このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. 近況

  2. 作曲とミキシングのアイデア帳

  3. 今週の音楽ニュース

  4. サービス・書籍のご紹介

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

画像生成で有名なStability AIから「Stable Audio 3.0」が公開されました。

注目すべきは、生成できる曲の長さがぐんと伸びて、6分超まで作れるようになったこと。これまで3分前後だったので、フルサイズの曲がスッと出てくるようになったのは大きいですね。

しかも、音質がなかなか良い。Sunoと比べればまだAI特有のノイズっぽさは残るものの、距離はだいぶ詰まりました。

これまでのStable Audioは「品質はそこそこだけど、商用利用ライセンスが整理されているので使いやすい」という、どこか実務寄りの立ち位置だったんですよね。

ところが、2.5から3.0への進化で、その距離が一気に縮まりました。近いうちにSunoと肩を並べるのではないか、というのが、実際に触ってみての体感です。

そして、機能面で面白いと感じたのは「Audio to Audio Editing」。

自分で作ったループや歌を投げ込んで「これをこういうスタイルでリミックスして」と指示すると、原型をうまく残したまま、別の曲に仕立て直してくれます。Sunoにも似た機能はありますが、「テキストから一発で全部作る」よりも、「自分のスケッチを下敷きに、音楽のアイデアを得る」みたいな作曲AIの使い方が、今後はより広まっていきそうですね。

さらに、Inpainting(曲の一部だけを再生成する機能)も追加され、「この箇所のドラムを修正したい」「このメロディの転調が気に入らない」といった部分修正にも対応できるようになりました。まだ細かい指定までは難しいものの、多くのユーザーが待ち望んでいる「特定箇所の微調整」までは、もう一歩というところまで来ている気がします。

さて、3.0で大きく進化したStable Audioですが、そもそもどのようにスタートしたのか。簡単に、歴史を振り返ってみましょう。

最初のStable Audio 1.0が登場したのは、2023年9月。テキストから商用品質の楽曲を生成できる本格的なモデルとして、話題になりました。

そこから2.0で曲の長さが3分に伸び、Stable Audio Openとしてオープンソース版が公開されます。2.5でイントロ・展開・アウトロといった楽曲構成が扱えるようになり、そして今回の3.0で、ついに6分超まで生成できるようになったのです。

ちなみに、もう一つ触れておきたいのが、Stability AIという会社の根っこにある思想です。

創業者のEmad Mostaqueは、Stable Diffusionをリリースした2022年当時から、「AIは、少数の大企業が独占するものではない。誰もがアクセスし、カスタマイズし、所有できるものであるべきだ」と繰り返し語ってきました。

この思想の背景には、Mostaque自身のかなり個人的な物語があります。

ひとつは、自閉症のお子さんの存在。既存の教育環境でうまく馴染めない我が子と向き合うなかで、「テクノロジーが一人ひとりに合わせて寄り添えれば、世界の見え方は変わる」という確信を持つようになったそうです。AIを画一的な道具ではなく、個人ごとにカスタマイズできるものとして広めたい、という発想の原点はここからでしょうね。

もうひとつは、ヘッジファンドのアナリストとして活躍したあと、そこから離脱した経験。お金がお金を生むだけの世界に違和感を覚え、その後、途上国でのAI活用プロジェクトに関わっていきます。電気や教育インフラが整っていない場所にこそ、AIのレバレッジが効くはずだ、というのが彼の持論です。

こうした要素が重なって、「AIは、教育・創造・エンパワーメントのツールとして、開発途上国の若者や個人のクリエイターの手元に届けるべきだ」という、彼の発信の核ができあがっているわけです。

SunoやUdioが「曲そのものを生成し切る」方向に進む中、Stable Audioが「素材」「部分編集」「自分のスケッチを引き上げる」方向にこだわり続けているのは、こうした思想が下敷きにあるからなんですね。

ここで話は逸れますが、僕が尊敬している仕事の上司は、ClaudeとGrokという、思想の違う2つのAIを普段から使い分けているそうです。

Claudeは軍事利用を断ったり、安全性の懸念から新しいモデルの公開を見送ったりと、慎重な姿勢が一貫しています。一方、イーロン・マスク率いるGrokは「AIが真実を隠さないよう、自由を最大化する」という彼の思想を反映し、エロも含めて何でもありの、かなり自由なLLMになっています。同じ「LLM」というカテゴリーに括られていても、背後にある思想が違えば、出てくるアウトプットも、使いどころも、異なってくるわけです。

これは、AI作曲ツールにもそのまま当てはまる話ですよね。

「曲そのものを一発で作りたいのか」「素材から自分の手で組み立てたいのか」「自分専用のモデルを育てたいのか」という機能面の違いに加えて、「そのツールがどんな思想で作られているのか」をセットで押さえておくと、今後の進化の方向も、自分のワークフローへの取り入れ方も、ぐっと予想しやすくなる気がしています。

