このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. お知らせ

  2. 近況

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. 今週の音楽ニュース

  5. ブログ更新のお知らせ

  6. サービス・書籍のご紹介

📢お知らせ

Takumi EQが、v1.2にアップデートされました!

追加項目としては、まずアナライザーセクションで、入出力のカーブが同時に表示されるようになり、EQで何がどう変わったのかが一目で確認できるようになっています。

また、Pultecセクションにはゲインモードを追加。通常、Pultecは挿すだけで1dBほどレベルが上がってしまうのですが、その特徴をON/OFFできるようになりました。

また、いくつかのバグ修正も含まれています。

最新版は、ダウンロードページにてご確認ください。

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先週リリースしたTakumi EQが、想定以上にダウンロードされてビックリしています。

海外の有名ブログ「Bedroom Producers Blog」でも紹介され、おかげさまでリリースから1週間で、約2,000人の方にダウンロードいただきました!

お礼の声や、バグ修正依頼のメールもたくさんいただいていますが、なかなか初めてのことなので処理しきれていない部分があります… (ご不便おかけして申し訳ありません!)

興味を持っていただいている方は、日本人が多いですが、3割は海外の方々です。

海外の方はマニアックな方が多く、修正の依頼だけではなく、こうやったらバグが直るよとか、原因はここにありそうだよ、といったことを添えてメールをくれるので大変ありがたいです。

世界的にみて、日本製のプラグインは少ないイメージですが、海外ではこのようにプラグインの作り手を温かく見守り、お互い助け合いながら製品をブラッシュアップしていくような文化があるんだということを初めて知りました。

もちろん日本の方からも、嬉しいお言葉やアドバイスをいただくこともありますが、やはり海外の方が良質なプラグインができる下地があるんだな、ということを改めて思い知らされましたね。

さて、今、北海道から取り寄せた豆でコーヒーを淹れながら、この原稿を書いています。

仲良くしていただいているお医者さんに、コーヒーにとんでもない情熱を注いでいる方がいて、その方おすすめのゲイシャという豆を買ってみました。正直、ゲイシャが何なのかは未だによくわかっていないのですが、味わい深いのに雑味がない、クリーンな感じがすっかり気に入っています。

最近はこの良い豆に対して、どんな水を使えば一番良い抽出になるかを研究中です。

そのお医者さん曰く、水は音楽で言うところの「アンプ」なのだそうです。

豆の良さを、雑味なくクリーンに増幅する。水というアンプの質が悪ければ、いくら豆が良くても、その良さを消してしまったり、増幅の過程でノイズが乗って、本来の風味が覆い隠された状態で飲むことになってしまいます。

もちろん、水が良いことも良いコーヒーの条件ですが、それ以前に重要なのは、まず「豆自体が良い」ということですね。

さて、この話を音楽制作に置き換えてみましょう。

最近は連載でChatGPTを音楽制作にどう活用するかを書いていますが、世の中では「AIを使えば簡単に音楽ができる」という空気が広がっています。

ところが、AIは豆そのものではなく、水、つまりアンプなんですよね。

アイディア出し、コードやフレーズ出し、マスタリング、ミキシング、あらゆる場面でAIが活用できるようになりましたが、AIはあくまでアンプなので、「何を増幅するか」で最終的な音楽のクオリティが決まります。いくらAIというアンプが優秀でも、しょぼいアイディアを増幅してしまえば、何の価値もない音楽が出来上がるだけでしょう。

つまりAIがアンプだとすると、その手前にある豆、音楽で言えば「作り手の感性やセンス」がより重要になってくるわけです。

ここを磨かない限り、いくらAIが進化しても、しょぼいものを量産し続ける駄作製造機にしかならないんですよね。

とはいえ、この手の音楽的な感覚は生まれ育った環境に大きく左右されるので、鍛えるのが難しいのも事実です。

でも不可能ではないと思っていて、最近仲良くしていただいている別のお医者さんとは、よくLabyrinthやfrueといった国内フェスに一緒に遊びに行くのですが、その方は子供の頃からお父さんの影響でいろんな音楽を聴いてきた人です。

僕は23歳から本格的に音楽を聴き始めたので、その手の昔の名曲にはとにかく疎くて、知らないことだらけでした。それでもこういった新しい音楽に出会うタイミングで徐々に知見を広めていくことで、知っている音楽の幅も、こういう音がかっこいいというセンスも、少しずつ磨かれてきた実感があります。

なので大人になってからでも、たくさん音楽に触れる、気に入った音楽を分析して何がいいか言語化してみる、というのはコーヒー豆の品質を上げるという意味でかなり効くと思います。

