- 週刊「スタジオ翁」ニュースレター
- Posts
- 週刊「スタジオ翁」ニュースレター vo.49
週刊「スタジオ翁」ニュースレター vo.49
このニュースレターは音楽制作からリリースまでを個人で完結させる、次世代の音楽クリエイターに向けて書いています。
プロに限らず、誰もが音楽を作れる時代になり、AIを活用することで本来ならエンジニアに任せるような仕事も、個人で完結できるようになりました。
あなたがプロを目指している音楽家であれ、これから音楽を仕事にしたいクリエイターであれ、AI等を活用した次世代の音楽制作、時代に合った新しいリリースの方法を模索しているならきっと参考になるはず。
目次
近況
今週の音楽ニュース
作曲とミキシングのアイデア帳
DIYアーティストのためのマーケティング戦略
Q&A
ブログ更新のお知らせ
Okina’s Picks
📝近況
ここでは、最近取り組んでいる音に関すること、仕事のこと、音楽制作のことについて書いていきます。
AIを使って月1000ドル稼ごう!といったYouTube動画をよく見かけますが、実際には、それっぽく聞こえる適当な方法論を紹介しておいて、その動画でお金を稼いでるだけ、という構造になっていることが多い気がします。
「Mubertを使って音楽を自動生成し、AI動画生成でLo-fi Girlのようなアニメを作ってどんどんリリース!」みたいな話なのですが、Mubertで作ったお世辞にもカッコいいとは言えないAIソングを、誰が好んで聴くのでしょう…?
とはいえ、音楽生成AIや動画生成AIがどんどん進化していく今、その方法がどのくらい通用するのかと、ちょっと気になっている自分もいます。
なので、今週はどのくらいの精度でLo-fi音楽&動画が作れるのか知るために、実際に自分でアニメと音楽を作ってみました。
それがこちらの動画。
この動画には、6つのAIが使われています。
Suno AI (音楽生成)
DJ.Studio (DJミックス)
iZotope Ozone (マスタリング)
Midjourney (画像生成)
Pika.Labs (画像から動画を生成)
Kaiber (アニメーション化)
実際にはSuno AI、Midjourney、Pika.Labsの最低3つがあれば似たような動画を生成できますが、クオリティを上げようするとAIの数も増えていきます。
音楽に関しては、Suno AIで生成した音楽をそのまま使っていますが、ビートに力強さがあり、曲が破綻していることも少なく好感触でした。メロディや展開が少しつまらないので、もっとこだわりたければ、シンセやビートを追加したり、LALAL.AIを使ってステム分離し、リミックスしてみたりするのも良いと思います。
それでも、イチから作るより相当速いスピードで作れます。
アニメに関しては、僕が素人だということもありますが、これがやっとでした。
「ザ・Lo-fi Girl」みたいなアニメを作れるサービスもあったりして、やりかたは色々あるんだと思いますが、やはり自分で動画編集ソフトを使って微調整できた方が、もっとクオリティの高い動画になるんだろうなと思いました。FilmoraのようなAI動画編集ソフトを使いこなせるようになるといいのかもしれません。
これからの時代、素材はある程度までAIが作ってくれるので、技術よりも「自分は何を作りたいのか?」を考える方が大切だと改めて感じましたね。
「何かを企画できる人」「プロデュースできる人」「面白い音楽のアイデアを持っている人」がとんでもなく重要になってくる一方、音楽をカタチにする「作曲家」「エンジニア」といった専門職の重要度がますます下がってくるこの時代、なんでも面白がって本気で遊んでいる人の方が成功するのだろうと感じる今週です。
成毛眞の「大人はもっと遊びなさい」や、ヨハン・ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」でも読んで、いま一度「遊び」について考えてみることにします。
📱今週の音楽ニュース
「音楽業界の動向」「最新の音楽ギア」など、音楽制作をする全ての人に役立つ新鮮でホットな情報を、毎週発掘してお届けします。
OpenAIの最新モデル「Sora」、テキストプロンプトを本物そっくりの動画に変えてインターネットを驚かせる→音楽の話ではないですが、このAI動画生成の進化に触れないわけにはいきません。もう、ほぼ現実と見分けがつかないような映像を作ってしまうAIがOpenAIから登場しました。まだ実用化には至っていないですが、音楽制作者は当たり前のように音楽と映像をセットで作るようになるのでしょうね。音楽業界もSumoAIのような画期的なAIがいきなり出てきたので、今年もいつとんでもない音楽生成AIが登場するのかとワクワクしています。
Micro Ambient Music Festival、坂本龍一トリビュート展の関連イベントとして開催 - 日本初となる3日間の屋内型アンビエントミュージックのフェスティバルMicro Ambient Music Festivalが、新宿のNTTインターコミュニケーションセンター[ICC]で行われます。総勢27組のアーティストが登場するらしく僕の大好きなアーティストKen Sugaiさんも登場します。屋内でアンビエントって気持ちいいのか…?と思うところもありますが、これはかなり気になりますね。
