このメルマガは、AIや最新テクノロジーをいち早く取り入れ、新しいアプローチで音楽を生み出す「次世代のクリエイター」に向けて書いています。

プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代。AIや最新のテクノロジーを活用することで、本来ならエンジニアに任せる仕事も個人で完結できるようになりました。

あなたがプロの音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AIを活用した次世代の音楽制作や、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。

目次

  1. お知らせ

  2. 近況

  3. 作曲とミキシングのアイデア帳

  4. 今週の音楽ニュース

  5. ブログ、note更新のお知らせ

  6. サービス・書籍のご紹介

📢お知らせ

スタジオ翁 初のVSTプラグイン「BinauralShift」、5月1日リリース

ついに完成しました!

スタジオ翁として初めてのオーディオプラグイン「BinauralShift」を、5月1日にリリースします。

音を聴くだけで、集中したり、深くリラックスしたり、眠りに落ちたりできる。そんな「機能性音楽(Functional Music)」と呼ばれる領域が、いま世界的に急成長しています。

Brain.fmやEndelは数千万ユーザーを抱え、Apple Musicも「Sound Therapy」というサービスを開始するなど、音楽は「娯楽」から「心身を整える技術」へと、静かに意味を変え始めています。

BinauralShiftは、その機能性音楽を、自分の手で自由自在に操るためのプラグインです。
(機能性音楽の詳細は、こちらのブログ記事に詳しくまとめています)

そして単なるバイノーラルビート生成にとどまらず、半世紀にわたってモンロー研究所が磨いてきた脳波を変容させる特殊な干渉パターンや、MITが実証した40Hzガンマ刺激の再現まで、最前線の知見を一つのプラグインに凝縮しました。

これまで、こういった音楽を「聴く側」のサービスは急成長する一方、「作る側」のツールは世界中を探してもほとんど存在しませんでした。この空白を、ようやく埋めるプラグインとなっています。

なお、今年開催したノマドアカデミーの受講生およそ200名の皆さんには、特別割引もご用意しています。

この機会に、ぜひ新しい音の地平に足を踏み入れてみてください!

📝近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

今週は、アメリカ・オレゴン州に来ています。

なぜこんな所にいるのか?

この夏、サイケデリックセラピー用の音楽を制作する機会をいただいたため、実際にマジックマッシュルームを体験し、「キノコを摂取している最中、音はどう聴こえるのか、何が心地良くて、何が体験を邪魔するのか」を、身をもって確かめておくのが目的です。

ご存知の通り、マジックマッシュルームは日本では違法ですので、わざわざオレゴンまで飛んできた、というわけですね。

僕自身は、2年ほど前から、世界各国でサイケデリクスを扱うクリニックや研究者への取材に同行してきました。その間に、PTSDを抱える患者、戦場帰りの兵士のケアに、マジックマッシュルームやMDMA、ケタミンを用いた治療が、海外では着実に結果を出しつつあることも肌で感じてきています。

先日、トランプ大統領もサイケデリクスの研究推進を表明しましたが、日本ではまだ「違法ドラッグ」のイメージが強いこれらの物質が、国民のメンタルヘルスや国力そのものに直結する、という認識が、世界の主要国では共通のものになりつつあるんですよね。

この流れにいち早く気づいて法改正に動いた国が、次の10年で大きく伸びる。そういう大きな転換点に、世界全体が立っているような感覚があります。

そして、今回僕が体験しているマジックマッシュルームは、いわゆる「パーティードラッグ」的な使い方ではなく、自分の内側と静かに向き合い、深く見つめ直すきっかけとして使うタイプのものです。

まず、事前に「インテンション(意図)」を設定します。「この旅で、自分は何を得たいのか」を、先生と一緒に言語化しておくわけですね。その後、儀式的にキノコをすり潰して液体状にしたものを飲み、5〜6時間の旅に入る、という流れです。

面白いのが、トリップ中のfMRI画像です。

通常、人間の脳のネットワークは10%程度しか使われていないと言われますが、サイケデリクス体験中は、普段は繋がっていないはずの領域同士が膨大に連携し、まるで子供の頃のシナプスが復活したかのような状態になります。これは研究データとしても裏付けられているところです。

