このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も、個人で完結できるようになりました。

あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今週は、アメリカのポートランドに来ています。

2年前にも一度訪れた街ですが、歩いてみると「本当にあのポートランド?」と感じるくらい荒廃していました。

ポートランドといえば「Portlandia」というコメディドラマが作られるほど個性の立った街で、アメリカの「住みたい街ランキング」の上位常連。オーガニックとコーヒーとインディーミュージックの街、というイメージを、雑誌やテレビで刷り込まれてきた方も多いと思います。

ところが驚くことに、街にはほとんど人がいません。

シャッターの下りた通りに、腰の曲がったフェンタニル中毒の人がぽつぽつと立っている程度で、かつて誌面で見ていたポートランドの面影はどこにもありませんでした。

こうやって世界のいろんな都市を訪れてみると、日本にいるだけでは分からない魅力に触れられると同時に、いま世界が置かれている実際の状況も肌で分かります。

分断が広がり、体力のない企業から倒産し、不景気になり、格差が開いていく。この流れがしばらく続くのだとすれば、音楽的な知見を広げる意味でも、人生を豊かに過ごすためにも、もっと外に出ておく必要があるな、と感じさせられた一週間でした。

さて先週、プラグインメーカーをオープンしましたが、今週はEQとコンプレッサーの調整と並行して、サチュレーターのプロトタイプも作りました。

音楽制作で素人とプロを分けている一つの要因は、「サチュレーターの使い方」です。この2つを使いこなせると音がグッと前に出て、いわゆる「プロっぽい音」になる。ただ、この2つがとにかく難しいんですよね。

結局は耳で聴きながら、歪みの量と種類を選び、コンプの加減を決めることになるので、重要性は分かっていても使いこなせないまま、という方が多かったはずです。(僕も長いことそうでした)

今作っているサチュレーターは、そこを設計で解決しようとしています。

これまでのサチュレーターは「どれだけ突っ込んで、どれだけ歪ませるか」を指定するものでした。だから静かなパートではほとんど効かず、大きいパートでは歪みすぎる。さらに入力を上げれば音が崩壊してしまうので、曲の中で常に適量を探し続ける作業が必要でした。

今回のものは、「どれだけ倍音が乗った状態にしたいか」を指定します。

倍音の量を常時測っているので、歪みすぎていればそれ以上は足されない。小さい音にも大きい音にも、同じ密度で倍音が乗ります。

「かけすぎが起こらない」「失敗しない設計」という、これまでとは全く違うアプローチでサチュレーションをかけられるようになりました。

プロトタイプ、こんな感じです。

こういうものは、実際に触ってもらわないと伝わらない部分が大きいので、近々、このメルマガを読んでくださっている方だけに、ベータ版を開放しようかと考えています。

「サチュレーターだけは何度やってもよく分からない」「最適なパラメーター位置がわからず、あまり使えていない」という方は、楽しみにしておいてくださいね。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやアーティストのAI活用術をご紹介します。

【アーティストがChatGPTを作曲に活用する方法 #9】

新しいプラグインを買っても、つまみが多くてどこを触ればいいかわからない。複雑すぎて、マニュアルを読んでもよくわからない。

そんな経験はないでしょうか。

ここまでの回では、質問を言葉にしてAIに伝えるための工夫をお伝えしてきましたが、そもそも言葉にできないものもあります。

そういうときは、そのまま画像を撮ってAIに見せてしまいましょう。

ChatGPTは画像を読めるので、スクリーンショットを貼って、いろんなことを尋ねることができます。

例えば、新しいプラグインを買ったとき。

それぞれのつまみが何をするものなのか、初心者向けに整理して教えてください。そのうえで、ベースを太くしたいときは、どこを触ればいいですか?

このように尋ねてみましょう。

ここでの工夫はひとつだけで、「これは何ですか?」で終わらせずに、やりたいことを一緒に渡すことです。

つまみの説明だけを求めると、専門的な辞書のような答えが返ってきて、結局どこを触ればいいかわからないままになってしまう可能性があります。でも「ベースを太くしたい」「こういうパッドシンセを作りたい」と目的を添えることで、触るべきつまみを限定して、順番付きで教えてくれたりします。

そしてこれは、シンセの音作り以外にも活用できます。

例えば、アナライザーの画面を撮って、この特定の周波数の凹みは何が原因ですか、と聞いてみる。DAWのMIDI画面を撮って、

このコード進行は何ですか、次に続けられるコードの候補も教えてください

と聞いてみる。またはモジュラーシンセやアナログシンセを購入したときに、

これをどうやって今持っているオーディオインターフェースに接続すればいいですか、どのつまみをいじって、何をどこに挿せばいいですか

と聞く。

スクリーンショットや写真を撮るだけで済むので、文章で説明するよりも素早く回答を得ることができるでしょう。

ひとつだけ注意点もあります。

画面の文字が小さかったり潰れていると、読み間違いをしてしまうことがあります。そしてそれを読み間違えたまま、まったく異なる誤った回答を出してくることもあるので、写真を撮るときは、特に注意してみてほしい部分を拡大しておく。