ただ、もっとシンプルに、音楽センスを良くする方法があるなと最近気づきました。

それは、「ご飯を食べるときは、目の前のご飯だけに集中する」ということです。

「ん?」とお感じになったかもしれませんが、まず、現代人はマルチタスクだらけです。スマホを見ながらご飯を食べる、AIエージェントを何個も同時に稼働させる、音楽を聴きながら通勤する。こういう小さな「ながら」の積み重ねで、音楽的な超感覚がじわじわ失われていくんですね。

音楽は目に見えないものですし、聴くことでイメージや記憶、人によっては空間や色まで思い起こさせるものです。映像のように誰もが同じものをパッと共有できる感覚とは違って、ちょっとあやしいですが、ある種スピリチュアル寄りの感覚が必要になってくる領域だと思っています。

普段から、ながら作業をしている人は、音楽を聴いてもその音に100%没入できないので、感じ取れるものがどうしても少なくなりがちです。

音楽のジャンルをいろいろ知ろう、トップアーティストの曲をたくさん聴いて勉強しようと思って聴くこと自体は良いのですが、ブログでも書いたことがある「アクティブリスニング(積極的に音を取りに行く聴き方)」より、「パッシブリスニング(ながら聴き)」を繰り返していると、音楽自体が持っているエネルギーをほとんど感じ取れないまま、ただ時間だけが過ぎていくことになりかねません。

これからAIでどんどん作業が効率化され、誰もが音楽を作れるようになっていきます。

でもAIにも、良質なコーヒー豆を作ることはできません。

良質な豆、つまり自分のセンスを磨くことが、これからますます重要になってくるでしょう。そのためにできることが、目の前のご飯を全集中して味わう、五感で感じるという、一見音楽と関係なさそうなことだったりする。

それが良い音楽を作るための条件の一つであり、これからの時代を生き抜く術の一つにもなってくるんじゃないかと思っています。

奇妙な話を長々としてしまいましたが、ちょっとでも何か感じ取っていただけることがあると嬉しいです。

では、良い週末を!

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやアーティストのAI活用術をご紹介します。

【アーティストがChatGPTを作曲に活用する方法 #11】

音楽を作って「さあリリースだ!」というところで、「一体、どのレーベルに送ればいいんだろう…」と途方に暮れてしまう。

そんな経験はないでしょうか?

海外のレーベルとなると、同じジャンルでも微妙にニュアンスの違う音楽を扱うレーベルが、数百、下手すれば数千とひしめいています。自分好みのレーベルを探そうにも、どこから手をつければいいのか分かりませんよね。

大手レーベルは、そもそもデモをちゃんと聴いてくれることすら少ないものです。なので、まずは小さめのレーベルからリリースを重ねて、プレゼンスを上げていくといった手法がおすすめ。

とはいえ、その「小さいレーベル」がなかなか見つからないんですよね。こういうレーベルは向こうから見つけてくれるものではなく、こちらから探しに行かないとなかなか出会えません。逆に言うと、規模や方向性がしっかりマッチしたレーベルを探し当てられれば、意外とすんなり海外リリースが実現することもあります。

自分の曲にどれくらいマッチしているかは、最終的には自分の耳で確かめることになりますが、その手前の下調べ、一次スクリーニングを今回はChatGPTに任せてみましょう!

以下がプロンプトです。

今回の曲のジャンルは、ダウンテンポ寄りのエレクトロニカで、BPMは90前後。BonoboやTychoのような、温かみのあるオーガニックなサウンドです。ボーカルは入っていません。このテイストに合いそうな海外レーベルを、大手・中堅・小規模の規模別に分けて挙げてください。それぞれ、どんな作家性のアーティストを扱っているかも一言添えてください。BeatportやSoundCloudのリンクがあれば、あわせて教えてください。

このように、ざっくりしたジャンル名だけでなく、テンポや参考アーティストといった細かい情報まで渡しているのがポイント。情報が薄いと、名前を知っている大手レーベルばかりが返ってきますが、条件を絞るほど、聞いたことはないけれど確かに自分の曲と親和性の高そうなレーベルまで、候補に入ってくるようになります。

そして、もう一歩踏み込んだ質問をしてみるのもいいでしょう。

先ほど挙げてくれたレーベルを、デモ提出の窓口が明確なところから優先順位をつけて並べ替えてください。それぞれ、送るときに書くべき自己紹介文の長さの目安も教えてください。

これで、ただの候補リストが、送る順番まで含んだ実行計画に変わります。

ただ、ここは正直に書いておきますが、ChatGPTが挙げてくるレーベルの中には、すでに活動を停止していたり、実は求めている傾向が少し違っていたりするものが混ざってしまうことがあります。