効果の出方は人それぞれですが、僕の場合は2秒に1回くらいのペースで”気づき”が訪れ、「ああ、そうか、これはこうだったのか」が数時間、ぶっ続けで押し寄せてきました

正直、相当疲れました。

ただ、この数時間で得たものは、人生の中で5年、10年かけてようやく辿り着くような気づきの塊でした。

内容は神秘体験的なものが多く、ここにはとても書ききれませんが、体験直後、取り憑かれたように近くの先生に延々と話し続け、自分でもメモを取り続けていたのを覚えています。

1冊の本になるくらいの密度の体験だったので、またどこかで改めてまとめたいと思います。

宇宙からのメモ

さて、肝心の「音楽」について。

体験中、深く実感したのが、この状態の意識に合うのは、圧倒的に“アーシーな音”だということでした。

森や土を連想させる響き、自然な生楽器の音、息遣いの感じられる演奏。逆に、ハイハットのような鋭い金物の音、デジタル的に硬いシンセ、打ち込み感の強いビートは、体験をそのまま削ってしまうような違和感がありました。「優しい、生々しい、有機的な音」 にチューニングを合わせる必要がある、と、身体で理解できた感覚です。

問題は、このトリップが5〜6時間続くという点です。

つまり、5〜6時間ぶんの、途切れない音楽をゼロから作らなければいけない。しかも、この制作期間はわずか2ヶ月。1日1曲以上のペースで仕上げ続けてようやく間に合うかどうか、というスケジュールですので、AIに頼らざるを得ないというのが、正直なところです。

ただ、ここまで書いてきた通り、サイケデリック体験に本当に必要な音は、生楽器や人の息遣いが宿った、有機的な音でした。そして、今のAI作曲ツールが出してくる音は、どうしてもまだ「機械的」です。

ですので、AIで骨格を素早く生成し、人間が生楽器で血を通わせる「ハイブリッド作曲」 が、今回のプロジェクトの主戦場になります。

ハイブリッド作曲は、もともと今年のテーマの一つとして掲げていたものでしたが、こうして期限付きの現場に追い込まれたことで、嫌でも2ヶ月間、この領域をとことん掘り下げざるを得ない状況になったわけです。窮地ではありますが、同時にこの上ない学びの機会でもあり、終わる頃には、このテーマに関しては日本でも有数の知見が得られているんじゃないかと期待しています。

さて、これから具体的に動き出すこととしては、まず楽器の選定と購入です。

モジュラーシンセはサイケデリック体験に合う、という手応えがあったので、いくつか買い足します。加えて、生楽器のラインナップも拡充予定です。

そして、これまで挑戦してこなかった「歌」にも、今回踏み込みます。

といっても、歌詞が入ると体験の邪魔になってしまうので、言葉のない、コーラスやパッドのような声を想定しています。ボーカル処理はこれまで他人のボーカル曲のミックスくらいしかやってこなかったので、知見はほぼゼロに近い状態。でも、これもまた、今回掘り下げるべき大きな鉱脈になりそうです。

「AIで陳腐な曲を大量に量産するのではなく、AIだからこそ挑戦できる領域に踏み込む

作曲AIが登場してからずっと考え続けてきたこの指針を、今回のプロジェクトで探究できるのは、個人的にもとても楽しみです。

さらに、冒頭でご紹介した機能性音楽のプラグインもふんだんに使っていきます。

サイケデリック体験中の意識は、通常時よりはるかに可塑性が高く、音楽の誘導力が劇的に増します。裏を返せば、音楽の設計次第で体験の質をコントロールできる、ということでもあるので、ここで機能性音楽の知見が重要な役割を果たしてくれるはずです。

AI、科学など、音楽の世界だけでは完結しない知識を総動員するプロジェクトになりますが、これ以上ワクワクする仕事もなかなかありません。

この2ヶ月で得た知見や制作プロセスは、メルマガを中心にnote・ブログでどんどん還元していきます。皆さんの制作技術や知見の拡張にも、きっと使えるものになるはずなので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

そんなわけで、来週から本格的に制作モードに突入します!