世界初の空間・3D AI DAWがApple Vision Proに登場→何時間も椅子に座って音楽を作るが時代が、だんだんと終わりに近づいているようです。Hit'n'Mixが開発するAR対応の新たなDAW「RipX DAW」は、音楽制作をもっと楽しく、フィジカルな体験に高めてくれるのでしょうね。これはいろんな可能性が広がります。
u-heのZebrallette 3ソフトウェア・シンセが無料配布中→今年のNAMMでも紹介されていたu-heの無料シンセ。u-heはどれもクオリティが高いので、まだ使ったことがないという人は、ぜひ無料のこちらのシンセを試してみましょう。
最高のMelodyne代替音源:ボーカルチューニングのための安価で無料のVST!→Melodyneはボーカル修正ツールの大定番ですが、最低限の機能しか必要ない人にとっては、 なかなか手が出しにくいツールです。そんなアーティストのためにメロダインの代わりとなるいくつかのプラグインが紹介されています。
📘作曲とミキシングのアイデア帳
作曲やミキシングが上達するための、動画・記事・アイデアをご紹介します。
いまAIに関する本を書き進めているのですが、今週からニュースレターを読まれている方に、一足先にお見せしていこうと思います。
出版はKindle Unlimitedで行う予定なので、まとめて読みたい方はぜひリリースしてから読んでいただけると嬉しいです。
AIを扱う本なので、1年後には本の内容が陳腐化してしまう可能性もあります。少しでも鮮度の高いうちにニュースレターでも読んでいただけたらと思い、無料公開することにしました。まだラフ段階なので、読みづらかったり内容がまとまっていなかったらごめんなさい。
まずは音楽制作に使えるAIにはどんなものがあるの?という話からです。
<以下、本の内容>
ここでは、音楽制作に使えるAIには、どんなものがあるのか見ていきます。
音楽制作AIは、大まかに以下の4つに分類されます。
- 完全作曲系
- メロディー・コード系
- ミキシング・マスタリング系
- その他
1つのツールだけで音楽制作が完結できるものもありますが、AIツールは状況に応じて使い分けるのがポイント。最近話題のツールをもとに、各AIの特徴や使い方を見ていきましょう。
まず、「完全作曲系」と僕が勝手に呼んでいるものですが、これは数行の文章を入力したり、リファレンス曲を入れるだけで、まるまる1曲を完成させてくれる音楽制作AIを指します。
これだけだと、かなり魅力的に聞こえるかもしれませんが、サービスによってはクオリティがイマイチだったり、1-2分しか生成できないといった制限があったりと、現状では完全作曲AIで音楽制作の全てをまかなうのは難しい状況です。
「1分だけでいいから、友人の誕生日に送るオリジナルソングを作りたい」「BGM程度の音楽を遊びで作ってみたい」といった用途で使うことになるでしょう。
完全作曲系には、具体的に以下のようなツールがあります。
- Suno AI
- AIVA
- Mubert
最近話題のSuno AIは、曲のイメージを伝えるだけで、あらゆるジャンルの曲をこれまでになかったほどの高い精度で作ってくれます。歌詞を打ち込めばそのまま曲に反映してくれるので、ChatGPTを使って歌詞を生成し、Suno AIに曲を作ってもらう人もよく見かけますね。
Suno AIはマサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とする音楽家と人工知能の専門家からなるチームで、従業員の中にはMeta(Facebook)やByteDance(TikTok)といった大手テック企業で働いていた人もいます。
Suno AIはかなりクオリティが高いのですが、自動生成された曲を編集できないのが大きなデメリットです。
作曲を完全にAIに委ねるしかないので、たとえば「メロディーがイマイチだな」「ベースラインを変えたいな」と思っても、もう一度イチから作り直すしかありません。
これを解決するのが、次に紹介するAIVAです。
AIVAは2016年に誕生した、ルクセンブルクを拠点とする企業によるサービスで、AI作曲サービスの中では比較的歴史があります。
AIVAには「MIDI書き出し」という機能があり、これを使うことでAIが作ったメロディやコードを、あらゆる楽器で演奏させることができます。
なので、「このバイオリンが気に入らないな」と思ったら、Kontaktなど手持ちのサンプル音源ソフトを使って音色だけを変えることもできますし、コードの一部を別のコードにする、メロディの一部に手を加えて自分だけのオリジナメロディに変える、といったことも可能になります。
ここまで聞くと、AIVAが最強と思われるかもしれませんが、時にはかなり陳腐なメロディが出てきたり、なかなか思うような雰囲気の曲が出てこなかったりするので、作りたい音楽のジャンルや雰囲気に応じてAIサービスを使い分けることが大切です。もともとAIVAは、クラシック音楽や交響曲の作曲のために訓練されたAIモデルとして誕生した背景があるので、オーケストラ系のジャンルにはそれなりに強いものの、それ以外の音楽を作らせると、本格的なプロの現場では使えないような安っぽいメロディやビートが出てきます。たまに良いものが生成されることもあるのですが、結構運まかせな部分もあるのです。