また、その出力が本当に合っていそうか、もう一度AIに別の角度から質問して確認したり、ときには自分でリサーチして、公式ページやマニュアルを参考にしてみるといったことも必要になります。

ここまでの話と似ていますが、最後に確かめるのは自分の目と耳。これはここでも変わりませんね。

ぜひ言葉だけでなく、スクリーンショットや写真も使って、音楽制作のちょっとした悩みを解決するツールとしてAIを活用してみてください。

📰 今週の音楽ニュース

スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。
  1. Distortion Guide for Recordists: 歪みの発生原理からサチュレーション・オーバードライブ・ハード/ソフトクリッピングの違い、真空管・ソリッドステート・テープ・デジタルの音色差、多段レイヤリングまでを解説したUAのガイド。

  2. Khotin Remixes Emily Sprague: Emily A. Spragueが10月2日リリースのアルバム『Cyano』に先駆け、Khotinによる「Sing To」リミックスを公開。フルート・パーカッション・明るいビートで原曲の瞑想的な質感を再構築。

  3. KIT Plugins BB Chamber D: KIT PluginsがナッシュビルBlackbird Studios Studio DのリバーブチェンバーをAIモデリングで再現したプラグインをリリース(導入価格$84、通常$120)。ルームサイズ・マイクモデリング・EQ/コンプ/サチュレーション内蔵。

  4. CHOMPI Firmware Discontinued: Chase Blissがサンプリングキーボード CHOMPI のv1.5ファームウェア開発をプロセッサ性能と製造上の制約で終了、オープンソース化を検討中。

  5. RocketVerb Free Until August: 公共空間の実録音と天文データから38種の音響プロファイルを生成するアルゴリズミックリバーブ RocketVerb が2026年8月22日まで無料配布(以降$39)。

  6. PartialString Physical Modeling Synth: Different Instrumentsが1次元波動方程式をリアルタイム数値解法で解く物理モデリングシンセ PartialString を無料公開。最大10ボイス、mac/Win/Linux対応。

  7. MIDIGo Handheld Controller: Phillip Höltgen設計の片手持ちポータブルMIDIコントローラー MIDIGo。8つのプログラマブルボタン、オクターブモード、裏面ポテンショメータ、Bluetooth接続、修理容易性を重視した設計で受賞。

  8. Hybrid Genres Reshaping Music: ChartmetricとSpliceの共同レポート。制作者のサンプルDLジャンル数は年平均52(2018年は30)に拡大し、スーパースター151ジャンル中95がハイブリッド。botanica・jerk・cloud rapが検索上位。

  9. ab Recorder Ambisonics App: Audio Brewers が iPhone 16/17 Pro をアンビソニックスのフィールドレコーダー化するアプリを公開、48kHz WAV(16/24/32bit float)+最大4K動画・GPSタグ・端末の向きに追従するサウンドフィールド回転に対応。

  10. Arturia Rev Ocean Review: Arturia の新作リバーブ Rev Ocean(€49)は Abyss/Foam/Tide の3マクロモードにトランジェントシェイパー・ダッカー・フリーズを備えた創作寄りアルゴリズム機で、MusicTech は「Lexicon/EMT の模倣ではない」と評価しつつ7/10。

🎧サービス・書籍のご紹介

<プラグインメーカー「Okina Audio」>

Okina Audioは、「スタジオ翁」から生まれたプラグインメーカー。

音楽のクオリティは、道具にいくら払えるかではなく、アイデアとセンスで決まるべきです。道具へのアクセスの格差が、そのまま音楽の格差になるべきではありません。

だから、Okina Audioのプラグインは、すべて無料で提供します。

<VSTプラグイン「BinauralShift」>

音響心理学と脳科学に基づいた、「機能性音楽」のためのオーディオプラグイン。

バイノーラルビートを用いて、デルタ波(睡眠)やベータ波(集中)などを科学的に誘発します。バイノーラルビート生成だけでなく、「モノラルビート」 「アイソクロニックトーン」 、さらには「モンロー研究所が開発した特殊なバイノーラルビート」まで、このプラグイン一つで完結。

また、既存のサウンドにバイノーラル変調をかけることで、音楽としての自然さを保ったまま脳波誘導効果を付与でき、Apple「Sound Therapy」のような音楽を自分で作ることもできます。

<Splice作曲メソッド>

音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。

音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。

さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。

<プライベートレッスン>

作曲・ミキシング・マスタリングに関するプライベートレッスンのご案内です。

具体的なレッスン内容は、事前のメールやZoomなどでヒアリングしてから決めていくことも可能です。

まずは、お気軽にご連絡ください。

<著書>

作曲AIに関する書籍です。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.172

2026年7月31日発行

Blog: https://studio-okina.com/