週刊「スタジオ翁」ニュースレター 創刊号

メルマガ、始めます。

ブログをスタートさせて、3年ほどが経ちました。

初めは自分の知識のアウトプットの場として始めたのですが、最近ではありがたいことに「ブログ読んでます!」と直接お声がけを頂くことも増えました。

今では、月に7万人以上の方に読んで頂いており、少しでもみなさんの音楽制作のお役に立てるように日々、ブログを更新し続けています。

クラブエンジニアとして音楽業界でのキャリアをスタートさせましたが、最近ではクラブでの音作りの経験を生かして、クラブミュージックのミキシングやマスタリングの依頼も受けています。

2022年からスタートさせた映画音楽の作曲・MA・録音の仕事が最近の主な活動領域ですが、刺激的な毎日で、日々、音楽や音に対する新しい発見があるので、今までの蓄積に加えて、ここらへんの日々アップデートされていく情報も共有していきたいと思い、メルマガを始めることにしました。

アウトプットの場という意味ではブログと似ていますが、メルマガは毎週発行ということもあって、その時その時で僕が感じているリアルタイムの情報をいち早くお届けできる場所であり、ブログのように大勢の方に向けた情報発信ではなく、音楽制作を楽しむコアな方々にお届けできるようなディープなものでありたいと思っています。

さて、メルマガといっても何を書こうかと迷いましたが、近ごろ取り組んでいること、日々チェックしている音楽ニュースやプラグインの最新情報について、といった親しみやすい話題から書いていき、徐々にコンテンツを増やしていく予定です。

あとは、時々メールで音楽制作や機材に関するご質問をいただくことがあるのですが、確かにブログにはコメント欄がないので、メルマガで何かご質問をいただいて、こちらで回答していこうと思います。

というわけで、目次はこんな感じです。

  1. 近況

  2. 世界の音楽ニュース

  3. 未来をつくる音楽機材

  4. 今週の映画音楽

  5. Q&A

  1. 近況

ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。

去年の末から今年にかけて吸音材を制作していたのですが、1月に自作吸音材を完成させることができました。

見た目がすごく雑なのはお許しください・・・

でもこれがめちゃくちゃ部屋鳴りを解消してくれて、音像がよりはっきり見えるようになるんです!

吸音材は良いものだと数十万円もするので、作れるなら絶対自作したほうが良いです。(グラスウールを取り扱うため、軍手やマスクは必須、周囲に迷惑がかからない作業スペースも必須なので、ハードルは少し高めですが…)

僕の場合、板状のグラスウールを楽天で購入し、布を貼り付けるだけの作業だったのですが、本当は低音もしっかり吸収できるロールタイプの吸音材にしたかったんですよね・・・

ただ、ロールタイプのグラスウールが簡単に手に入らなかったため、壁に立てかける板状のものにしましたが、理想はjesse ray ernsterというグラミーエンジニアが自宅スタジオで使用している、このような吸音材でした。

2022年のサンレコマガジンにも、彼のスタジオが紹介されていましたね。

円柱状の吸音材は、円の直径が大きければ大きいほど低音までしっかり吸音してくれるので、円柱状のグラスウールを手に入れられる方、円柱状の吸音材を置けるだけの部屋の広さがある方はぜひ作ってみてください。

グラスウールは断熱材なので、円柱状のものはパイプ用の断熱材として販売されています。

いろんな種類のグラスウールが販売されていますが、「JIS A 6301」という規格が付いていれば吸音材として使用できるので、これを1つの目安にして探してみましょう。

jesse ray ernsterは、Mixlandというサイトで自作プラグインも販売していますが、合わせて、DIYで吸音材(チューブトラップ)を作る方法が書かれたPDFを無料で公開しているので、本気で作ってみたい人はこちらをダウンロードすることをおすすめします。 

彼はプラグインのみでミキシングを完結させていて、僕の1つの目標であり、未来のエンジニアの姿だと思います。

2. 世界の音楽ニュース

音楽の世界は日々進化しているので、音楽制作の環境もビジネスの方法も、数年経てばガラリと変わってしまいます。日々、世界の音楽トレンドを探ることで、ワクワクするような新製品・新たな音楽サービスを発見し、また、今後アーティストが生き残るためのヒントを見つけ出します。

  1. Mix’s Gear of the Year 2022, Part 1 →mixonlineが発表した、2022年のベストギア集です。普段使っているものや試したことがあるものも多いですが、今はADPTR AUDIO SCULPTが気になっていて、色々試しながら使ってみています。なかなか難しいですね、これは。

  2. d&b audiotechnik Launches Immersive Business Unit→著名スピーカーブランドのd&bがイマーシブビジネス部門を立ち上げました。昨年タイのWonderfruitに遊びに行ったのですが、そこでは360°イマーシブオーディオに対応したDJ、ライブスペースがあり、イマーシブの未来を感じました。d&bという大手ブランドがこういった部門を立ち上げたことは、今後の流れを把握する上で重要な出来事だと感じます。