あくまで一次スクリーニングとして使い、その中から好みのものを選び取っていきましょう。必要なら追加情報を渡したり、「このレーベルとこのレーベルが自分好みだったので、似たレーベルをあと5つ探してください」というふうに、気に入った候補を起点にさらに絞り込んでいくと、だんだん自分に合ったレーベルへと近づいていきます。

候補が絞れてきたら、前回お伝えしたリリース用の紹介文作成テクニックも活用し、そのレーベルにどう送るか、文章もAIと一緒に吟味しながら組み立ててみましょう。

レーベルを探す方法は、他にもSpotifyの関連アーティスト機能をたどったり、YouTubeやSoundCloudで似た曲を探したりと、いろいろあります。

ChatGPTは、あくまでその中のひとつの手段として、理想のレーベル探しに活用してみてください。

📰 今週の音楽ニュース

スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。
  1. Suno Studio 2.0 Chatbot: SunoがStudio 2.0でプロジェクト操作・音色変換・テキストからのカスタムプラグイン生成まで行うAIチャットボット「Studio Chat」を搭載、MIDIやオートメーション等の従来型DAW機能も追加(Premium月額$30)。

  2. Madonna Leads VMA Nominations: Madonnaが2026年MTV VMAで最多11ノミネートを獲得しTaylor Swiftを上回る。全部門受賞ならVMA史上最多受賞者にタイ。授賞式は9月27日にCBSで放送。

  3. Best Ethical AI Plugins: アーティストにライセンス料や収益50%を還元する「倫理的AI」音楽ツール6選(LANDR・Neutone・Voice-Swap・ACE Studio・Moises等)を紹介するバイヤーズガイド。

  4. Beatport Bans AI Music: BeatportがBeatdappと組み、大半がAI生成のトラックをアップロード時に自動検出・ブロックする方針を発表。ミックスやステム分離等のAI補助は許容し、人間主体の制作と線引きする。

  5. Camera AirPods Video Leak: macOS Tahoe 26.7 RCからカメラ搭載AirPodsのデモ動画が発見され、Visual Intelligenceで周囲を認識してSiriに保存や案内をさせる構想が初めて映像で確認された。

  6. Jordan Fish Alt Textures: 元Bring Me The HorizonのプロデューサーJordan FishがCradle Audioと共同でサンプル系プラグイン「State Machine: Alt Textures」をリリース、高速な制作ワークフローを語るインタビュー。

  7. Eastman Music Tech Degree: 名門Eastman音楽学校が電子音楽制作・サウンドデザイン・DJingを学ぶ新学位「Music Creation and Technology」を2027年秋に開設、Ableton出身のDennis DeSantisが主導。

  8. Streaming Changed Production: ストリーミング時代の制作術として、冒頭数秒での掴み・音色そのものをフックにする発想・スマホやイヤホンでのミックス再現性・ダイナミクス確保の重要性を解説。

📝ブログ更新のお知らせ

🎧サービス・書籍のご紹介

<プラグインメーカー「Okina Audio」>

Okina Audioは、「スタジオ翁」から生まれたプラグインメーカー。

音楽のクオリティは、道具にいくら払えるかではなく、アイデアとセンスで決まるべきです。道具へのアクセスの格差が、そのまま音楽の格差になるべきではありません。

だから、Okina Audioのプラグインは、すべて無料で提供します。

<VSTプラグイン「BinauralShift」>

音響心理学と脳科学に基づいた、「機能性音楽」のためのオーディオプラグイン。

バイノーラルビートを用いて、デルタ波(睡眠)やベータ波(集中)などを科学的に誘発します。バイノーラルビート生成だけでなく、「モノラルビート」 「アイソクロニックトーン」 、さらには「モンロー研究所が開発した特殊なバイノーラルビート」まで、このプラグイン一つで完結。

また、既存のサウンドにバイノーラル変調をかけることで、音楽としての自然さを保ったまま脳波誘導効果を付与でき、Apple「Sound Therapy」のような音楽を自分で作ることもできます。

<Splice作曲メソッド>

音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。

音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。

さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。

<プライベートレッスン>

作曲・ミキシング・マスタリングに関するプライベートレッスンのご案内です。

具体的なレッスン内容は、事前のメールやZoomなどでヒアリングしてから決めていくことも可能です。

まずは、お気軽にご連絡ください。

<著書>

作曲AIに関する書籍です。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.175

2026年8月21日発行

Blog: https://studio-okina.com/