このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。
プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も個人で完結できるようになりました。
あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。
目次
お知らせ
近況
作曲とミキシングのアイデア帳
今週の音楽ニュース
サービス・書籍のご紹介
📢お知らせ
来週、オリジナルVUメーターを無償配布します
ここ数年、デスクに置いているVUメーターは、Hayakumo「Foreno」です。
Hayakumoさんは、一緒にDJミキサーなどを開発する仕事仲間であり、同じ音楽業界をずっと先に歩いてきた先輩でもあります。
VUメーターというと、どうしても古臭いデザインが多いのですが、この「Foreno」はモダンな仕上げで、新しい機材が並ぶデスクにも自然に馴染む。置いてあるだけで、ちょっとテンションが上がる一台です。
ただ、最近は引っ越しや移動が増えて、据え置きの機材を使う機会がめっきり減りました。
そんな中で重宝するのが、デジタルのVUメーターです。
なるべくこの「Foreno」と同じ針の動きのものを、とあれこれ探したのですが、いちばん挙動が近かったのがWavesのVUメーターでした。なので、長らくこれを使ってきたんですよね。
ただ、Wavesはアップデートのたびに費用がかかるのが、個人的にはずっと引っかかっていて、できれば「Wavesのプラグインからは離れたいな」と思っていました。
そこで開発したのが、VUメータープラグイン「Loudness Glass」。

Loudness Glass
「VUメーター」だけでなく、「ラウドネスメーター」「LUFS測定ツール」の3つを、1つのプラグインにギュッとまとめました。
そもそもVUメーターとは、人間の聴覚と直感に、いちばん近い動きで「音の大きさ」を見せてくれるもの。数字の正確さでは測れないこの感覚こそが、楽器の調整や声の調整で、ほんとうに頼りになります。
そのVUの直下に、これまでマスターに別で挿していたラウドネスメーターを同居させました。直近のラウドネスを見るショートタームと、曲全体のインテグレイテッド。VUの針を見ながら、曲全体のラウドネスまで一画面で追えます。
さらに、書き出したファイルのLUFS。これまでは書き出すたびに、RXを立ち上げていたのですが、Loudness Glassならファイルをドラッグ&ドロップするだけで、全体のラウドネスをパッと出すことができます。
Loudness Glassを作ってみると、メーター類をあちこち立ち上げる手間が、思っていた以上に集中を削いでいたんだなと気づかされましたね。
来週の公開に向けて、最終チェック中です。
ぜひ、普段の音楽制作に活用してみてください!
📝近況
ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

先日のMusic Awards Japanで、M!LKが「好きすぎて滅」という曲を披露していました。
気になって、あらためてストリーミングで聴いてみたのですが、これが思いのほか面白い曲でした。
この記事で構造が解説されていたのですが、2回の転調、そして2番からの唐突なクラブミュージックへの切り替え、さらにディミニッシュや借用和音を随所に差し込んで、聴き手を飽きさせない作りになっています。
この「急にクラブミュージックに変わる」展開は、最近よく耳にするなと思っていたのですが、記事によると、K-POPあたりではもう定番の手法になりつつあるそうです。
さて、なぜこういう曲が増えているのか。
その背景には、音楽業界の構造そのものの変化があるように思います。
世界最大手レーベル、ユニバーサルミュージックの関係者いわく、これまではユニバーサルのような大手が才能を発掘して世に広めていたのが、いまは逆。TikTok などでバズったアーティストを、レーベルがあとから拾いにいく。そんな逆転現象が起きているそうです。
この流れの中で目立とうとすると、大事になるのが2つ。
「最初の1~2秒のつかみ」と「飽きさせない展開」です。
YouTubeやショート動画では「最初の数秒が命」とよく言われますが、音楽でもまったく同じ。どれだけこだわって作っても、そもそも聴いてもらえなければ価値がない、と言っても過言ではありません。
だからこそ、自分の個性を散りばめつつ、最初の1~2秒でリスナーの心をガッと掴む工夫がいるのです。
最近の曲がどんどん短くなって、イントロも削られていく流れも、結局は「飽きっぽいリスナーを飽きさせない」ための進化なんでしょうね。
BLACKPINKの「JUMP」も、プロデュースにDiplo が関わっていますが、本人いわく、この曲には5つの異なるジャンル(five different genres)が詰め込まれているのだとか。
とにかく色々なジャンルを放り込んで、新しさと、飽きのこなさを作る。そういう設計ですね。
自分のスタイルは保ちつつ、こうした時代の潮流も意識して、「自分が納得できるもの」と、「世間に届くもの」の妥協点を見つける。
これが、いまの作曲でいちばん難しく、いちばん大事なところなのかもしれません。
それにしても、「好きすぎて滅」ってどういう意味なんでしょう…
謎すぎて滅!
📘作曲とミキシングのアイデア帳
作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやアーティストのAI活用術をご紹介します。

