このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

ここ数ヶ月、AIで何でも作れるのが楽しくて、プラグインをはじめ、いろいろなものを作ってきました。自分の欲しい音を自分の手で形にできるのは、本当におもしろい体験です。

しかも、こうした環境はどんどん身近になっています。GoogleのFlowではプラグインが作れるようになり、Baby Audioも、個人で音楽プラグインを作れるサービスを始めると発表しました。アーティストが自分の道具を自分で作れる時代が、すぐそこまで来ています。

ただ、何でもできるようになった今だからこそ、気をつけたいと思うことがあります。それは、「AIを使うこと」そのものが目的になってしまうこと。

本来は必要なところでAIを活用すればいいはずなのに、いつの間にか手段が目的になってしまう。AIで何でも作れるからといって、本来は作る必要のないものまで量産してしまう。

最近は世の中を見ていても、そんな場面が増えているように感じますし、僕自身も、楽しさのあまりそうなりかけた瞬間がなかったとは言えません。

AIを使えば、驚くほど簡単に形になるので、だからこそ「自分の制作に何が必要か」より先に、「AIで何かできないか」が来てしまいやすいんですよね。

AIは頼もしいサポーターですが、「何を支えればいいのか」がわからないと動けません。「この音をこう響かせたい」「制作のこの部分を支えてほしい」といったことがはっきりしているほど、AIは力を発揮してくれます。そこが決まっていれば、AIに任せるところと自分でやるところは、自然と見えてくるはずです。

これから先、AIで自分の道具を作るアーティストは、ますます増えていくと思いますが、そのとき差がつくのは、AIをどれだけ使いこなせるかよりも「自分が何を作りたいのかを持っているかどうか」なのかもしれません。

これは音楽に限らず、AIを使う仕事全般に言えることだと思います。AIにできることは、これからもどんどん増えていきます。だからこそ、どこへ向かうかだけは自分の頭で決めておきたいですね。

もし同じように、AIでできることの多さに少し振り回されている感覚がある方は、このあたりで一度、「自分はAIに何を手伝ってもらいたいんだっけ」「どこを支えてもらいたいんだっけ」と立ち返ってみるのもいいかもしれません。

AIが進化すればするほど、この視点はきっと、今よりもっと大事になってくると思うので!

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやアーティストのAI活用術をご紹介します。

シンセサイザーにコーラスを

プロと初心者の曲を聴き比べて、差を感じる部分はいろいろありますが、そのひとつがステレオ幅(Stereo Width)です。

特に電子音楽は、シンセ1本やパッド1枚で曲の雰囲気を支えることも多いので、その音が左右にどれだけ広がっているかで、曲の印象がかなり変わります。広がりが足りないと、音が真ん中にギュッと固まって、明るさや華やかさが足りない曲になってしまうんですよね。

マスタリングでもステレオの処理はある程度できますが、そもそもステレオ感がまったくない音は、あとから広げられません。なので、ミキシングの段階で、音ひとつひとつに幅を持たせておく必要があります。

では、どうやって広げるか。

定番は、リバーブやディレイなどの空間系エフェクトです。

ただ、これらは響きや反射音を足して広げるので、かけるほど音のテイルが伸びて、音が奥に下がっていきます。前に出しておきたいシンセやリードにかけすぎると、輪郭がぼやけてしまうこともあります。

そこで個人的におすすめなのが、コーラスです。

たとえば、Rolandの名機Juno。あの音色がなぜあんなに素晴らしいのか。理由のひとつは、Junoに積まれている2種類の独特なコーラスにあると思っています。

コーラスはボーカルやギターに使うイメージが強いかもしれません。でも、シンセサイザーにかけると、リバーブのように音のテイルを伸ばさずに、ステレオ感だけを足すことができます。

僕は普段、Soundtoys EchoBoyのコーラス系プリセットを使っていますが、EchoBoyを持っていなくても、Junoのコーラス部分だけを切り出した無料プラグインもあるので、そういったものを試してみるのもいいでしょう。

コーラスでステレオ感を上げると、曲がかなり華やかになって、一気にリッチになった感じがしますよ。

ただし、気をつけたいことがひとつ。

ステレオ幅を広げすぎると、いろんな環境で聴いたときに音が滲んでしまい、「あれ、シンセどこいった?」と存在感が薄くなってしまうことがあります。

そこでおすすめなのが、最後に必ずミックスをモノラルにして聴いてみること。

モノラルにしても、コーラスをかけたシンセの存在感が消えない。ステレオに戻すと華やかになる。この基準でかかり具合を調整するのがコツです。

曲がなんとなく地味だなと感じている方は、ぜひシンセにコーラスをひとつ挿してみてください。

📰 今週の音楽ニュース

スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。
  1. Convolution Playground: loopop(Ziv Eliraz)が作った、ブラウザで動くツール。手持ちの音声ファイルをインパルス応答(IR)として読み込み、リバーブ・ディレイ・スペクトル処理など10通りの方法でエフェクトに変えられる。