MubertはSuno AIが登場したことで印象が霞んでしまいましたが、リファレンス曲を指定したり、最長25分の長尺生成ができたりと、Suno AIにはない機能を備えているのが魅力です。ただ、こちらもSuno AIに比べるとかなり安っぽい音楽になってしまうので、Suno AIが誕生した今、Mubertを使う理由は減ってきています。
電子音楽ならまだMubertでも良いものが出てくるかなという印象で、メディアアーティストの落合陽一さんはMubertで生成した音楽のドラムをAIで削除し、別のステムを割り当てる、といったリミックス作業をDJソフトを使ってされていました。
こういった使い方が、現段階の完全生成AIの正しい使い方だと思いますが、ステムを吐き出せないAI作曲ツールが多いので、DJソフトやその他AIを使ったステム分離ツールを使うのが、もっともこの種の作曲AIを活用できる方法だと思います。
これは後ほど、ステム分離ツールLALAL.AIの章でも解説します。
📊DIYアーティストのためのマーケティング戦略
音楽で稼ぐにはどうすればいいのか?どのようにリリースするのが効果的なのか?DIY(インディペンデント)アーティストが、より多くの人に自分の音楽を聞いてもらう方法を探っていきます。
個人で音楽制作を始め、ストリーミングの収益が増えたことからアーティストとして独立した15MUSさんのインタビュー動画。
成功までのリアルな軌跡を赤裸々に語ってくださっているので、多くのインディペンデントアーティストが参考になると思います。
気になったところをまとめておきます。
とにかく多くリリースすることを意識した
プレイリストは大切。TuneCore、Spotify、Amazon Musicなどサブミットできるところは全てやる
リリースからバズまでは数年のラグがあることもある
インスタ広告も活用する
MVも自分でつくる
とにかく何がきっかけでヒットするかわからないので、曲を作りまくってやれることは全部やるスタイルですね。やはり今の音楽リリースはこれがスタンダードなのでしょう。
とにかく作って、やれることは全部やる!
僕も参考にさせていただいて、バンバン作っていきます。
🙋♂️Q&A
音楽機材のこと、制作のこと、ミキシングのこと、クラブのこと、何でもお気軽にご質問くださいませ。次週のニュースレターでお答えいたします。
「音楽作ってみたからアドバイス欲しい!」という方も、SoundCloud等のリンクを送っていただければお答えできます。
マシュマロにて、お気軽にどうぞ。
🖊️ブログ更新のお知らせ
最近になって導入したXOは、僕の音楽制作に欠かせないツールになってしまいました。
自分の好みのサンプルを入れるだけで、XOが半自動的にビートを作ってくれます。もちろん一発で完璧なビートは出てこないので、自分で微調整したりサンプルを変えてみたりする必要がありますが、これを使うことにより、ビート制作のスピードがめちゃくちゃ上がりました。
XOを使うとスピードだけでなくクオリティも上がり、自分が予期せぬ新たなビートに出会える確率も増えます。
ベタ褒めしていますが、全部本当のことです。
セールまで待っても良いので、自分のビートのクオリティを上げたいアーティストはぜひXOを導入しましょう。
🧠Okina’s Picks
最後に、音楽的想像力をかき立てる、クリエイティブなコンテンツをどうぞ。
🕺🏻Tips: 【ひろゆき切り抜き】Spotifyで稼ぐ方法。再生回数を伸ばすにはプレイリストが重要です。サブスク音楽アプリで人気になろう! - さすが2チャンネルで名を馳せたひろゆきさん、Spotifyをどう攻略するか、音楽業界をどうハックするかについても心得ているようです。 ホリエモンが受験勉強の際、教科書から勉強するのではなく、まず模擬試験をして自分に足りない弱点を見つけ、そこから集中的に勉強していた、という話を思い出しました。
🎻Music: My Favorite Things[ Minichestra(Violin, Cello, Contrabass, Flute, Piano)cover. / 演奏してみた ] - サウンド・オブ・ミュージックに登場する名曲「My Favorite Things」のオーケストラカバーが京都で撮影されたみたいです。。京都の街並みにマッチする美しい演奏とハーモニーが絶品!これは生で聴いてみたいですねー。
📗History: Spotifyはどのように音楽業界を破壊したのか? - 動画の前半は、Spotifyが誕生した背景と、いかにSpotifyが音楽の仕組みを変えたかを知ることができます。後半ではSpotifyの収益分配の不自然さや、音楽業界の未来についても少しだけ語られています。NetflixのSpotifyを題材にしたドラマも面白いですが、サクッとSpotifyのことを知りたければこの動画がおすすめです。
🤖AI: 面倒なことはChatGPTにやらせようのプロンプトを全部実行します - 最近、バカ売れしているChatGPTの本の内容が、YouTubeで公開されました。この本はなかなか手に入らないので、これからChatGPTを学びたい人は、このYouTubeプレイリストを観て学んでみると良いかと思います。
週刊「スタジオ翁」ニュースレター版 vol.49
2024年2月23日発行
Blog: https://studio-okina.com/
HP: isseykakuuchi.info