このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。
プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も、個人で完結できるようになりました。
あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。
目次
お知らせ
近況
作曲とミキシングのアイデア帳
今週の音楽ニュース
サービス・書籍のご紹介
📢お知らせ
Morph Compのリリースを、来週に延期します。
ニュースなどでご覧になった方もいるかもしれませんが、10月21日の夜、多くのウェブサイトで使われているPHPに重大な脆弱性(セキュリティ上の穴)が見つかりました。
ハッキングや個人情報の流出を防ぐため、ブログとOkina Audioは一時的に止めていたのですが、その分、リリース準備が遅れてしまいました。
22日の午後にトラブルなく復旧できたので、来週には問題なくリリースできる予定です。
お待たせしてすみません!
あと、今週からブログに、僕の選んだおすすめ楽曲のプレイリストを載せています。
ぜひ、聴いてみてください!
📝近況
ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今週は、ハードウェアシンセ界隈で見つけた、おもしろい潮流から。
ここ最近、低価格帯のシンセを中心に、個人が作ったカスタムファームウェアが爆発的に増えているとのこと。ファームウェアとは、機材の中で動いているプログラムのことで、いわば機材の頭脳です。それを有志が作った別のものに、丸ごと入れ替えてしまうわけですね。
火付け役のひとつが、M-Vave FM-1という70ドルのYamaha DX7クローンです。
この小さなシンセだけで、すでに数十種類のカスタムファームウェアが公開されています。
もとはクラシックなFM音色を鳴らすだけのシンセだったのに、バーチャルアナログになったり、サンプルを再生したり、マルチトラックのシーケンサーが載ったりしています。
ちょっとした修正とかではなく、もう音の仕組みごと入れ替わっているわけです。
さらには、Elektron、Roland SP-404 MKII、AbletonのPush 3、Arturia MicroFreak、14年前に出たZoomのペダルまで、ここ1か月ほどで新しいファームウェアが次々登場していいます。
これを可能にしたのが、ご存知バイブコーディングの進化です。
FM-1のファームウェアには、GitHubのページでClaudeを貢献者として挙げているものや、AIを使ったことをはっきり書いているものがいくつもあります。
LLMが出てくる前は、こういう改造はかなりの専門知識と時間が必要だったそうで、KorgのVolcaにベロシティ対応を足すだけでも、数週間から数か月かかっていたそうです。それが今は、趣味でハックしている人たちが、数日で別物に仕上げてしまう。「この機材の限界はどこなのか」を、メーカーではなく個人が試して、そのまま公開しているんですね。
もちろんメーカーの保証対象外ですし、失敗すれば機材が起動しなくなることもあり、完全自己責任の世界です。でも、買った機材が、あとから誰かの手で別の楽器に生まれ変わる。そういう事例が、じわじわ増えています。
まさに子供のように面白がれる人が、自分好みのおもちゃを自分で作れるような時代を感じさせるのは、とてもワクワクしますよね。
もちろんサービスや製品を売る側からしたら、消費者が勝手に遊び道具を拡張するのは、商売上とても困るんでしょうけど…笑
さて、先週は音楽だけで稼ぐのはこれから相当難しくなる、と書きました。
「音楽で稼げなくなるなんて言われたら、作曲をする気がなくなる」と思った方もいるかもしれません。このメルマガは音楽制作について書いているので、なおさらですよね。
でも、稼げないからといって、音楽を作るのをやめる必要はまったくありません。では、今みなさんが磨いている音楽制作のスキルを、これからどう活かしていけばいいのか。考え方はふたつあると思っています。
ひとつめは、完全に趣味にすることです。
趣味といっても、音楽を作った先のゴールを諦めるという意味ではありません。フェスに出る、レーベルから出す、といった表現は、稼がなくても十分できます。難しいのは音楽で生計を立てることであって、表現することではないんですよね。
そもそも音楽は、お金を稼ぐ手段として生まれたものではありません。太古の昔から、意識を変容させたり、感情を揺さぶったり、ときには洗脳したりする道具として、いろいろな役割を果たしてきました。音楽を作って稼ぎたい、なんていう時代はつい最近のことで、昔はそうではなかったわけです。