📘作曲とミキシングのアイデア帳

作曲やミキシングが上達する動画・記事・アイデア・最新のAIプラグインやAI作曲ツールをご紹介します。

「2025年ベストプロダクションTIPSまとめ」、という動画が良かったのでご紹介します。

Take Notesというポッドキャストが、2025年にインタビューしてきたアーティストたちの「制作のキモ」を10個に絞ったベストオブ集。

全部は紹介しきれないですが、見ていて特に共通していたのが、「楽器じゃないもの、整っていないもの、偶然性のあるもの」をどう音楽に織り込むか というテーマでした。

今回は、その軸に沿った3つのアイデアをご紹介します。

① Sound Harvest - 自分たちで“汚れた”サンプルを作りだす

最初に紹介されていたのが、「Sound Harvest(音の収穫)」という作業です。

スタジオに仲間を呼び、ビールを数本開け、楽器を一つだけ選ぶ。たとえばJuno。それをペダル類やギターアンプ、変なシグナルパスに1〜2時間ずっと通し続けて、ひたすら録音します。ベースラインっぽい演奏、リード的な演奏などなど、プレイヤーも入れ替えながら、ゲインは全部上げっぱなしで好き放題やってみるのです。

で、溜まった大量の録音を、後から「サンプル」として切り刻んで使っていく。

面白いのが、全部自分たちの音のはずなのに、出来上がる質感が「古いレコードやフィールド録音からサンプリングしてきたような手触り」になること。EQでは絶対に消せないノイズや、ゲインを攻めた瞬間に生まれる揺らぎが最初から乗っているので、整ったサンプルパックでは絶対にたどり着けない温度感が出る、というわけです。

僕も普段、Spliceに頼ることが多々あるんですが、「自分の手で、意図的にラフに作ったサンプル」こそ一番キャラクターを持つというのは、以前からずっと考えていることでもあります。

② 雨の音を、EQで“楽器”に変える

次に紹介されていたのが、LAで録音した雨の音を、楽曲の中で「ドローンノート」として鳴らすテクニックです。

やり方はシンプル。録音した雨の音にFabFilter Pro-Qを挿して、特定の周波数、たとえば390Hz(ちょうどG4に近い)を思い切り持ち上げる。すると、雨のホワイトノイズの中に「音程感」が浮かび上がってくるんですね。そこから薄くEQで削って、ベロシティでちょっとクランチーにしてあげると、曲全体に敷ける“音程のある空気”が完成する。

これも同じく「誰にも真似できないテクスチャー」になる、という点がポイント。

Spliceで買ったホワイトノイズではなく、自分たちのスタジオの外で、その日たまたま降っていた雨。ここに、場所と時間の固有性が詰まっているわけですね。

この発想、雨じゃなくても応用はいくらでもできます。街の雑踏、部屋のエアコンのファン、近所の踏切の音、スタジオの外の蝉の声。どれもEQとボリュームの工夫だけで、立派なパッドやドローンになります。

「その場所の空気を、そのまま楽曲に織り込む」 のは、AIサンプル全盛の時代にこそ効いてくる手法だと思いました。

③ 友人の叫び声を、走らせながら録る

最後は、ちょっとワイルドな一本です。

Phoebe Bridgersのアルバムで印象的に使われていた「スクリーム(叫び声)」に影響を受けて、ドラマーの友人に思いっきり叫んでもらったトラックを重ねた、というエピソードです。

面白いのが、ライブルームの中を走り抜けさせながら叫んでもらった こと。走ることで、ルームマイクに届く声のラウドネスや距離感が自然に変わり、ドップラー的な動きが勝手につく。

そしてミックスでは、その叫び声をかなり奥に埋めている。前面に出すわけではなく、全体のテクスチャーの一部として薄く混ぜておく。

結果、聴き手は「なんかこの曲、ちょっと落ち着かないな」と、理由がうまく言語化できないまま感じ取ることになります。「何か」引っ掛かりを、曲の奥深くに忍ばせるわけですね。

これ、「叫び」というと過激に聞こえますが、別に叫ばなくても原理は同じで、「深呼吸」「咳払い」「吐息」など、人間の生の声を曲の隙間に埋めておくだけでも、似た効果は得られると思います。

サンプルライブラリの“きれいな息”ではなく、自分の口で今、発した音 を使うという部分がポイントです。

さて、ここで取り上げた3つのテーマに共通するのは、「楽器じゃないもの、整っていないもの、今この場所にしかないもの」を、音楽の中に持ち込む、という点です。

AI作曲ツールやサンプルパックが進化すればするほど、「誰でも簡単に綺麗な音」が手に入るようになっていきます。でもそのぶん、“整っていない音”の価値は逆に上がっていく と、個人的には思うんですよね。

ペットボトルを潰す音、雨の日の窓、自分の寝息、台所の包丁の音。そんなものでも、EQとボリュームとレイヤーの工夫だけで立派な「その人だけの音」になる。これは、世界中のサンプルパックをいくら買っても手に入らない領域です。

