテイクが 1 つあります。フィールド レコーディングとリアンプです。バリ島でこの曲を書いていて、ブレイクダウンのようなものが欲しかったんです。フィールド レコーダーを持って部屋から出て、ブレイクダウンが起こっている間にできるだけ遠くの庭へ行ったらどうだろう、というアイデアが浮かびました。そのテイクが曲に入っています。
「ブレイクダウンに合わせて、誰かが歩き去るフィールドレコーディングにフェードアウトします。良いスピーカーで聴くと、音がフィルタリングされているだけでなく、実際に音から離れて歩いていると、コオロギの鳴き声が聞こえるのが本当にわかります。」
「私たちは、iPhone だけでも、部屋の音を録音するというトリックを何度か試しました。ブレイクダウンの前に、この潰れた奇妙なモノラル サウンドを断片的に使いたい場合、部屋の音を録音して、本当に雑然としたものにして、ブレイクダウンの直前に挿入します。
iPhoneのマイクの音ってなんか違うんだよね…
Oli: 「iPhone のマイクが気に入っています。」
Janus: 「音が良すぎるくらいです。時には、さらにローファイにしないといけないこともあります。」
🙋♂️Q&A
音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。
🧠Okina’s Picks
最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。
📣ダイソーの300円スピーカーを USBケーブル1本繋げるだけで使えるようにする改造 → 持ち運びできる高性能スピーカーを自作したい!その第一歩としてこちらを試してみました。
🪔Assembly DIY "IKEA Hack" Plate Reverb. Sub $100. → イケアのシェルフを使ってプレートリバーブを自作する動画。簡単そうなので、僕も早速、マイクとトランスデューサーを買ってみました。
🎹Korg OpSix // Glitch Ambient [no external FX] → 良い音ですね。昔からFMシンセ大好きなのですが、これかなり気になってます。
👤 ビート作りの腕を10倍速で上げる方法+ドラムスバウンスとビートの展開→ この人、ヒップホップに詳しいだけでなくビジネスが上手ですよね。ヒップホップあまり聴かないのに、ついつい観てしまいます。
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週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.69
2024年7月12日発行
Blog: https://studio-okina.com/
HP: isseykakuuchi.info