【アーティストがChatGPTを作曲に活用する方法 #3】
ChatGPTが登場した頃から、歌詞制作に活用されている方は多いと思います。
1番を自分で書き、2番をAIに書いてもらう。実は、このような定番手法の他にも、いろんな形でAIを歌詞制作に活用できます。
では、どのように活用できるのか?
まず歌詞生成で大事なのは、「一発で完成形を狙わないこと」です。
最初にたたき台を量産させて、その中から良いものを選び、ブラッシュアップしていきましょう。
例えば、こんな感じで始めてみます。
「再会」をテーマに、サビの歌詞の候補を3つ書いてください。
ありがちな比喩は避けて、それぞれ違う角度から書いてください。すると、このように毛色の違う3つが返ってきました。
候補1:時間が「続いていた」という再会
名前を呼ぶ前に 昨日が息をした
途切れたはずの季節が 何事もなく座りなおす
「久しぶり」なんて 少し遠い言葉だね
会えなかった時間まで 君の隣に戻ってきた
候補2:変化を受け入れる再会
あの日の答え合わせじゃ もう足りない僕らだから
間違えた地図ごと ここまで歩いてきたんだろう
同じ人には戻れない それでも不思議なくらい
初めて会うみたいに ちゃんと懐かしい
候補3:再会を「世界の解像度」で描く
街の輪郭が 少しだけ正しく見えた
君がいるだけで 景色は説明をやめる
会えたことじゃなくて 世界が戻ったんだ
今日という一日は 君の形で完成した
「ありがちな比喩は避けて」と言ったことで、すごくわかりにくい比喩ばかりになってしまいました…
しかし、こうして3つ並ぶと「これは違うな」「この一行はいいな」と、自分の好みの方向がなんとなく見えてきます。
白紙から「いい歌詞」をひねり出すより、目の前に並んだ選択肢に○×をつけるほうが、人はずっとラクなんですよね。レストランで、何もないところから食べたいものを答えるのは難しいけど、メニューを渡されたら「これ!」とすぐ選べる感覚に近いです。
良い候補が見つかったら、それを選んで磨いていきます。
先ほどのは抽象的すぎるので、もっと万人受けしそうな歌詞にしてみましょう。
3番目が好みです。でも少しわかりにくいので、中学生にも理解できる歌詞にして。こうやってラリーを続けているうちに、自分ひとりでは絶対に出てこなかった言葉に、ぽろっと出会えたりします。
AIは何度書き直させても傷つかないので、遠慮はいりません。どんどんいろんな要望を出してブラッシュアップしていきましょう。
そしてピンと来た言葉を繋ぎ合わせたり、そこからインスピレーションを受けて新たな歌詞を作ったりして、歌詞を完成させていきます。
Aメロができているなら、その続きを書いてもらうのも定番ですね。
このAメロに続くサビを、同じ語り口とテンポ感で、候補を3つ書いてください。
(ここにAメロの歌詞を貼る)さて、ここで大切なのは、出てきた言葉をそのまま採用しないこと。あくまでたたき台として受け取り、最後は必ず自分の言葉に書き直します。
歌詞だけでなく、文章生成をAIに丸投げするのは、現時点では良い方法とは言えません。
AIが書いた文章はどこまでいってもAIっぽく、読む人は案外、その「違和感」に気づきます。
そして、これも意識したい大切なポイントです。
AIは、最初と最後の10%で使う。
音楽の方向性を決める最初の10%のアイデアをAIに書いてもらい、80%を人間の手で、そして最後の10%をAIに校正・チェックしてもらう。
歌詞だけでなく、AIで文章を書くときにも意識したい数字ですね。
AIを使えば簡単にすごい歌詞が量産できる!と思いがちですが、決してそんなことはありません。AIをうまく使いつつも、最後はアーティストの感性で仕上げることが大切なのです。
AIは、下手に使うと駄作を量産するマシンと化しますが、うまく使えば、最高のパートナーになってくれるでしょう。
歌詞がなかなか完成しない時、白紙の前で固まってしまったときは、ぜひ一度、ChatGPTと協力してアイデアを練ってみてください。
📰 今週の音楽ニュース
スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。