そしてAI作曲は、Sunoだけが選択肢ではありません。

日本では「AI作曲 = Suno」のイメージが一気に広がりましたが、ACE-Stepというオープンソースの音楽生成モデルも、ここ1年で急速に育ってきています。

これは自分のPC上でローカルに動かせるタイプで、ユーザーがモデル自体をカスタマイズできる余地もあって、今後の進化が楽しみなAI作曲ツールの一つです。

今後は、音楽全体のラフを作りたいときはSuno、リミックスならUdioかStable Audio、自分だけのオリジナルモデルで音楽を作るならACE-Stepという具合に、用途で使い分ける時代に入っていくことになるでしょう。

良いツールを選ぶ目に加えて、良い思想を選ぶ目も、これからのAI時代に問われることの一つなのかもしれません。

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

Serumを「ノイズジェネレーター」として活用する

シンセメロディやアルペジオに、もう一段アタック感や存在感を足したいときに、最近よく使っているのが「Serumのノイズ」です。

先日、新しい曲のシンセメロディを組んでいたのですが、いまひとつ存在感が足りない、というかトラックの中に埋もれてしまう感じがあったんですよね。EQで持ち上げたり、リバーブを足したり、ひと通り試してもどうにもパッとしない。

そこで、別トラックでSerumを立ち上げて、ノイズだけのトラックを作りました。これを、シンセメロディとまったく同じMIDIで演奏させてレイヤーします。

これだけで、メロディが一気に「立つ」感覚になります。原音の上にカチッとした粒が乗るイメージで、ピックアタックや指のはじき、息遣いに近い質感が足される。とくにアルペジオでは効果抜群で、1音1音の輪郭がくっきりして、サウンドもぐっと前に出てきます。

Serumがいいのは、ノイズの種類が本当に豊富なところ。White、Pinkといった基本系から、テープ感のある粗めのノイズ、アナログノイズまで揃っているので、いま鳴っているシンセの音色やトラックの雰囲気に合わせて、ノイズの「色」を選べるんです。明るいリードには高域寄りのノイズ、温かいパッドには粗めのノイズ、と組み合わせるだけで、馴染み方がまったく違います。

ボリュームはかなり控えめで、原音より20dBくらい下から入れて、抜いたときに「あれ、物足りないかも」と感じる程度に調整するのがコツです。混ぜすぎると単純にノイジーなトラックになるだけなので、あくまで「隠し味」として使ってみてください。

シンセが地味だな、と感じたら、EQやコンプで調整するのも良いですが、試しにノイズをレイヤーしてみてください。これだけで、ミックスの中での存在感が、ぐっと変わりますよ。

📰 今週の音楽ニュース

スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。
  1. oeksound Soothe3 Release: oeksoundがフラッグシップのダイナミックレゾナンス抑制プラグインSoothe3を発表。アルゴリズム刷新で低レイテンシーモードと最大9.1.6マルチチャンネル対応を追加($259、Soothe2からは$55でアップグレード可)。

  2. Carlos de la Garza Interview: Paramoreなどを手掛けるプロデューサーCarlos de la Garzaが「みんな同じプラグインを使う時代、ユニークな音こそ差別化になる」と語り、ヴィンテージハードと現代技術の融合・初期段階での音決めの重要性を強調。

  3. Splice × ElevenLabs: SpliceがAI音声大手ElevenLabsと提携し、スタジオ品質のAIオーディオモデルをSpliceワークフローに統合する新ツールを年内ローンチ予定。「クリエイターファースト」の責任あるAI音楽制作を掲げる。

  4. DIY Sampler Tutorial: 録音した素材をDAW上でキーボードにマッピングし自分専用のサンプラー楽器を作る入門ガイド。MIDIキー割当・パッチ保存に加えてラウドネス正規化・ギャップトリム・オクターブ整理など6つの最適化テクニックを解説。

  5. Soothe3 Rebuild Details: Soothe3はアルゴリズムをゼロから再構築し「日常的な処理でより透明」に。低レイテンシーモード・9.1.6マルチチャンネル・Detail統合パラメータ・新Tilt/Max Cutオプション・より明確なSoft/Hardモードを搭載。

🎧サービス・書籍のご紹介

<VSTプラグイン「BinauralShift」>

音響心理学と脳科学に基づいた、「機能性音楽」のためのオーディオプラグイン。

バイノーラルビートを用いて、デルタ波(睡眠)やベータ波(集中)などを科学的に誘発します。バイノーラルビート生成だけでなく、「モノラルビート」 「アイソクロニックトーン」 、さらには「モンロー研究所が開発した特殊なバイノーラルビート」まで、このプラグイン一つで完結。

また、既存のサウンドにバイノーラル変調をかけることで、音楽としての自然さを保ったまま脳波誘導効果を付与でき、Apple「Sound Therapy」のような音楽を自分で作ることもできます。

<Splice作曲メソッド>

音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。

音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。

さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。

<プライベートレッスン>

作曲・ミキシング・マスタリングに関するプライベートレッスンのご案内です。

具体的なレッスン内容は、事前のメールやZoomなどでヒアリングしてから決めていくことも可能です。

まずは、お気軽にご連絡ください。

<著書>

作曲AIに関する書籍です。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

<Chrome拡張>

AI時代は、MYOG(Make Your Own Gear)の時代です。

アーティストが道具を自分で作る未来を模索中。その研究成果として2つのウェブアプリを開発しました。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.162

2026年5月22日発行

Blog: https://studio-okina.com/

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