  2. LA-2A and 1176 Tips: UAによる定番コンプ2台の重ねがけの解説。先に1176(レシオ4:1か8:1)でピークを素早く抑え、後のLA-2Aでなめらかに整えて温かみを足す。ボーカルのほか、ベース・ギター・ドラムにも使えるとしている。

  3. What Is Ambient: アンビエントの成り立ちと広がりをたどるコラム。サティの「家具の音楽」からイーノの『Music For Airports』、細野晴臣ら日本の環境音楽、90年代UKのチルアウト、Aphex TwinやOPNまでを追い、パンデミック期に見直された流れにも触れている。

  4. PLICATA iOS Synth: Alessandro GuardascioneのiOS向けモノフォニックシンセ。音色が連続的に変わるオシレーター、ウェーブフォルダー、ラダーフィルターを備え、28個のジャックで自由に配線できる。微分音を弾けるXY鍵盤と、変化していく32ステップのアルペジエーターもある。単体アプリかAUv3として使え、価格は$7.99。

  5. Aalto 2 and Aaltoverb: Madrona Labsが、演奏するように操れるリバーブ「Aaltoverb」($35)のLinux版をベータで公開した。あわせてシンセ「Aalto 2」を今秋、Mac・Windows・Linux向けに出すと発表。どちらもCLAP形式に対応し、購入から12か月以内のユーザーはAalto 2に無料でアップグレードできる。

  6. Baby Audio HyperWarp: Baby Audioが新しいグラニュラー系プラグイン「HyperWarp」を発売。グラフ型シーケンサーで再生速度・スタッター・再生方向を変化させ、「Clean Warp」から「Lo-Fizzly」まで7種類の音色プロファイルを持つ。

  7. Suzanne Ciani on Buchla: Suzanne Cianiの動画インタビュー。1960年代のカリフォルニアから現在まで、Buchlaとの関わり、共演、4ch(クアッド)サラウンドでの演奏、電子音楽を聴く人の変化を振り返る。

  8. Plugins You Actually Need: 高価な定番プラグインがなくてもミックスはできるという記事。EQはTDR Nova、コンプはMCompressor、リバーブはValhalla VintageVerb、歪みはDecapitator、クリッパーはKClipを勧めている。

  9. M-VAVE FM-1 Sound Banks: £50〜80のFMシンセ「M-VAVE FM-1」が人気。有志が無料の代替ファームウェアを出して、DX7互換に加えてVAシンセやサンプラーとしても使えるようになり、音色バンクが次々に作られている。ほかにMiniFreak・Iridium・PURE LoFi向けの新しい音色集も紹介。

  10. Cherry Audio Pentaphonic: Cherry Audioが、70台足らずしか作られなかった1981年のアナログポリシンセ「Gleeman Pentaphonic」をプラグインにした。最大16ボイスで、アルペジエーター、ステップシーケンサー、22種のエフェクトを積んでいる。

  11. Hi-Fi Festival Sound Systems: フェスで音響システムそのものが目玉の出し物になっている。GoldenvoiceとIII Pointsの幹部がその理由を語り、Despacio(Coachella/Portola)、Sunflower Sound System、III Pointsの:444:ステージを例に挙げている。

🎧サービス・書籍のご紹介

<プラグインメーカー「Okina Audio」>

Okina Audioは、「スタジオ翁」から生まれたプラグインメーカー。

音楽のクオリティは、道具にいくら払えるかではなく、アイデアとセンスで決まるべきです。道具へのアクセスの格差が、そのまま音楽の格差になるべきではありません。

だから、Okina Audioのプラグインは、すべて無料で提供します。

<VSTプラグイン「BinauralShift」>

音響心理学と脳科学に基づいた、「機能性音楽」のためのオーディオプラグイン。

バイノーラルビートを用いて、デルタ波(睡眠)やベータ波(集中)などを科学的に誘発します。バイノーラルビート生成だけでなく、「モノラルビート」 「アイソクロニックトーン」 、さらには「モンロー研究所が開発した特殊なバイノーラルビート」まで、このプラグイン一つで完結。

また、既存のサウンドにバイノーラル変調をかけることで、音楽としての自然さを保ったまま脳波誘導効果を付与でき、Apple「Sound Therapy」のような音楽を自分で作ることもできます。

<Splice作曲メソッド>

音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。

音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。

さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。

<プライベートレッスン>

作曲・ミキシング・マスタリングに関するプライベートレッスンのご案内です。

具体的なレッスン内容は、事前のメールやZoomなどでヒアリングしてから決めていくことも可能です。

まずは、お気軽にご連絡ください。

<著書>

作曲AIに関する書籍です。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.182

2026年10月9日発行

Blog: https://studio-okina.com/