Mastering the Mix Stereovault: X/Y インターフェースで周波数帯ごとのステレオ幅を直感的に調整できるマスタリング向けプラグイン。マスタリングの強力な武器になり得るが、かけすぎ注意との評価。
NTS Radio Player: NTSとAtonemoが出した、アルゴリズムに頼らずNTSのキュレーション局・ミックステープを既存スピーカーで流す画面なしWi-Fiストリーマー。
Maono PD500W AI Mic: 「世界初のAI搭載ハイブリッドマイク」を謳うMaonoのクリエイター/ポッドキャスター向け機種。ポップノイズ除去・音量調整のAI処理、USB-C/XLR/ワイヤレス接続、32GB内蔵、文字起こし/翻訳ソフトを備える。
Synths Belong in Museum: Dato DUOやSOMA Enigmaなど、音響性能と美学を兼ね備えた芸術品級の個性的シンセ/ドラムマシン5選を紹介。
Jon Hopkins Technique: ジョン・ホプキンスが『Immunity』で使ったリバーブ+ビットクラッシャーの特徴的な音響技法をプラグインで再現するチュートリアル。
AIAIAI Japan Launch: デンマークのモジュラー・ヘッドホンブランドAIAIAIが銀座十字屋ディリゲント経由で日本国内販売を開始。
Flexur DIY Synth: トラウトニウム由来のタッチバー操作シンセ「Flexur T2」($1,399・先行予約完売)の表現力豊かなDIY楽器を紹介。
KeyComp Shrinks Orchestra: ミュージカルのピット楽団がKeyCompソフトの導入で人員削減され、残る奏者が多数の楽器を兼任させられている現状を報じる。
Social Media Promo Ideas: インディーアーティスト向けに、売り込みでなく「コミュニティへの招待」として機能する有機的なSNS発信10戦略を紹介。
Harmonal Binaurics Drone: Faded Instrumentsがバイノーラルビート/アイソクロニックトーンを統合した7基ドローン発振のiPadOS/macOS用シンセ($12.99)をリリース。
🎧サービス・書籍のご紹介

<Webアプリ「RoomTune」>
ルームチューニングのためのアプリを開発しました。
もう何度もスピーカーを動かして、部屋鳴りを確かめる必要はありません。
何回使っても無料です。
<VSTプラグイン「Mycelium FX」>
「monome norns」という、小さな実験的サウンドコンピュータの世界で愛されてきた、伝説的なオーディオエフェクトたち。
その代表的な11個を、ひとつのVST3 / AU プラグインに統合しました。
テープエコー、グラニュラー、タイムストレッチ、シマーリバーブ、ブレイクコア・スライサーなど、nornsコミュニティが何年もかけて育ててきたサウンドを、あなたのDAWに持ち込めます。
メルマガ読者限定 100%オフクーポン: smw3e5v
<VSTプラグイン「BinauralShift」>
音響心理学と脳科学に基づいた、「機能性音楽」のためのオーディオプラグイン。
バイノーラルビートを用いて、デルタ波(睡眠)やベータ波(集中)などを科学的に誘発します。バイノーラルビート生成だけでなく、「モノラルビート」 「アイソクロニックトーン」 、さらには「モンロー研究所が開発した特殊なバイノーラルビート」まで、このプラグイン一つで完結。
また、既存のサウンドにバイノーラル変調をかけることで、音楽としての自然さを保ったまま脳波誘導効果を付与でき、Apple「Sound Therapy」のような音楽を自分で作ることもできます。
<Splice作曲メソッド>
音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。
音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。
さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。
<プライベートレッスン>
作曲・ミキシング・マスタリングに関するプライベートレッスンのご案内です。
具体的なレッスン内容は、事前のメールやZoomなどでヒアリングしてから決めていくことも可能です。
まずは、お気軽にご連絡ください。
<著書>
作曲AIに関する書籍です。
アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。
<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>
ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。
使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。
プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。
<Chrome拡張>
AI時代は、MYOG(Make Your Own Gear)の時代です。
アーティストが道具を自分で作る未来を模索中。その研究成果として2つのウェブアプリを開発しました。
週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.167
2026年6月26日発行
Blog: https://studio-okina.com/