だから、好きで音楽を作り続けるのは、ある意味で音楽の原点に立ち戻ることだと思います。作って楽しい、聴いてもらって楽しい。その純粋な気持ちをお金にしようとするから葛藤が生まれるわけで、自分で味わったり、少数のファンに聴いてもらったりするぶんには、何の問題もありません。
この時覚えておきたいのは、いい音楽を作るのではなく、意味のある音楽を作る。音楽を通して何を伝えたいか、なぜあなたが作ってそれを出す価値があるのか、といったところも意識してみると良いかもしれません。
ふたつめは、音楽を作るだけでなく、何かと掛け合わせることです。
僕の場合、クリニックでカウンセラーをしていますが、そこに音響の知識や作曲のスキルを足すと、その人のための特殊な音楽を作ってプレゼントする、といったことができます。サイケデリックセラピーの音楽を作って、セラピーを受けにきてもらうということもできます。どちらも特殊なので誰にでもできるわけではありませんが、そういう何か、サービスに付随する音楽を作るという道もあります。
つまり、音楽そのものを売るのではなく、音楽をツールの一つにするということです。自分の持ち味と組み合わせる、と言ってもいいかもしれません。音楽以外の興味のある分野でイベントを開いて、そこで自分の音楽を届けるといったこともひとつのやり方です。
ふたつの道に共通しているのは、音楽そのものを主役の売り物にしていない、ということです。そしてどちらを選ぶにしても、大事なのは「儲かりそうだから」で決めないこと。先週の話でいえば、焼肉やお寿司ではなく、かまぼこです。自分が本当に好きなもの、なぜか気になってしまうもの。それがどんなに意味不明でも、そっちを選んだほうが、きっと長く続くと思います。
音楽業界がいくら危ないからといって、作ることや、音楽そのものの魅力が失われることはありません。この新しい時代に、どうやって音楽を楽しんでいくのかを、みなさんと一緒に考えていければと思っています。
来週は、この話をもう少し大きく広げてみます。
📘作曲とミキシングのアイデア帳
作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやアーティストのAI活用術をご紹介します。

Boutiqueシリーズのシンセを本物並みに再現する方法
ローランドのBoutiqueシリーズに、新しいラインナップが加わりました。
10月20日に発表されたのは、JUPITER-8の誕生45周年を記念した「JUPITER-08」と、シリーズ初のウェーブテーブル・シンセ「n/vision」の2機種です。
ちょうど少し前に、別機種の購入を考えて原宿のローランドショップへ試奏に行ってきたところでした。JUPITER-08もとても気になっているのですが、発売が11月7日ということもあり、原宿のショップにはまだ置いてありませんでしたね。
さて、Boutiqueシリーズは大人気で、持っている人もライブで使っている人も多いですよね。ただ、音はやはりヴィンテージのアナログ実機と比べると、少し軽く聞こえる印象があります。
そこで試してみたいのが、APIのプリアンプや、自分の好きなプリアンプ・コンプレッサーをBoutiqueの後段に接続して録音する方法です。
これは、数年前に知り合いのプロデューサーから教わった手法で、その方はJUNOの実機と、BoutiqueシリーズにAPIのプリアンプを組み合わせて使っていました。APIならではのタイトで芯のあるサウンドが、Boutiqueの音に高級感を与えてくれるんです。
とはいえ、APIのプリアンプは高価なので、必ずしも使う必要はありません。お気に入りのコンプレッサーを挿して録音してみるのも面白いと思います。
たとえば、ダフト・パンクが使っていたことで知られるAlesis 3630なら、中古で1万円前後から見つかります。高級感を足すというより、潰れ感や独特のコンプ感といったキャラクターを加える使い方になりそうですが、結果はやってみないと分かりません。現代のシンセの物足りなさを、別のハードウェアを通すことで補うこの手法は、Boutiqueシリーズとの相性がとても良いと思います。
少しマニアックなテクニックですが、興味のある方はぜひ試してみてください。
📰 今週の音楽ニュース
スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。

M-Audio Forty Sixty Review: 6.5インチのケブラーウーファーとClass AB 100Wバイアンプを積み、Bluetooth 5.3とアプリの5バンドEQにも対応した2ウェイのモニター。MusicRadarは「安く大きくグレードアップしたい人の第一候補」と評価。