  3. 10 controversial predictions for the music business in 2023→ダラスにあるテクノロジー企業、INRのマネージング・ディレクターAustin Staubusが、2023年の音楽ビジネスについての予想を公開しています。この中で目を惹かれるのは最後の、「1.) アーティストよりも楽曲の方が重要になる。将来、この洞察を理解する根本的な新しい「メジャー」が生まれ、世界最大のレコード会社であるUniversal Music Groupを退位させるだろう。この新しい「第4のメジャー」は、第一原理から考え、契約アーティストを持たず、人工知能によって作られた音楽のみをリリースする。特定のジャンルに特化することなく、そのカタログはあなたの人生のあらゆる瞬間に最適なBGMで構成されることになるでしょう。」という、Universal Musicを追い抜く可能性のあるAIミュージックについて言及されています。AIミュージックはますます加速し、世界はお金持ちと貧乏人の格差が開いていくように、「真のアーティスト」と「AI」に二分され、つまらないありきたりな音楽を作るアーティストは淘汰されるのではないかと感じます。

  4. Koka Nikoladze’s Drone Box No.1 lets you attach and make music from physical objects→あらゆるものを「楽器化」するドローンボックスが誕生しました。丸い物体は丸い音、ギザギザした物体は硬い音を出すそうですが、どんな仕組みなんでしょう。表現の1つの手段として、持っているととても面白そうです。欲しい…

  5. Aurally Sound releases Song Master 2.0→機械学習によるコード解析などの機能により、既存の曲から音楽制作を学べるソフトです。こういった技術はもっと発展していって欲しいですね。ますます、個人で音楽制作を学べる機会が増えていき、嬉しい限りです。

  1. 未来をつくる音楽機材

音楽機材やプラグインは毎年新しいものが登場します。特に、プラグイン(音楽ソフト)はコンピュターの進化に伴って、毎年進化していきます。今や、AIプラグインなどの最新技術を活用することで、技術や経験の蓄積をすっ飛ばして優れた音楽が作れる時代になりました。ここでは、そんな音楽制作に役立つ最新の音楽機材・プラグインの情報をお伝えしていきます。

最近、マスタリングチェーンでよく使っている「Unisum」は、現時点でNO.1のプラグインコンプだと思います。

コンプのかかり方が、他のものとは全然違うんですよね。

正直、複雑なパラメーターを全て把握してコントロールできる領域にはまだまだ達していないのですが、プリセットからちょこっといじるだけでも十分なクオリティにまで持っていけると思います。

マスターバスのコンプは色々試してきましたが、とりあえずUnisumを入れるというのが最近の僕の中のトレンドです。

そういえば、マスターバスのコンプはミキシングがある程度終わってから入れるものだと理解していたのですが、YouTubeでこんな動画を見つけました。

電子音楽のミキシングは例外らしいですが、彼はミキシングのスタートからマスターにバスコンプを入れて作業をするそうです。

理由は、最後にバスコンプを入れると、今まで積み上げてきた音が一気に変わってしまうから。

バスコンプを入れた状態でミキシングすると、コンプの当たり具合を調整するのが面倒くさそうなので試したことはなかったのですが、次のミキシングではこの方法を試してみようかと思います。

  1. 今週の映画音楽

ここでは毎週、違ったテーマを取り扱います。今週取り上げるのは「映画音楽」。音楽が素晴らしい映画や、音楽制作に役立つような映画をご紹介いたします。

3月9日、NHK BSでハンス・ジマー 映画音楽の革命児というドキュメンタリーが放送されていたようですね。(https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/Y5K66JNYXL/)

ハンス・ジマーといえば、「ライオンキング」「インターステラー」「バットマン」「インセプション」「デューン」といった数多くの名作映画の音楽を手がける超有名作曲家。Spitfire Audioからは、Hans Zimmer Piano、Hans Zimmer Percussionなどの音源がリリースされるほどの人物で、映画に関わる方なら必ず知っているであろう映画音楽界の重鎮です。

僕は家にテレビを置いていないのですが、どうしても観てみたかったので調べたところ、BBC TWOで無料で視聴することができました。(https://www.bbc.co.uk/iplayer/episode/m001d9jf/hans-zimmer-hollywood-rebel)

イギリスの番組なので、VPNを使って現地のサーバーに接続しないといけないのですが、気になる方は、Express VPNなどのサービスに登録して観てみてください。(ついでに、最近話題のジャニー喜多川氏のドキュメンタリーも、BBC TWOで観ることができますよ)

映画は、ハンス・ジマーの功績や生涯を振り返る形で進んでいきますが、後半は彼の音楽作りに対するアプローチを垣間見れるシーンもあります。

ハンス・ジマーは、映画音楽に対するアプローチや、面白い試みについて、常に思考を巡らせているようで、彼が映画音楽界でこれだけ有名になった理由がよくわかる、とても刺激的な内容でした。

  1. Q&A

ここでは、みなさんからのご質問を受け付けます。

音楽機材のこと、制作のこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ!

自分で作った楽曲に関するアドバイスが欲しい!という方は、SoundCloudのリンクを送っていただければお答えいたします。その際は、このQ&Aコーナーにも貼らせていただきますのでご了承ください。

週刊「スタジオ翁」メルマガ版 Vol.0

2023年3月17日発行

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