たまには完成に向かって突き進むのではなく、プロジェクトをいったん脇に置いて、こういう「意味のない録音」の時間をとってみるのも良さそうですね。結果的に、次の楽曲に効いてくる素材が、自然と手に入っているかもしれませんよ。

📰 今週の音楽ニュース

スタジオ翁独自の視点で厳選した、世界の最新音楽ニュースをお届けします。
  1. Ziggy Marley 432Hz: Ziggy Marleyが新作『Brightside』を432Hzチューニングで制作、自作スタジオと個人的楽曲作りにシフトした経緯を語る。

  2. Kris Bowers Splice Pack: Oscar受賞作曲家Kris BowersがSplice Soundsでサンプルパックをリリース、感情起点のピアノ即興から生まれたジャジー/ノワール系音源を公開。

  3. Objeq Delay 2: Applied Acoustics SystemsがObjeq Delay 2をリリース、共鳴物体モデリングで単なる反響を超えた打楽器的・金属的な空間表現を実現するディレイプラグイン。

  4. Splice Generative AI: Spliceが原作者に公正報酬を払う生成AIツール3種を発表、サンプルから5バリエーション生成するVariationsと演奏可能楽器化するCraftを搭載。

  5. Best Producer Headphones: 制作・DJ・ミキシング用ヘッドホン10選の購入ガイド、Sennheiser HD 490 Proを総合ベストに選出し99ポンドから1749ポンドまで網羅。

  6. Splice Sounds Plugin: Splice Sounds Plugin(ベータ)がDAW内からライブラリ検索・バリエーション生成・自然言語検索・リアルタイム和声マッチングを提供。

  7. Tim Exile Reaktor Modular: Tim ExileがReaktor上で動くモジュラー制作システムを開発、楽器/エフェクト/MIDIジェネレータを自由結合、プロトタイプ版49ポンドで提供中。

  8. Stem Checker: macOS向け新アプリStem CheckerがDAW読み込み前にクリッピング・サンプルレート・音ズレを自動検出、月額3.99ポンド。

  9. PPG Modular 300: PPGがWolfgang Palm設計の幻の1975年モジュラーシンセModular 300を現代復刻、PPG 1002 Mk2(9,790ドル)以上の価格設定を予定。

  10. AI Prompts Into Plugins: ChatDSPやAmorphなどプロンプトからオーディオプラグインを生成するAIツールの台頭と、民主化の可能性と著作権・環境負荷などの倫理的課題を論じた記事。

📝ブログ、note更新のお知らせ

🎧サービス・書籍のご紹介

<Splice作曲メソッド>

音楽制作に悩む初心者・中級者におすすめです。

音楽理論や楽器の演奏からスタートする「従来の作曲法」とは異なるアプローチにより、「アイデアが浮かばない」「どこから始めればいいか分からない」といった悩みを解決。アイデアがない状態から1曲を完成させる、実践的なテクニックを身に付けます。

さまざまなジャンルの音楽をゼロから作っていく様子までご覧いただくことで、実践に即した体系的なメソッドを学び、良い音楽を量産する方法を身に付けることができます。

<プライベートレッスン>

作曲・ミキシング・マスタリングに関するプライベートレッスンのご案内です。

具体的なレッスン内容は、事前のメールやZoomなどでヒアリングしてから決めていくことも可能です。

まずは、お気軽にご連絡ください。

<著書>

作曲AIに関する書籍です。

アイデアの出し方から作曲、アートワーク制作に至るまで、音楽制作からリリースまでの一連の流れにAIをフル活用する方法を解説しています。購入はKindle Unlimitedで。

<Suno AI、Udio用プロンプト生成ツール>

ChatGPTで使える、プロンプト生成ツールを作りました。

使い方は簡単。自分の好きなアーティスト名を入力するだけで、そのアーティストの特徴を出力してくれます。それを、Suno AIやUdioなどのプロンプトとして入力することで、そのアーティストのテイストに近い音楽を、AI作曲ツールが生成してくれます。

プロンプト選びに悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

<Chrome拡張>

AI時代は、MYOG(Make Your Own Gear)の時代です。

アーティストが道具を自分で作る未来を模索中。その研究成果として2つのウェブアプリを開発しました。

週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.158

2026年4月24日発行

Blog: https://studio-okina.com/

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