Ohma Ohmie Mic: Ohma Worldのトランスレス・カーディオイド型コンデンサーマイク(£265/$349)。カプセルの電圧を48Vと80Vで切り替えて2種類の音色が使え、どちらも通常の48Vファンタム電源で動く。
Technics SL-1210MKX: TechnicsのSL-1200シリーズの新しい最上位機。重くしたシャーシと新しいインシュレーターでハウリングを抑え、シリーズで初めて±4%のピッチ幅を持つ。2027年1月発売で£1,299。
Apple Acquires Samplab: 録音をMIDIに変換し、ステム分離もできるAI編集ソフトのSamplab(スイス)をAppleが買収。記事は、Logic Proに和音を個別に直せる編集機能やより細かいステム分離が入る可能性を論じている。
Telefunken TF11 FET: CK12型のTK51Sカプセルを積んだFETコンデンサーマイク(154,000円)。C12に近い高域の空気感を持ちつつ低域を抑えた音作りで、宅録向きと評価されている。
Roland Jupiter-08 Boutique: 1981年のJUPITER-8を再現した電池駆動のBoutique($549.99)。最大32ボイス、64ステップのポリフォニック・シーケンサー、アルペジエーター、シマーリバーブ、スピーカーを内蔵する。
Ambrio Spatial Performance Mixer: 各チャンネルの音を部屋の好きな位置に置き、決めた軌道で動かせる5チャンネルの立体音響DJミキサー。価格は未発表で、2027年に一般販売する予定。
Jupiter-08 & n/vision: Boutiqueシリーズの新機種2台はどちらも$549.99。JUPITER-08と同時に、シリーズ初のウェーブテーブル・シンセ「n/vision」が出た。63種類の波形を2レイヤーで重ね、アナログをモデルにしたフィルターを持つ。
Malsah Labs HarmonyKeen: 入力したメロディに合うハーモニーを作るソフト($59の買い切り)。AIを使わず、音楽理論とコードの出現頻度表で動くため、同じ設定なら毎回同じ結果になる。単体版とVST3/AU版がある。
🎧サービス・書籍のご紹介

<プラグインメーカー「Okina Audio」>
Okina Audioは、「スタジオ翁」から生まれたプラグインメーカー。
音楽のクオリティは、道具にいくら払えるかではなく、アイデアとセンスで決まるべきです。道具へのアクセスの格差が、そのまま音楽の格差になるべきではありません。
だから、Okina Audioのプラグインは無料で提供します。
<VSTプラグイン「BinauralShift」>
音響心理学と脳科学に基づいた、「機能性音楽」のためのオーディオプラグイン。
バイノーラルビートを用いて、デルタ波(睡眠)やベータ波(集中)などを科学的に誘発します。バイノーラルビート生成だけでなく、「モノラルビート」 「アイソクロニックトーン」 、さらには「モンロー研究所が開発した特殊なバイノーラルビート」まで、このプラグイン一つで完結。
また、既存のサウンドにバイノーラル変調をかけることで、音楽としての自然さを保ったまま脳波誘導効果を付与でき、Apple「Sound Therapy」のような音楽を自分で作ることもできます。
<Splice作曲メソッド>
音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。
音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。
さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。
<著書>
作曲AIに関する書籍です。
アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。
<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>
ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。
使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。
プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。
週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.183
2026年10月16日発行
Blog: https://studio-okina.com/


